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77 城での再会


「本当に大丈夫か?」


 エリオス王都では御前試合が開催される事が決定となり、開催まで残り3日となった。


 執務室でアルフォンスはリーベルに問う。もうこの質問は開催決定の判を押してから100を超えている。


「英雄様やエヴァン殿下がやると言ったのです。それにアリア姫様も承諾しておりますし。信じましょう」


「いや、信じていない訳じゃないんだが……」


 アルフォンスは勿論、ユウキを信じている。訓練の内容は報告書で知っているが、常識の範疇を超えるような内容ばかりだ。


 毎日Bランクの魔獣を相手し、対人戦の訓練もこなしていると書かれていた。彼の実力はルーベンス王国の猛将と呼ばれたエヴァン第二王子のお墨付き。


 それでも心配してしまうのは、娘の未来が掛かっているというのもあるだろう。


「不正はさせるなよ」


 ユウキにではない。反王派に、だ。


 ナリンキーの一件で勢力がガタつく反王派がこれを機に勢力復活を狙っているのは把握している。


 王国繁栄、民の安寧を願わず己の利を追求するばかりの愚か者を泳がせているのは理由がある。


「御庭番の報告によれば、今のところ組織の影は見えないと」


 組織の存在。これに尽きる。相手も馬鹿じゃないだろう。もうエリオス貴族を利用する事は無いかもしれない。


 だが、警戒しながら泳がせていれば、組織の尻尾を掴めるかもしれない。そんな思惑があった。


 王都襲撃から既に数か月。未だに組織は派手に動かず、動向すらも掴めていないのがもどかしいとアルフォンスは奥歯を噛み締めた。


「他国で動いている可能性も捨てきれません」


「うむ。怪しいのは……やはりオルダニアか」


 ルーベンス、ヘイムの2ヵ国は国家として纏まりがある。


 しかしオルダニアは別だ。小国が集まって出来た国故に、国内の思想や行動にはバラツキがあった。


 どの地方も領地拡大を目論んでおり、隣合う領地を頂こうと画策する者もいる始末。


 オルダニアは内部に潜入されやすく、操作されやすい状況と言えるだろう。


「中央は友好的ですが、未だに過去の思想に染まった地方は存在しますからね」


 はぁ、とため息を零すリーベル。この過去の思想――戦争で領地を増やすべきだという過激な思想は各国の文官の頭を悩ませるタネ。


 魔獣が領地に現れ、同盟国として救援しようとしても「自分達で出来る。なめるな!」手を払いのけられる。


 中央の兵すらも寄せ付けず、結局は被害を出してしまう()()が未だに存在するのだ。


 傷付いた一般人を救済できず、かといって同盟国としては手を差し伸べねば条約違反。


 これには各国もオルダニアの中央区すらも頭を抱えてしまう。オルダニア中央区も強制執行は法律違反となって着手できず、どうする事も出来ない状況だ。


 各国としては過激派の地方が中央区とならないよう願うばかり。


「全く、こんな時でさえ内輪揉めとは……」


「ウチも他所の事を言えん。まだマシだとは思うがな」


 2度目のため息を吐くリーベルにアルフォンスのため息も加わった。


 彼らが頭を悩ませていると、執務室のドアがノックされた。


 許可を出すと入って来たのは執事長のヨハン。


「陛下。ユウキ様ご一行が城に到着なさいました」



-----



「久しぶりだなぁ」


 訓練を終えて城に到着した俺達は入り口でメイドや執事に持っていた荷物を渡す。


 俺の荷物を持つのは勿論キースだ。


「訓練は順調だったようですね。しかし、毎日Bランク魔獣を狩るのはどうなのですか?」


 相変わらずのイケメンスマイル。キースは俺の書いた日記風報告書で訓練内容は把握しているようだ。


「はは。まぁ、最初はキツかったけどね。今じゃ日常になっちゃったよ」


「確かにな。野生動物を狩って肉を得る方が大変だった」


「そうそう! 魔獣化しちゃってあんま数がいないんだよな!」


 俺とエヴァンは訓練あるあるを言い合った。


 レッドは従者モードなのか会話には入って来ない。だが、耳がピクピクしているぞ。話せばいいのに。


「そ、そうですか」


 キースの口元が引き攣っていた。どうしたんだろうか。俺は変な事言ったかね?


「それより、姫様がお待ちで……ああ、もう待てなかったんですね……」


 キースは廊下の先をチラリと見た後で苦笑いを浮かべる。


 視線の先には廊下の奥からアリアちゃんがドレスの裾を手で持ちながら走って来ていた。


「ほら、行って来ると良い」


 ニコリと笑ったエヴァンに背中を押された。


 俺は照れながら小走りで彼女との距離を詰める。


「ユウキ様!」


 走って来たアリアちゃんは大胆にも抱き着いてきたではありませんか。


 彼女から漂うフローラルな匂いが俺の鼻孔を擽り、俺の腹でむにゅんと潰れる大きなお胸。


 し、刺激が強すぎますぞ!? 3ヵ月以上、野郎達とサバイバル生活していたボクには刺激が強すぎます!


「おかえりなさい! 待っていました!」


 背中に手を回し、上目遣いでそう言った後に俺の胸へ顔を埋めるアリアちゃん。


 周囲にいたメイドからは「きゃー!」と黄色い悲鳴が上がった。


「た、ただいま」


「はい。訓練は終わりですよね? また一緒に暮らせますよね?」


 オイオイオイオイ。大胆に甘えてくるじゃないの。


 俺の下半身は爆発寸前だ。どうにか訓練中に見たレッドとエヴァンの裸を思い出して事無きを得る。


「うん。訓練で少しは強くなれたと思う。御前試合が開催されるのはもう知ってるよね?」


「はい……。私……」


 目下に迫るイベント事を告げると、アリアちゃんは顔を伏せる。


「大丈夫だ」


「え?」


 俺の言葉に顔を上げた彼女の目を見ながら俺は強く宣言した。


「君は渡さない」


 俺はそう言ってキラーンと歯を輝かせた。


「はうっ!」


 決まったぜ。エヴァンとレッドと共に魔鉄道内で考えたセリフが決まった。


 その証拠にアリアちゃんのお顔は真っ赤に染まっているじゃありませんか。一緒に考えてくれてありがとう。友よ。


「イ、イケメン力が上がっています!」


「そんな馬鹿な……!」


 背後でセリフを聞いていたキースとロザリーさんが驚く。


 ふふ。無理もない。訓練中に学んだ事は戦闘の事だけじゃない。モテる男の秘訣をエヴァンとレッドから徹底的に聞いているんだ。


 この歯を輝かす笑みもルーベンス王家に伝わる必殺スマイル。どんな淑女もイチコロだとか。


 エヴァンのお兄さんもこれで奥さんを落としたとらしい。


 そう、俺は王家直伝の必殺技を得たのだ。ありがとう。エヴァン。心の友よ。


「君は俺を信じて待っていて」


「ユウキ様、私、わたしぃ……。信じています!」


 そう言ってアリアちゃんは再び俺の胸に顔を埋めた。


 俺は振り返り、エヴァンとレッドに親指を立てる。


「はっはっは! そうさ、アリア姫!  何も問題は無い! 彼は強くなった! なぁ、ユウキ!」


「ああ!」


 コツンと拳をぶつけ合う俺とエヴァン。


「エヴァン。戻ってすぐで悪いけど、訓練場で打ち合いを頼むよ」


「任せろ」


 万全の状態で臨みたい。一欠片の油断も抱いていたくはない。


 なんたってアリアちゃんの身が懸かっているんだから。


「ユウキ?」


 俺の胸から顔を離したアリアちゃんがエヴァンが俺の呼ぶ名に反応する。


「エヴァンとは友達になったんだ。レッドも。な?」


「うむ。私達は最早、親友と言っても良いだろう」


「光栄な事です」


 従者モードのレッドは控え目に応えるが、思いは3人とも一緒だろう。


 俺達は苦難を乗り越え、共に生活して絆を深めた。


 そう、もう俺は彼らに武器を作れる。それ程までに。


 後で武器を作る提案を2人にしよう。そんな事を思っていると、


「男の友情……。油断できません……!」

 

 アリアちゃん、君は一体何を言っているんだ?

  

 エヴァン達との打ち合いを夕食前に終えて、俺は自室へ戻る前に王様の執務室へ足を運ぶ。


 ノックして許可が出てから入室すると、中には王様とリーベル宰相がいた。


「どうしたのだ?」


「実は、お願いがありまして」


 俺は王様に御前試合を行う上でのお願いをする。


 結構無茶なお願いだろう。だが、王様は頷いてくれた。


「必ず勝ちます」


 願いを聞き入れてくれた事への感謝と、彼女の為にも、俺は試合に勝たねばならない。 


読んで下さりありがとうございます。

本日で毎日投稿は終了となります。


なるべく早く投稿できるようにしますが今後は他の連載との兼ね合いもありまして、2~3日間隔のペースで投稿を続けていきますのでよろしくお願い致します。

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