表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『虚像』  作者: 闇深太郎
4/10

虚構の海


 高校生(こうこうせい)(わたし)(まわ)りには、一癖(ひとくせ)ある(ひと)(あつ)まりやすいらしい。その証拠(しょうこ)に、(わたし)友人(ゆうじん)一癖(ひとくせ)二癖(ふたくせ)もある。

 一人(ひとり)島本(しまもと)(りょう)(わたし)とは同級生(どうきゅうせい)で、(むかし)からの(なか)だ。(かれ)未確認(みかくにん)飛行物体(ひこうぶったい)研究(けんきゅう)(しょう)してずっと(そら)にカメラを()けている。ついこの(あいだ)本物(ほんもの)未確認(みかくにん)飛行物体(ひこうぶったい)()たと(さわ)いでいた。一人(ひとり)随分(ずいぶん)(たの)しそうだった。



 もう一人(ひとり)寺岡(てらおか)千鶴(ちづる)という()だ。千鶴(ちづる)(わたし)よりも年下(としした)で、中学校(ちゅうがっこう)(かよ)っている。カメラが友達(ともだち)で、(わたし)(りょう)以外(いがい)()一緒(いっしょ)()(ため)しがない。それぐらい、人付(ひとづ)()いが希薄(きはく)()だった。



 今日(きょう)(わたし)一人(ひとり)だった。二人(ふたり)(こと)はもちろん()になるが、(いま)()(まえ)には()ない。(わたし)一人(ひとり)学校(がっこう)から帰宅(きたく)していた。



 横断歩道(おうだんほどう)()()かった(とき)だった。(ふゆ)でもないのに(そら)から(しろ)いふわふわしたものが()()りてきた。それは胞子(ほうし)のようにも()え、(つか)もうとすると(ゆび)(あいだ)をすり()けてしまう。

 その(しろ)(なに)かは地面(じめん)()ちると、(こおり)のように()け、道路(どうろ)(うみ)(つく)った。そして、その(うみ)(わたし)(ひざ)()かるくらいに(ふか)くなっていく。だが、(だれ)もそれに()づかない。私以外(わたしいがい)(だれ)()なかったからだ。

 (わたし)はその(うみ)()かりながら(ある)いていた。この(うみ)(みず)ではない(なに)かで()たされているらしい。そのせいかどれだけ()かっても()れなかった。


 (うみ)のようになった道路(どうろ)(わたし)(ある)いていた。普段(ふだん)この道路(どうろ)はそこそこ交通量(こうつうりょう)(おお)(ほう)だが、今日(きょう)(ひと)どころか(くるま)()ない。神隠(かみかく)しに()ったみたいだ。

 

 このまま(いえ)(かえ)ってしまおう。そう(おも)った(わたし)(まえ)(なに)かが(あらわ)れた。それは()(しろ)人影(ひとかげ)のようなものだった。その(かげ)には(かお)()かったが、(わたし)をじっと()(こえ)(はっ)した。

菜月(なづき)じゃねえか、どうした?」

(だれ)…?!」

(わたし)はその得体(えたい)()れないものから()げた。あの(かげ)(はな)すのも(おどろ)いたが、それ以上(いじょう)(わたし)名前(なまえ)()っているのが一番(いちばん)不気味(ぶきみ)だった。


 その(あし)無意識(むいしき)(いえ)()かっていたそうで、そこに辿(たど)()いた(わたし)大急(おおいそ)ぎで(とびら)()め、(なか)(はい)った。

 (いえ)(なか)不思議(ふしぎ)(うみ)にはなっていなかった。それを()った(わたし)一安心(ひとあんしん)して制服(せいふく)のままソファーに()そべった。



 翌日(よくじつ)(りょう)にその(はなし)をしたが、(りょう)(しん)じていなかった。それもそうだ。あの出来事(できごと)私以外(わたしいがい)(だれ)()ていないからだ。(りょう)はその(はなし)興味(きょうみ)ないようで、(いま)未確認(みかくにん)飛行物体(ひこうぶったい)(あたま)がいっぱいなんだろう。



 それから、しばらく()ってから町中(まちなか)である(うわさ)()くようになった。確証(かくしょう)はないが、この(まち)(だれ)かが(ひろ)めている。(わたし)早速(さっそく)(りょう)にその(はなし)をしてみた。

「この(まち)都市伝説(としでんせつ)?」

「そう、深緑(ふかみどり)着物(きもの)男性(だんせい)(はなし)。」

()たら(しあわ)せになるか不幸(ふこう)になるかっていう(たぐ)いのものかな?」

「それが、どっちかは()からないみたい。だからこそ都市伝説(としでんせつ)じみているんだと(おも)うんだけどね。」

(りょう)携帯電話(けいたいでんわ)(さわ)っていた。(おそ)らくまた未確認(みかくにん)飛行物体(ひこうぶったい)について調(しら)べているのだろう。(ねん)から年中(ねんじゅう)その(こと)ばかり(かんが)えているから、もしかすると(かれ)間違(まちが)えて地球(ちきゅう)()(かえ)れなくなった宇宙人(うちゅうじん)なのではないか、というふうに(わたし)(かんが)えているが(くち)には()さなかった。


 (りょう)携帯電話(けいたいでんわ)から(かお)(はな)して(わたし)()た。

「この(まえ)(こわ)()()ったばかりというのに()りないね。」

(りょう)だって、(いま)未確認(みかくにん)飛行物体(ひこうぶったい)、だっけ?それを()ってるじゃない!」

それを()いた(りょう)突然(とつぜん)()()した。

僕達(ぼくたち)(おな)(こと)(おこ)ってる。(へん)だよね?」

それを()いた(わたし)(いか)りを(わす)れて(わら)ってしまった。

「っていうか(おこ)ってたの?らしくないなぁ…。」

(ぼく)だって(おこ)(とき)(おこ)るよ。」

「そっか、そうなんだね。」

残念(ざんねん)ながら、(りょう)興味(きょうみ)がないようだった。千鶴(ちづる)(ほう)はどうだろうか。(いま)気持(きも)ちが(しず)んでいるだろうから、今度(こんど)その(はなし)をしてみようかな。(わたし)(いま)()(まえ)()ない千鶴(ちづる)(こと)(かんが)えながら、(りょう)(はな)していた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ