めぐりめくる旅の先に
太陽のあたたかな光が世界を照らしていた。
その世界の中心にある大樹の下には二人の少年少女がいる。
彼らは小鳥のさえずりと眼下に流れる小川のせせらぎを子守唄として、微睡んでいた。
少女はふと目を覚ます。
悲しい夢を見ていたような気がする。少女はあわてながら隣の少年を見る。……彼はいなくなっていなかった。その事実がとても嬉しくて涙が自然と流れていく。
少年は少女の涙によって目を覚ます。
そして彼女が泣いていることにあわてながらも、涙をぬぐう。
彼は優しく微笑みかける。少女はそれを見て泣くのを止めて向日葵のような笑顔を浮かべる。
今度はその笑顔に惹かれた小鳥たちが集まってくる。
大樹はその賑わいを感じ取ったかのように、実った果実を彼らの手元に授けた。
彼らと小鳥たちは熟した果実を頬ばりながら、生に満ち溢れた柔らかな世界を見回す。
すると、一人の子供が木の陰にいることに気づいた。その子供は少年よりもほんの少しばかり背丈が小さかった。少年は子供を呼び寄せるようにして手を動かす。しかし、子供はただこちらを申し訳なさそうに伺うばかりだった。
少年は立ち上がる。
そして子供の方へと歩いていく。その背中に迷いはない。だが、少女をちらりと見てしまう。少女は笑顔を浮かべたまま首肯した。
『好きだよ』
声は風に乗り、彼の耳へと届く。
少年は自分の道に間違いはなかったと確信した。
一歩。
また一歩と子供に近づいていく。
彼はしっかりとした足取りで子供と向き合い――その左腕を優しく握りしめたあと、全身で抱きしめる。
太陽はいつまでも彼らを照らし続けた。