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『虚像』  作者: 闇深太郎
7/10

暗黒舞踏


 あれから、(わたし)(りょう)(ほか)生徒達(せいとたち)高校生活(こうこうせいかつ)()ごしていた。

 千鶴(ちづる)最近(さいきん)どうしているのだろう。あんな(こと)があったせいで(はなし)にくくなったけど、元気(げんき)にしているだろうか。もしかすると、様子(ようす)()()った(ほう)()いのだろうか。毎日(まいにち)千鶴(ちづる)様子(ようす)()()ったが姿(すがた)()なかった。相当(そうとう)()()んでいるのだろうか。


 

 (わたし)今日(きょう)(れい)(うわさ)(さぐ)っていた。深緑(ふかみどり)着物(きもの)()男性(だんせい)(はなし)本当(ほんとう)()るのだろうか。(わたし)隣町(となりまち)まで(ある)いていた。

 青波台(あおなみだい)海辺(うみべ)(さか)えた(まち)だ。国営鉄道(こくえいてつどう)(えき)があり、活気(かっき)()ちている。

 その一方(いっぽう)私達(わたしたち)()らす高瀬(たかせ)は、閑静(かんせい)(まち)だ。あの出来事(できごと)があるまでは、事件(じけん)なんて他人事(たにんごと)だった。



 (わたし)青波(あおなみ)駅前(えきまえ)本屋(ほんや)(ほん)(さが)していた。都市伝説(としでんせつ)(りょう)()きな未確認(みかくにん)飛行物体(ひこうぶったい)(ほん)はないかと本棚(ほんだな)()ていた。すると、()(くろ)背表紙(せびょうし)()()()んだ。()()ばして()もうとすると、(みょう)(おと)()こえた。しかも、(ほん)()った()(いた)い。


 (わたし)(ほん)(つか)んでいる(わけ)ではない。(ほん)(わたし)(つか)んでいた。(わたし)(あわ)てて(ほん)(はず)そうとしたが、(ほん)(さら)(ちから)()れてくる。

 その(とき)(とお)りがかったのは小学生(しょうがくせい)くらいの少年(しょうねん)だった。(かれ)(わたし)異変(いへん)()づくと、(ほん)()()がしてくれた。

大丈夫(だいじょうぶ)ですか?」

「ありがとう、少年(しょうねん)…」

「これは責任(せきにん)()って(ぼく)()いますから。あなたはじっとしててください。」

少年(しょうねん)はその(ほん)何事(なにごと)もなく()い、(わたし)(ところ)(もと)(もど)って()た。



 (かれ)(べつ)(まち)から()()いを(たず)ねてここまで()たらしい。家族(かぞく)一緒(いっしょ)だったそうだが、(いま)一人(ひとり)だった。


 私達(わたしたち)本屋(ほんや)()て、駅前(えきまえ)のベンチで(やす)んでいた。(わたし)(いま)まで(あつ)めた都市伝説(としでんせつ)(はなし)をすると、(かれ)複雑(ふくざつ)(かお)をしていた。

「そういう(はなし)(きら)いだった?そうだったらごめん。小学生(しょうがくせい)なら()きだと(おも)ったのになぁ…」

()きでも(きら)いでもないですが、身近(みじか)ではありますね。」

少年(しょうねん)自分(じぶん)左手首(ひだりてくび)(つか)んでいた。

「あまりそういう怪異(かいい)には(くび)()()まない(ほう)()いですよ。それで悲惨(ひさん)()()った(ひと)()ってますから。」

それから、少年(しょうねん)自分(じぶん)(はなし)(はじ)めた。



 その(はなし)異様(いよう)なものだった。(かれ)には霊感(れいかん)があり、その(うえ)霊媒(れいばい)という(れい)()()せるらしい。その(ちから)(かれ)はおぞましいものを()てきたらしい。それも一度(いちど)二度(にど)ではない。(わたし)想像(そうぞう)しているよりも悲惨(ひさん)光景(こうけい)(かれ)()()きついている。


 少年(しょうねん)(ちから)()った(わたし)は、もしかすると千鶴(ちづる)のお(とう)さんを()べるのではないかと(おも)いついた。

「やめた(ほう)がいいですよ。」

(わたし)がそれを(はな)(まえ)に、その少年(しょうねん)ははっきりと()った。

()んだ地点(ちてん)でこの世界(せかい)からは()たれるんです。それに干渉(かんしょう)するのはお(たが)いの(ため)にならない。」

「そ、そうなんだ…。」

(かれ)本当(ほんとう)小学生(しょうがくせい)なのかと(うたが)うくらいしっかりしていた。それも、(かれ)異様(いよう)経験(けいけん)(かたち)づくったものだろうか。もしかすると(かれ)生死(せいし)のぎりぎりのところでやっと()っているのかもしれない。()(くら)(ところ)(おど)っているかのような、自分(じぶん)でも(なに)をしているのか()からなくなる、そんな感覚(かんかく)(かれ)()きているのかもしれない。



 (わたし)がそんな(こと)(かんが)えていると(ちい)さな子供(こども)があの少年(しょうねん)()()って()た。

「お(にい)ちゃん、こんな(ところ)()たんだ!」

「あの(ひと)にお土産(みやげ)()ってたんだ。」

二人(ふたり)(わたし)()かって()()ると、どこかへ()かってしまった。

大人(おとな)になりすぎるなよ、少年(しょうねん)。」

(かれ)(はや)くに大人(おとな)になってしまった(かな)しい少年(しょうねん)なのかもしれない。(かれ)(かが)やくものを()(まえ)に、悲惨(ひさん)なものを見過(みす)ぎてしまった。(かれ)はこれからもそれを背負(せお)って()きていくのだろうか。



 (わたし)青波台(あおなみだい)(あと)にした。(かえ)りはバスに()って(いえ)(かえ)る。その(とき)携帯電話(けいたいでんわ)()った。()(なお)すと、お(かあ)さんが(あわ)てていた。

菜月(なづき)千鶴(ちづる)ちゃんが大変(たいへん)なの!」

千鶴(ちづる)が、どうしたの?!」

(わたし)()(さき)病院(びょういん)()え、(いそ)いで()かった。

 




 

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