集められた者たち
エレベーターは上に昇ることはなかった。ただ下へ下へと降りていくのみ。
「……地下か?」
「うむ。地下五階、それがこれから向かう場所だ」
「ふぅーん、こんな所に人を集めて何をする気なんだ? まっ、今聞いてもどうせ答えてくれないんだろうけどね」
「その通りだ。全員が集まった時に話す」
佐倉が言う全員が何人なのかわからないが、何だか嫌な予感しかしない。
地下五階――つまりそれは脱出が不可能な閉鎖空間のことを示している。おそらくこのエレベーターも閉鎖されるのだろう。そんな場所に人を集めて、一体何をしようっていうんだ?
「着いた。降りたまえ」
「…………」
俺はエレベーターから降りると、周りを見渡す。
地下五階――そこは不自然なまでの白い世界が広がっていて、シンナーのような匂いが部屋中に立ち込めていた。まるで“何か”をペンキやスプレーで覆い隠したように――。そして白い壁には複数の扉が設置されている。
俺はその壁に塗られたペンキを透視する。不自然な白い壁の、本当の姿を見るために。
「――――くっ!? な、なんだこれ……? 血痕……なのか?」
「まさかそんなモノまで見えるとは。……そう、それは血痕だよ。さぁ!! 全員入ってくるがいい!!」
佐倉が大きく声を上げると、部屋にある一番大きな扉が開く。その扉からは、拳銃を手に持った三人の黒服に連れられる形で、男が一人、女が二人、合わせて三人がこの部屋に入ってきた。
俺はその中に結愛がいないことに、心底ホッとしていた。そして俺は気持ちをすぐに切り替え、今入ってきた三人を観察することにする。
この大量の血痕をわざわざ隠している部屋……さっきから嫌な予感しかしない。今は少しでも情報を集めておきたい。この後に何が起こるか、全く予想がつかないから――。
「全員揃ったな。さて、これから君たちには、必死に一週間を生き延びてもらう」
事も何気に佐倉はそう口にした。
一週間――それはけして短くはない時間。それに必死に生き延びてもらう。この言葉に嫌な予感がますます強くなっていく。そんな中……。
「ふん、おい髭。どうせそれは、ただ空腹を耐えればいいってわけじゃないんだろ?」
連れてこられたうちの一人、燃えるような赤髪にボーイッシュなショートヘアの女性は、皆が今思ったことを佐倉に尋ねる。年齢は二十歳ぐらいだろうか? その口調はかなり強気、というより攻撃的。その鋭い眼差しは彼女の性格を表しているようだった。
「……ぐすん……うぅ……」
そしてもう一人の女性は蹲り、膝を抱えて静かに涙を流している。地面に垂れる黒髪は、立てば腰ぐらいの長さだろうか。年齢も俺と同じぐらい。内気そうで、すごく気も弱そう。なぜ彼女のような人間がここにいるのか? 俺はとても疑問に思った。
「…………」
そして最後はスキンヘッドの中背の男性。いかつい風貌だが、冷静に周りの様子を確認しているようであった。そして全身に筋肉の鎧を纏っていることが人目でわかる体格の良さ。それは先日、俺を追い掛け回した黒服たちとは比べ物にならない。年齢も三十歳ぐらいで経験も豊富そうである。
この男が今一番何を考えているか読めず、特に注意が必要そうな印象を俺は抱いていた。




