0.プロローグ
私もたまにはこういうのを書いてみたかったので、書けるかは分からないけど、チャレンジさせてください。
人生はロクでもないことの積み重ねだ。
リスティア帝国の皇太子と結婚して「不憫な皇太子妃」と囁かれるほどに、愛のない結婚生活を強いられた。その結果が夫の不在時に燃え上がる城に取り残されている今の状態ということだ。咄嗟に逃げようとした足も、見知らぬ男たちに自分の名前が呼ばれていることが分かると、頭が冷え切っていくのを感じた。あの者たちは我が国の人間ではない。つまり、それは「エルネットを殺しにきた」人であることを示していた。
恨まれるようなことはしてきていないはずだ。
皇太子には愛されず、お飾りの妃であって、側室だって愛人さえもいる。公務はこなすが、実権はないに等しい。皇太子との間に子供でもいたのであれば、まだ権力はあったのかもしれない。だが、子供だっていない。そんな女を殺して誰が得するというのだろうか。後ろ盾も実家のランドワーズ家しかないような冴えない女なのだ。
「はぁ……」
ただ溜息しか出てこない。
2年の隣国のイストリア国の公爵令嬢であるエルネット・ランドワーズ。政略結婚であったとはいえ、結婚生活は愛がないものだったといえる。
結婚式はひっそりと重鎮や身内だけで済まされ、夫であるイスタージオ・リスティアとは公務以外でまともに話すこともなかった。
社交界では「不憫な皇太子妃」と誰もが一歩距離を置くようになってしまった。
そんなエルネットはイスタージオが公務で出かけるために城をあけた際に、何者かに殺害された。
なのに、次に目覚めた時には婚約前の14歳の姿になっていた。どうして若返ったのかは分からないが、神様がくれたチャンスだと思い、今度は生き残るために皇太子妃にならないようにするべく、婚約を回避しようと決意した。
しかし、皇太子との婚約の話は上がってこない。どうなっているの?
さらには、なんか物事がうまく回るようになっている。
時間が巻き戻る前との違いに困惑するエルネットと愛が重い不器用な「誰か」のお話です。