露ちゃん
「お疲れ様、柏木くん」
「お疲れ様、朝奈さん」
子供たちとの活動が終わってから、事務所で簡単な反省会みたいなのを済ませた後に、全員解散するのがサークルのいつもの流れだ。だいたいいつも午後5時とか、6時とかになる。
終わって俺が事務所を出ると、朝奈さんも追うように事務所を出て来て、俺に挨拶をしてくれた。ポニーテールから、いつものウェーブしたセミロングの髪型に戻っている。
「朝奈さんはご飯行かないの?」
「私はいつも行ってないしなぁ。柏木君こそ行かないの?」
サークル活動終わりには、ご飯に必ず行くグループがいる。一人暮らしの人がご飯に行くことが多いので、朝奈さんも行ってるものだと思ってた。
「俺は実家だから、ご飯あるし」
「なるほどね……同じ駅だよね? 一緒に帰ろう?」
「あ、うん」
時間が経ち、なんとか朝奈さんと普通に会話できるまでは、精神状態が回復していた。朝奈さんと並んで駅まで歩く。道が狭くて、朝奈さんとの距離が自然と近くなっていた。
朝奈さんが周りをキョロキョロ確認しだす。小声で喋りかけてきた。
「昨日の動画、明後日くらいに上がるらしいから」
「お、おっけ」
昨日のことを話されると、まだドキッとする。しかも小声だし、余計に思い出してしまう。
……ん? らしいってどういうことだ?
「あれ? 朝奈さんが動画投稿してないの?」
「あー、そっか。言ってなかったね。……実はもう一人、私の活動のことを知ってる人がいるの」
「え!?」
朝奈さんが『ゆかなん』だと知っているのは、俺だけじゃなかったのか!?
「露ちゃんっていう、私の地元の友達。動画の編集とかしてくれるの。ほら、私の動画に可愛いイラストがついてることあったでしょ? あれ、露ちゃんのイラスト。露ちゃんはイラストレーターなんだって」
そういえば動画の最後とかに、ちびキャラみたいなイラストがついている時があった。
「あのイラスト、描いてもらってたんだ」
「そ。台本のセリフとかも考えてくれるの、露ちゃんが」
なるほど。俺はその人に感謝しなければならないな。昨日の台本の素晴らしさは、朝奈さんの友人によって生み出されていたのか。
どうりで納得した。朝奈さん自身が赤面するようなセリフを、朝奈さん自ら考えているのはしっくりきていなかったのだ。
「露ちゃんにお金払うよって、いつも言ってるんだけどね……その……」
「その?」
少し赤面して、朝奈さんは答えた。
「わ、私のおっぱい見れるなら安いもんだー……って」
「……素晴らしいご友人をお持ちで」
いいキャラをしている。友達になれそうだ。




