表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/39

露さん襲来

朝奈さんがオートロックの番号を打ち込む。俺の背中側でキーを打つ音が聞こえる。マンションの扉が開いて、俺と朝奈さんは203号室の前に着いた。



「待っててね、柏木君」



そう言って朝奈さんは、鍵を開けて部屋の中に入って行った。ガシャンと扉が閉まる。……内側から閉める鍵の音がする前に、朝奈さんが扉を開けた。いつものタオルと紐を持っている。


突然、朝奈さんは持っていたタオルを自らの鼻に押し当てて、匂いを嗅ぎだした。



「あ、朝奈さん? 何を」


「今日はね、いつもと違う柔軟剤で洗ったの。せめていい匂いのタオルで縛られたいかな〜って」



なぜそんなに匂いを気にするのだろう。確かに、変な匂いのするタオルで縛られるのは嫌だけど。俺は縛られ方にこだわりなんてないぞ、朝奈さん。


俺は朝奈さんに背中を向け、両腕を差し出した。朝奈さんがタオルを俺の腕に巻き始める。



「……結局、何の匂いだったの? 朝奈さん」


「わかんない。お日様の匂いらしいけど。でもいい匂いだったよ!」



そんな会話をしながら、朝奈さんは俺の腕を縛り終えた。気持ち、いつもより縛り方が緩い気がした。


玄関に入って靴を脱ぐ。腕が縛られているので、玄関に腰を下ろしてから足でなんとかしようとする。そんなところを、朝奈さんが隣にしゃがんで、俺の靴を脱がしてくれた。


正直、この行為もとても気恥ずかしい。



「朝奈さん、足だけでも頑張れば脱げるからさ」


「え? でも、私が縛ったんだし……」



朝奈さんが俺の靴をちゃんと揃えて玄関に置く。部屋に着き、朝奈さんが置いてくれたクッションの上に俺は腰を下ろした。



「今日は心音の動画を撮るよ。まだロールプレイの台本ができてないの。ほとんどしゃべらないから、柏木君はつまらないかもしれないけど」


「いやいや、そんなことはないよ」



『ゆかなん』の収録現場にいるということに価値があるのだ。



「まあ、露ちゃんも喋りたがってたし、ちょうどいいから来てもらおっかな〜って、思ったの」



そう言って朝奈さんは、スマホを取り出した。ぽちぽちと画面を叩いている。



「露ちゃんと喋るの今からでいい?」


「わかった」


「最初は私が喋るから、ちょっと待っててね、柏木君」



朝奈さんはラインで通話をかけ始めた。プルルという通話音の後、電話が繋がる。



「もしもし!? ゆかなん! 柏木さんと喋れるってほんま!?」


「ほんまやよ〜」



ドカンと部屋に響き渡る声。こ、これが噂の露さん。俺がたじろいでいると、朝奈さんはスマホの音量をこっそり下げていた。露さんが、ちょうど良い大きさの音声になる。



「ちょお待って! ゆかなん、カメラ通話に切り替えて!」


「何で、露ちゃん?」


「おっぱい見せて! 久々やもん。ええやろ? 台本書いてきたし、そのお礼ってことで!!」



そんなことを、早口でまくし立てる露さん。朝奈さんの覚悟しておいての言葉は、嘘ではなさそうだ。あと、露さんにつられて関西弁になっている朝奈さんが、新鮮で可愛い。


朝奈さんは何度か断っていたが、結局露さんの押しに負けて、朝奈さんはしぶしぶカメラ通話に切り替えた。



「ひゅう!! ナイスHカップ!!」


「露ちゃん!? わざわざ言わんとって!?」



Hカップ!? 朝奈さんの胸はでかいと思っていたが、そんなサイズだったとは。露さん、ありがとう。これは貴重な情報だ。


照れて顔の赤くなった朝奈さんが、露さんの声につられた大きい声で言い返す。



柏木君(・・・)もいるんやから、やめてよ!! 露ちゃん!!」


「……は?……柏木、()?」



……あれ? 急に通話から謎の緊張感が発生しだした気がする。おかしいな、さっきまで楽しい関西人同士の通話だったのに。



「ゆかなん……?」


「え、えっと……」



焦りだす朝奈さん。


おかしいな、不穏だ。しかも、俺のせいっぽくないか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ