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97 君はビッグ


「ユキ君は何歳なの?」


「僕は先月に15歳になりました」


 本日は顔合わせで終了。という訳で、夕食を摂った後はアリアちゃんも含めてユキ君とお喋りタイム。


 基本的にはユキ君をよく知らない俺の質問が怒涛の如く炸裂して間を埋めているような状況だ。


 ユキ君と呼んでいるが、相手から否定が無い。という事はですよ、相手は男の子なのでしょう。間違いない。


 俺の推理が冴えている中、左側に座るアリアちゃんがコソコソと俺の手を触る。


 おいおい、ハニー。さっきから俺がユキ君とお喋りしているから寂しくなってしまったのかい?


 遅れに遅れ、賞味期限が過ぎまくった青春を頂くように俺は彼女の手を握る。ふふ。イケメン力出ちゃったかな?


 尻から剣と魔法を出すが、俺には鍛えた肉体がある。今ではもう元の世界にいた頃のような貧弱さは全くない。


 少々自信がついてきた俺は大胆になってしまったかな。


「アリア姫とユウキ君は恋人なんですか?」


 コソコソと手を握り合っていた俺達に気付いたのか、ユキ君が質問を投げかけてきた。


 おうよ、その通りさ。


「そうなんですか。良いですね、そういうの」


「ふふ。ユキ君も恋人を作ると世界が変わりますよ! 私は毎日が幸せです!」


 おいおい、ハニー。


「そうですね、僕もユウキ君みたいな優しい人が恋人になってくれるといいなぁ」


 ん? 待って、どういう意味だい?


 それは男として、開発者としての葛藤を理解してくれる恋人が欲しいなっていう意見なのかい? それとも乙女的な感情なのかい?


 俺の推理力がぐらついた。まだわかんねえぞ、これ。


「ユウキ君はお兄ちゃんって感じで良いですね!」


 ニコッと笑うユキ氏。俺はもうわかんねえよ。


「ユウキ様、お風呂の準備が整ったと連絡が来ましたよ」


 と、ここでキースが風呂が沸いたと教えてくれた。俺達のお喋りタイムはここでいったん終了。


 長旅の疲れを癒すべく、俺は風呂に向かった。


 魔導国は最新技術を生み出す凄い国だ。特にこの中央塔は技術が生まれる中枢である。


 つまり、風呂も凄い。


 まず広い。エリオス王国王城の風呂も広いが、どっちも銭湯みたいに広い。


 王城の風呂には魔導国から輸入した給湯器が備わっていて、一般家庭のように魔法で湯を沸かす手間を省いている。


 だが、魔導国の風呂はどうだ。


 給湯器は勿論の事、シャワーから泡風呂まであるじゃないか。端っこの方にはサウナまで備わっていた。


 ここはスーパー銭湯か? 


 まずは素っ裸になる前に、レオンガルド家に仕える執事さんに風呂場の使用案内をしてもらう事に。


「ここを押すと体を洗う用の液体石鹸が出ますので」


 すげえ!


「髪を洗う用は隣のボタンです」


 すげえ!


「外にはコーヒー牛乳とフルーツオレが入った冷蔵庫もあります。ご自由にお飲み下さい」


 パねえ! 魔導国パねえ! 技術力もそうだが、マジもんの銭湯だ。


 俺はさっそく素っ裸になって風呂の中に足を踏み入れた。入る前に体を洗おう。


 タオルも専用ロッカーにいつも綺麗な物が入ってる。とんでもねえな。この国だけ近未来すぎるぜ。


 俺はいつも通りに髪と体をよく洗う。アリアちゃんに臭いなんて思われたくないからな。隅々まで洗うぜ。


「はふぅ~」


 洗い終わったら湯舟にどぼん。泡風呂を楽しんでいると、風呂の入り口が開いた。


「あ、ユウキ君」


 入って来たのはユキ君だった。


 なぜか、胸の高さまでバスタオルで覆って。


 この時、俺の脳裏に電撃が走る。


 まさか、ユキ君は女の子だった? 見た目からして違和感は無い。それに胸まで隠したバスタオルの装備方法。


 これはマズイのではないか。女の子だったらさぁ、アリアちゃんにさぁ。裏切り行為になっちゃうんじゃないの?


『ラッキースケベだから問題無し!』


『いいえ! ここはすぐに出て行くべきです!』


 俺の中の悪魔と天使が言い合いを始めた。どうする。どの選択肢が正しい。


 こんな時に限って俺の脳内にあるエロゲに関する記憶が役に立たない。なぜなら全部ラッキースケベシーンしか思い浮かばなかったからだ。不覚!


 そうこうしているうちに、ユキ君が湯舟にインしてきてしまった。出るタイミングを逃したではないか。不覚!


「……ユウキ君、ありがとう」


「ん?」


「僕ね。悪い人に魔導具を利用されたって聞いて、とても怖かったんだ。それも魔獣憑きで苦しんでいる人が使っているって聞いたから……」


 湯舟の中で、ユキ君は抱いていたであろう恐怖をポツポツと話し始めた。


「僕のせいで、魔獣憑きの人達がもっと苦しむ状況になってしまったらどうしようって思って……」


 もしも、キースの存在が悪として広まったら。断罪されていたとしたら、原因の一部を作ったユキ君はもっと苦しんでいただろう。


 運が良かった。彼は最後にそう呟いた。


「大丈夫。そんな事は絶対にさせない。俺が全員救う。救ってみせるよ」


「ユウキ君……!」


 ユキ君は俺を見て、ニコリと笑った。


「本当にお兄ちゃんができたみたいで、僕嬉しい」


「ははは、そっか」


 そう言って貰えて、俺は純粋に嬉しかった。難しい問題も多くあるが、俺に出来る事は全てやろう。後悔しないように。


「僕も頑張るね!」


 そう言って、ユキ君は勢いよく立ち上がった。きっと気持ちが熱くなったのだろう。


 だが、立ち上がった瞬間にタオルが解けたのだ。


 これが噂のラッキースケベ。ユキ君の正体が女の子かもしれない、という可能性を30%くらい思っていた俺の目に飛び込んで来たのは――


「で、でけえ……!」


 可愛い顔に似合わない、でかい男のシンボルだった。


 俺の息子は44マグナムだと思っていたが、そんな事は無かったのだ。


 俺の息子が44マグナムだったら、ユキ君のはFIM-92 スティンガーミサイルだ。


 俺が朝食用ウインナーだったら、君はマジもんのゾウさんだ。


 こんなモンを女の子に見せてみろ。全員がエロ同人みたいになっちまうに違いねえ!


「あっ。恥ずかしい」


 俺の体は湯舟に浸かっているにも拘らず芯からぶるりと震えた。


 恥ずかしいと言いながら、こんなにも可愛い顔をしながら……恐ろしい子であると。


 俺は彼を認識しちまった……!


「と、とにかく! 僕、頑張って困っている人を救います!」


「へい、アニキ! あっしも一緒に頑張らせて頂きやすッ!」


 俺は全力媚び諂った。


 アリアちゃんを寝取られないよう、全力で味方であると。


 寝取りモンは物語で見るから良いんだ。リアルで起きたらたまったもんじゃない。


 俺はドMじゃないんだ。


 俺は濡れた手のお湯が蒸発する勢いでゴマを擦るように手をこね回した。


「え、え? どうしたの?」


「一緒に頑張りやしょうッ!」



-----



 ユウキとユキが風呂に入っている頃、女湯にいたアリアは少し焦っていた。


 ユウキとは恋人になったがまだ安心できない。


 その焦りはユウキとユキが急速に仲良くなっている光景を見たからだ。


 ユキは可愛い顔をしているが、男の子である。取られる心配は無い。そう思っていた。いや、思い込むようにしていた。


 恋人としては順調だろう。手を繋ぎ、毎日楽しく過ごし、キスも済ませた。


 だが、自分の恋人が体を求めて来ない。


 英雄と一国の姫。付き合ったならば結婚は確実。祖母であるエリスや母であるアリーシアからは「早めに子を作りなさい」と言われていた。


 王であり、父親であるアルフォンスからも「いつでも良い」とお墨付きを得ているのだ。


 加え、お姫様であるアリアは性教育に関してもエリートコースを用意される。


 男というのは恋人に体を求めてくるものであると。どんなに性に疎い男でも恋人とイチャコラすれば自然に求めてしまうものだと。


 貴族御用達高級娼館のオーナーであり、男を何人も篭絡してきた特別教育係の女性がそう言っていたのだから間違いない。


 だというのに、ユウキは全然アリアを求めない。手を繋いで笑う彼は好きだ。大好きだ。


 もう一歩求めて欲しいと思ってしまうのはアリアの我儘だろうか。はしたないだろうか。


 しかし、ユウキを好きで好きでたまらないアリアは、どうしてもそう思ってしまう。


 自分に魅力が無いのだろうか。自分は胸が大きいが、ユウキは胸が小さい方が好きなのだろうか。


「まさかユウキ様は……!」


 ここでアリアに電流走る。


「まさか、ユウキ様は男性の方が……!?」


 エリオス王国の姫、アリアの圧倒的愚考……ッ!


 思考の迷路に嵌った者の愚かな考え……ッ!


 だが、彼女の脳裏には城の訓練場で男性騎士達と筋肉を見せびらかし合うシーンが脳裏に浮かんだ。


 確定……ッ!!


「いけません! それだけはっ!」


 別の女性に取られるなどあってはいけない。ましてや、男に取られるなど長き歴史を持つエリオス王家においてあってはならない。


「いくら顔が可愛いからって、いけませぇん!」


 湯舟に浸かっていたアリアは勢いよく飛び出した。服を着て、ホカホカの湯気を醸し出しながら男湯の前へ急ぐ。


 丁度その時、男湯のドアが開いた。出て来たのはユウキとユキ。


 今すぐユウキに抱き着くべきだ。


『湯上りの女性というのは特別な色気があるザマス!』


 性教育係のエリザベスもそう言っていた。今こそ、それをやる時だ。


「あ、あの、ユウキ君、どうしたの?」


「へえ! 何でもございやせん! アニキ!」


 焦るアリアの前に現れたのはゴマを擦るユウキと戸惑うユキ。


 先ほどまでの仲良さそうな雰囲気が霧散しているじゃありませんか。


「ちょ、それ、やめて下さい……」


「へへえ!!」


 この後、3人で仲良くコーヒー牛乳を飲んだ。


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