幕間①峯子とカレーについて、基本
幕間として一息、本編の小ネタを拾って行きたいと思います。
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斗秋 峯子
元大樹研究所所属研究員、現停瑚空対応家補佐官
彼女の研究生活は壮絶だった。
無給無休はザラ、情報齟齬による研究結果の隠蔽、開発権利の奪い合い、特許の拗れたトラブル等、上げればきりはなく。
疲労困憊、その言葉で片付けることすら叶わない体で、一人自宅の鍵を開ける。
やがて空腹に襲われる。
重い腰で持ち上げた胴体を手足で支え、這いずるように厨房へ。
空内では貴重品となった野菜ではあるが、研究者ともなれば多少は手に入る。
子気味良い音で野菜を切る、
軽く炒めたり、軽く煮つめたり。
分量を守って調味料と香辛料を投入。
こだわることもまた必要だが、定まったレシピを遵守するのもまた大事。
しばらく混ぜ合わせたり煮たり。
肉は手に入らなかったが、それでも十分な食べ応えだろう。
隠し味、というか気持ちを込める、というか。
やはり昨今の状況が相まって、なかなか赤黒くなってしまった。
スパイスを入れすぎたかもしれない。
レシピになぞった作り方、といっても、やはりバリエーションに富んでしまうのが、研究者としての創意工夫の精神というか、発見のためのというか。
まあその研究業のおかげでこんな色のカレーなのだが。
セワシナ・カレーとでも言おう。
「はぁ、こんな時でも、カレーは美味しいんよな。」