表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

めぐりめくる旅の先に

 太陽のあたたかな光が世界を照らしていた。

 その世界の中心にある大樹の下には二人の少年少女がいる。

 彼らは小鳥のさえずりと眼下に流れる小川のせせらぎを子守唄として、微睡んでいた。


 少女はふと目を覚ます。

 悲しい夢を見ていたような気がする。少女はあわてながら隣の少年を見る。……彼はいなくなっていなかった。その事実がとても嬉しくて涙が自然と流れていく。

 

 少年は少女の涙によって目を覚ます。

 そして彼女が泣いていることにあわてながらも、涙をぬぐう。

 彼は優しく微笑みかける。少女はそれを見て泣くのを止めて向日葵のような笑顔を浮かべる。


 今度はその笑顔に惹かれた小鳥たちが集まってくる。

 大樹はその賑わいを感じ取ったかのように、実った果実を彼らの手元に授けた。

 彼らと小鳥たちは熟した果実を頬ばりながら、生に満ち溢れた柔らかな世界を見回す。

 すると、一人の子供が木の陰にいることに気づいた。その子供は少年よりもほんの少しばかり背丈が小さかった。少年は子供を呼び寄せるようにして手を動かす。しかし、子供はただこちらを申し訳なさそうに伺うばかりだった。


 少年は立ち上がる。

 そして子供の方へと歩いていく。その背中に迷いはない。だが、少女をちらりと見てしまう。少女は笑顔を浮かべたまま首肯(しゅこう)した。


『好きだよ』


 声は風に乗り、彼の耳へと届く。

 少年は自分の道に間違いはなかったと確信した。


 一歩。

 また一歩と子供に近づいていく。

 彼はしっかりとした足取りで子供と向き合い――その左腕を優しく握りしめたあと、全身で抱きしめる。


 太陽はいつまでも彼らを照らし続けた。



  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ