デートの内容
朝奈さんをデートに無事誘うことができたのち、俺はあることに気づき悩んでいた。大学でもずっとそのことを考えるくらいに。
それは、朝奈さんをデートに誘っておきながら、全くデートの内容を考えていなかったこと。そして「遊びに行きませんか」ではなく、思いっきり「デートに行きませんか」と尋ねたこと。
デートって言っちゃったよ。あの場では必死すぎて気づいていなかった。好意が丸見えじゃないか。……でも、朝奈さんはいいよと言ってくれたんだよな。俺がデートで下手なことをしなければ、ひょっとして告白まで成功するんじゃないか?
なおさらデートが重要になってきた。デートの内容次第で、告白が成功するかどうかが決まる。ちゃんと考えねば。
デートの行き先はどうしよう。ろくに女性と関わっていない俺は、デートの場所なんてゲームか漫画の知識が限界だ。映画館とかか? でも何を見るんだ……。う〜む。
「おーい、柏木。次の教室行こうぜ」
「ああ、川角……」
悩みながら次の教室へ移動していると、廊下で川角に遭遇した。……川角に聞いてみるか? 噂だけ一人歩きするのは勘弁だから、川角が深入りしてきたら逃げるか。
俺と川角は教室の席に着いた。俺は早速、川角に尋ねてみることにした。
「川角はデートに行くとしたら、どこに行くんだ?」
「え? お前デート行くの? 誰と、誰と!?」
「やっぱ聞くのやめるわ」
俺はすぐさま川角からそっぽをを向けた。
「ごめんて、柏木。どこって聞かれてもなぁ。……柏木が考えてる候補とか無いの? 誰かはしらんが、デート行くんだよな?」
「まあ、デートに行く。誰とかは言わないけど」
「教えてくれよ〜。誰にも言わないって!」
「これ以上聞いてくるならお前に相談する気はないぞ、川角」
「えー!? くそー、知りたいのになぁ。で、お前が考えてる候補は?」
「あー……映画館、とか」
川角は薄ら笑いをした。
「デートしたことない人間が、真っ先に思いつく場所ナンバーワンじゃん」
「お前な……」
その憎たらしい顔に、危うく手が出るところだったぞ。
「ごめん、ごめん。教えてくれないから、からかっただけ! 俺に聞くより、一緒にデートする本人に直接聞いた方が一番だと思うぞ?」
「……なるほど」
確かに朝奈さんが行きたい場所を聞いた方がいい気がするな。俺が誘ったから、俺が全部考えないといけない気になっていた。これは川角に聞いてよかったと言えるだろう。
「ありがとう、川角」
「ていうか、場所も決めずにデート誘ったのか? おもろすぎん?」
「……もうお前に授業のノートを見せることは無い」
「マジでごめん!! それだけはご勘弁を!! 柏木さん!? 無視しないで!?」
俺は川角の懇願の声を無視して、授業の用意を黙々と始めることにした。




