第十七話 「輪廻転生環の中心」
リーが何か物凄い音で目を覚ますと、其処は多くの裸の女性が様々な形で収納されている場所だった。
皆生きていて、苦痛に悶えた様子も無い。
皆が皆あの少女に何かしらの事をされたんだろう、とリーは思った。
手を地面を摩るように動かすと何かに手が当たって、其処を見ると自分の服や下着が置いてあった。
あの少女は案外良い人なのかもしれない。と、リーは思いながら服を着ていく。
「よし」
服を着終わり、出来た皺を叩いて直して辺りを見渡す。
ドーム状の空洞で、天井は高い。そして、前方と後方に入り口の様な物がある。
幸いな事に、さっきの様に体が火照ったりもしてないし、至って普通なので少し探険をしてみよう、とリーは決断し、後方へ歩き出した。
その時にピタリと足を止める。気付いた。
自分は今何も持ってないじゃないか、と。
取り敢えず、隅に大量に落ちている剣を一本貰っていく。
「待ってくれ、リー」
「!」
剣を収め、後方の通路へ向かおうとした時、後ろから話しかけられた。
その声は聞き覚えがある声だった。
振り返るとやっぱり其処には見覚えのある人物が立っている。裸で。
「はぁ〜、合流出来たぁ」
「チィさん。なんで裸なんですか?」
「ん…いやさ、私もよく分からないんだけど」
「分からない?」
チィは怪訝そうな顔で目を逸らし、口を開く。
「私、一回大量の虫に喰われて死んだんだよ。だけど、こうやって体も綺麗な状態で生きてるんだ」
「???」
「あの時の快感、ていうの?まだ覚えててさ」
「あの女の子に舐められたんですか」
「あぁ、あいつはヤバい」
「分かります」
二人はあの少女が持つ舌、及び唾液の恐ろしさに頷かざるを得なかった。
一度快感の渦に呑まれながら死んでいったチィ。
味わったことのない快楽を感じ続けて気絶したリー。
二人とも被害者だ。
「取り敢えず…一度死んでしまったのに生き返ったって事ですよね」
「あぁ。不思議な感覚だよ」
「……よくは分かりませんけど。取り敢えず服になりそうな物を…」
探しましょう、と言おうとした時にダダダっという足音が空洞内に響く。
その足音の方へ振り向くと、傷だらけで血を流すシエンと右腕が完全に開きの様になって血がとめどなく零れ落ちている状態のハオが入ってきていた。
シエンの方に息は無く、それを担ぐハオの方は荒い息を吐いている。
そして、彼は二人を見て、安堵の表情を浮かべ、直ぐに険しい表情に変わった。
「ハオ!お前なんだいその傷は…。シエンの方は気絶してるだけか?」
「黙れ……お前、なんで生きてやがる…。さっきあそこで死んでただろうが」
「私だって分からない…分からないままだ」
「………その顔、その体、確かにファンだ。まぁ、いい……偽物でも本物でも構わん。俺たちはこの様だ。黄金の竜と女一人に一気に戦闘不能にされちまった」
「ファンってお前…真面目なのか?」
「この状況でふざける馬鹿はいねえよ…」
リーは肩に担がれているシエンを下ろしてその様子を見る。
下腹部から何かに引き裂かれる様にして首元まで傷が広がっている。
その傷は、削られた、というより斬られたというべき傷だった。
だけどそれだけで打撲痕などは一切無く本当に気絶しているだけだった。
「リー、兄の様子は?」
「物凄い大きな裂傷を負ってます。ですが、これを剣で傷つけられたとするなら…大剣の持ち主ですか?」
「違う…。そいつは干将の鱗でやられた。逃げた時にちらりと見たが…あれは身体全体が剣そのものだ」
「干将。干将・莫耶の陽剣ですか…」
「んでだ。俺とシエンはもう無理だ…。だからお前等にあいつ等の討伐を要請する。ファンもだ。銃は逃げ際に一つだけなら回収出来たし…服は俺のを着とけ」
「…分かった。一つだけでも回収してきた事を礼を言うよ」
そこからは早かった。リーが自分の服の裾を千切ってシエンの応急手当をし、ハオに切り開かれた腕を斬ってくれと言われたので断ち切った。
そして、止血の為にまた裾を千切って、強引に止血した。
そして、身支度を済ませ、チィとリーが最後の確認をする。
「その剣、倭刀じゃないな。大丈夫か?」
「見様見真似、頑張ってみます」
「ん。こっちは弾数に限りがある。援護ぐらいしか出来ないが…」
「構いません、行きましょう」
そう言ってリーとチィは干将と莫耶が居るであろう場所に繋がる通路へ歩いて行った。
姿が見えなくなってハオは溜息をついて壁にもたれかかる。
そして、薄ら笑みを浮かべながらこう口にする。
「全く……あのリーの目。ありゃ無茶するで…。お前の妹はホント、いい性格しとるわ…」
はぁー、とまた溜息を吐いて目を閉じる。
収容室に静寂が訪れた。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
通路を歩きながらリーが口を開いた。
「あの、チィさん。一つ提案なんですが」
「提案?」
「はい。提案っていうのが──────────」
その提案にチィは一瞬驚き、すぐに険しい顔になって反対した。
「馬鹿か?その剣一本でそんな事が出来ると思っているのか!」
「一本ではありませんよ。此処には沢山落ちているではありませんか」
「だからって…」
「大丈夫です。貴方は狙撃でもしててください」
リーはそう言って、あの場所へと走っていった。
その場にはチィだけが残ったが、すぐにリーを追う様にして走っていった。




