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逆ハーマジ勘弁にかかわる物語。~残念ながらリロイは今日もシスコンです。~

とある令嬢の悲劇と喜劇。~天使(笑)降臨~

作者:みなみ
とある令嬢の悲劇と喜劇。と繋がっております。

読んでくださる方に感謝を。


それはよくある話。
他人事ならば、おかわいそうにで済む話。
しかしながら、我が身に降り注げば悲劇以外のなにものでもないのです。



☆☆☆☆☆☆

「愚息がクーヘン家の令嬢にいきなり縁談解消を宣言したそうだ。」


家族一同はもとより、使用人や部下一同がホールに集められたのを確認し、エーデルタ伯爵が重々しく告げた。
その瞬間、
夫人が気を失ったものの側に居たメイドは慣れた手付けで受け止めると、近くのソファーに寝かせブランケットまで掛けてやると、何事もなかったようにもとの場に戻った。
伯爵は礼を言った後、話を続けた。


愚息がクーヘン家の令嬢ヘレナに対して行った仕打ちの数々、
クーヘン家に金を無心したり、つけで商品を持っていくこともあった事、
王弟の庶子の娘に入れあげていること等々、
包み隠さず話した。


ホールは静寂に包まれた。
エーデルタ伯爵は領主としても屋敷の主としても人格者で、領民や部下を大切にする人であった。
夫人も気を失いやすい人ではあるが、控えめで夫をたて、領民や使用人にも優しく、慕われる人であった。

しかしながら、エーデルタ家には時々愚息のように身分や美貌を鼻にかけてやらかす人間が出やすかった。
エーデルタ伯爵の身近では、
叔父や兄がそうであり、かつ逃げるのも巧かった為、
領地を守る伯爵に多大な迷惑と負債がその度に残された。

伯爵領でも恵まれた土地を持ち、不作もほとんど無いにもかかわらず家計が苦しいという負のスパイラルがここ最近成り立ってしまっていた。
それ故、
やりくりしてもやりくりしても、自転車操業なのである。

クーヘン家との縁談が結ばれ、
ようやく底から脱出出来ると思った矢先の、愚息による勝手な縁談解消。



詰んだ…



エーデルタ伯爵はその話を聞いた瞬間、気を失いたくなったが、そんなことをしても全く問題が解決しないことを知っていたので、なんとかこらえた。
更に怒り心頭な事に、
その話を報告したのは愚息本人ではなく、愚息に付けた優秀な使用人兼学友だった。
この使用人は、平民にしておくには勿体無いほどの優秀な人物で、使用人より学業を優先しなさいと伯爵自ら言い含めていた。
それ故、真面目に勉学に励んだため、気付いたときには何もかも終わった後。
愚息の蛮行を止めることが出来なかったと泣いて額を地につける少年を、誰が責められるというのだろう。


「急ぎ、クーヘン家に謝罪に向かう。
最悪エーデルタ家は取り潰しになるかもしれんが、
我屋敷の使用人や部下は皆が優秀だ。
何があろうと生活に困らぬよう勤め先や仕官先を見付けるので、不安だろうが待っていてくれ。」


そう言ってエーデルタ伯爵は深々と頭を下げた。
使用人や部下達はうつむいた。
この家では正直者が馬鹿をみる事が多すぎる。
どうかバカ息子以外のエーデルタ家の面々が幸せになれますようにと、祈らずにはいられないのであった。




☆☆☆☆☆☆


「この度の事…、
誠に申し訳ない。全て私の責任だ…
援助してもらった金と愚息が無心したものの代金は必ずや支払う。もちろん慰謝料もだ。
恥ずかしながら…我が家の財政状況はかなり悪い…重々申し訳ないが一括返済は難しいので、分割払いにしてもらえないだろうか。」


無表情のヘレナと侮蔑の表情を浮かべたクーヘン家の面々に、エーデルタ伯爵はひたすら頭を下げた。

深々と頭を下げたまま、ひたすら返事を待つ。
沈黙はかなり続いた。
かちかちと時計の秒針が刻む音だけが広い応接間に響き渡る。
5分以上は確実に経ったものの、エーデルタ伯爵は微動だにしなかった。


「もしも私が跪いて靴をなめろと言ったらエーデルタ伯爵はできますかな?
それで帳消しにしてやろうと言ったら。
まぁ、そんなことをしたと知られれば伯爵家は取り潰しでしょうが。貴族は何より名誉を重んじねばならないですからね。」


ヘレナの父、クーヘン子爵が嘲笑をこめて言った。
エーデルタ伯爵は頭を下げたまま、こたえる。


「なめることはできない。
負債を消してもらおうなどとは思わない。
因果応報なのだから。
しかしクーヘン家やヘレナ嬢の心が軽くなるならばいくらでも跪こう。
私は貴族の名誉も大切かとは思うが、それ以上に我々を支える領民を大切にしなければ真の貴族とはいえないと思っている。」


再び沈黙が訪れた。
エーデルタ伯爵は内心泣きそうだったが、ひたすら耐えた。
もう年齢的にこの姿勢を続けるのはきつい。
いっそ跪いてみようか。
そういえば、
昔兄の尻拭いをしに行ったとき相手方に跪けと言われて、
やった瞬間頭を踏まれ蹴り倒されたあげく当たりどころが悪く大出血して大変な騒ぎとなったなぁとボンヤリ思い出した。
また跪いて同じことされたら今度こそ死ぬんじゃないだろうか。
そんな事をつらつら思い出しつつも微動だにしない伯爵はある意味ご立派であった。


「全く…昔からお前は」
「お父様!!!」


クーヘン子爵が溜め息をこぼし、言いかけた瞬間けたたましく応接間の扉が開かれた。


そこには、天使がいた。
煌めく金の絹糸のような髪、薔薇色の頬、エメラルド色の輝く瞳、透けるように白い肌。
眩いばかりの美少女がそこにいた。


「ファリス?!」「ファーちゃん?!」


エーデルタ伯爵とヘレナが同時に叫ぶ。
天使…もといいファリスはエーデルタ家の令嬢である。もうすぐ10歳だ。
兄をしのぐというか霞む美貌の持ち主でもある。

ヘレナは元許嫁はどうでもよかったが、いっとうファリスの事は大好きで、ものすごく可愛がっていた。

ファリスは病弱で生死の境を幾度もさ迷い、ほぼベットの住人であったが家族の献身(兄を除く)と使用人や部下のバックアップ、ヘレナの励ましやクーヘン家の援助によりつい最近病が完治したばかりであった。

はらはらと宝石のような涙を溢しながら、ファリスは父にすがり付いた。
エーデルタ伯爵はそのまま絨毯の上にへたりこむ。
彼の足はもう限界だった。


「ヘレナお姉様…、いえ、ヘレナ様…もうお姉様と呼べはしないのですね…」


しゅん、とするファリスは抱き締めたくなるくらい可愛らしい。
抱き締めたくたてヘレナはプルプルした。


「クーヘンのおじ様、エーデルタ家が援助を必要としたのは私の治療費の為なのです。
ですから、報いを受けるのは私ですわ。
おじ様達がどうしても跪かせて靴や足をなめさせて踏みつけて満足したいのならば、お父様の代わりに私がやります…。
さぁ、どのかたからなめればよろしいのですか?」


「いや、そこまでいってな…」
「吐いたらすいません。」


クーヘン子爵がファリスの言葉に驚いて拒否しようとするが、それより早く一人納得した彼女がおもむろに膝をつき靴に顔を近づけた瞬間…


『うわあああああああ』


ヘレナとヘレナ兄、兄嫁、祖母、母が悲鳴をあげてクーヘン子爵を突き飛ばす。
子爵は真横に吹っ飛び、祖父を巻き込んで二人仲良く頭を打った。


「お父様っ!最低ですわ!」

「こんなかわいい子にそんな仕打ちを…!」

「本気で舐めようとしてましたよ、彼女!
そんなことされたらこっちが人間性を疑われます!」

「なっ?!
ちょっと待ちなさいお前たち!
舐めようとしたのはファリスちゃんであって私は悪くないぞ!」

「そもそもあなたがエーデルタ伯爵に跪いてなめれるか聞いたのでしょう!」

「お前がなにも言わないから黙ってたけど、頭を下げさせたまましばらく放置とはひどいと思うわ。
自分の髪が少ないからって!」

「薄毛だからそんな事してたわけじゃねぇえぇ!!!」

「やめんかお前たち!バカ息子さっさとどかんかい!」


喧嘩の始まったクーヘン家。
エーデルタ伯爵はポカーンとしてしまった。
さっきまでのシリアスはどこに消えたというのか。
そして愛する娘はいつの間にここに来たのだろうか。
ちなみに、エーデルタ家に馬車はひとつしかない。(ボロ馬車)
父の疑念が通じたのか、天使の笑みを浮かべファリスが答える。


「お父様、実は座席の中に隠れておりましたの。」


エーデルタ家の馬車は狭いので、少しでも荷物を入れる場所を作る為、座席兼物入れとなっており、ファリス二人くらいなら余裕で入る作りだ。
病気が治ったとたんアクティブすぎる愛娘に頭がくらくらした。どうしてそうなった。


「おじ様…
靴をなめる位では満足できませんよね…
私、この通り子どもですが性別は女です。
おじ様達がご満足するまで頑張りますので、どうか謝罪を受け入れ、分割払いを承認してはもらえませんか?」


ファリスの一言で、クーヘン子爵は妻に、ヘレナ兄は兄嫁に、祖父は祖母に腹にグーパンをくらい呻いた。
そして何故か同席していたカムイは顔にヘレナのグーパンを受け痛みに踞った。


「何をいうのだ、ファリス!
お前を身売りさせるなど…!!!」

「お父様こそ甘いのです!
本当だったらあのバカを売り飛ばしてでも金を用意すべきです!!顔だけはいいのですから!
それをしないならば私を売ってでも金を用意し、クーヘン家の皆さま方に誠意を見せるべきなのです!!」


ぐっと言葉に詰まるエーデルタ伯爵にファリスは更にいいつのる。


「いいですかお父様、私はギリギリ幼女の瀬戸際なのです!
ただの少女では価値が下がるのですよ!
どこぞの変態金持ちに高く売れ尚且つ援助金プラスアルファーを得られるのは今だけです!
クーヘンのおじ様の情報網はすごいはずですから、きっと変態の目星をつけてくれます!!
お父様も頭を下げてお願いしてください!」


エーデルタ伯爵は泣いた。いろんな意味で。


「クーヘンのおじ様、おじい様、お兄様。あと、黒髪の方…幼女趣味の金持ちをご存じありませんか?
最悪、仲介料含めクーヘン家に全額いっても構いません。お父様達の助けになりたいのです。
なるべく高く売ってください。」


天使の顔でキラキラした笑みでお願いポーズをするファリス。
こんな顔でおねだりされれば叶えてあげたくもなるが内容が内容である。
服とか靴とかなら、祖父母が孫に買え与える勢いでいくらでも買ってやるが、このお願いには頷けない。


「え~と、ファリスちゃんって言うたな?自分。
なんでそんな発想にいったんや?普通の10歳児はギリギリ幼女の売れ高とか分からんとおもうんやけど 。ちなみに、俺はヘレナの婚約者予定のカムイや。」


「ヘレナ様の紹介で来ていただいていた本屋の商人が色んな本を提供してくれたのです。
絵本で幼いお姫様が年老いた隣国の王様に嫁がされる~という下りがよく分からず聞いてみたら、色々教えて下さいました。」


外に出られないファリスに楽しみを与えたいと、ヘレナは本の販売だけでなく貸本もやっている商人をカムイ経由で紹介してもらったのだ。
ギッと鬼の形相でカムイは睨まれたがひたすら視線をそらし続けた。


「男は心にみんな変態を飼っているから、私のような幼女はあまり人前にでない方がいいと…」


その商人なりにファリスを心配してたのかもしれない…そんな空気が漂う。


「秘蔵っ子は高く売れるからと。」


が、吹き飛んで商人の死亡フラグが立った。
アイツ、後でシメルとカムイは誓った。しかしその前に愛するヘレナに絞められそうで怖い。


「クーヘン家の皆様には私、感謝していますの。
私の病と、領のたまたま来た不作が重なってしまって、どちらかをお父様は選ばなくてはいけなくなった。
その時、クーヘン家が援助してくださいました。
私は命を救われ、お父様は心を救われました。
私はそれを聞いていつか恩に報いろうと思ったのです。
幸い、私は顔はいい方なので資本のある方嫁いで、いつかお礼をするのだと計画していました。

…ですが、あのバカが全てを台無しに…」


ファリスはうつむき、拳を握りしめます。
過激な言葉は飛び出すものの、彼女なりにできる精一杯を考え、恩を還そうとしていたのが伝わります。
同じ血を引く兄妹なのにこの差。
どこで間違えてしまったのでしょう。


「もげればいいのに…」


美少女から飛び出す殺意のこもった言葉に男性陣は半歩とびずさりました。


「売られても嫁いでも、お父様ともお母様とも屋敷の皆や領民と離ればなれになるのです。
だったらどっちだって一緒ですわ。
だったらお金になる方を選びますわ。」


「ファリス…すまない…不甲斐ない父ですまない…」


血が出そうなほど拳を握り真っ直ぐ前だけをみる娘へすがり付くように抱き締めるエーデルタ伯爵。
美形と美少女の父は美中年だったので、とても絵になります。


その場にいたクーヘン家にの面々はもとよりはらはらと見守っていたクーヘン家の使用人たちもその姿にみとれました。




「そんならファリスちゃんが継げばええやん?」



その瞬間、時が止まった。
皆一斉にカムイを見る。


「うちの国、女領主もおるし女が跡継ぎの貴族もおるで?
ファリスちゃんが跡取りになって、クーヘン子爵が誰が養子にしてそれを婿にすればええやん。
ファリスちゃんはお兄ちゃんと違ってしっかりしとるし、良い領主になると思うで?」


暫しの沈黙の後、
満場一致でカムイ案は可決されることとなった。






☆☆☆☆☆☆



こうして…
この国では久方ぶりの、エーデルタ伯爵では初の女伯爵が誕生日するのはそれから数年後の事。
彼女の代でエーデルタ領は第二の王都と呼ばれるほどの発展を遂げるのは、それら十数年後の事。
庶民でありながらかの有名な学園を首席で卒業した夫と、とある豪商夫婦に支えられ彼女は生涯幸せに暮らし、また領民を大切にしたという。


その兄は学園卒業と同時に隣国の未亡人に引き取られ…後の行方は知れないという。
















はかない女子がいない不思議。

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