第1章 アイゼン・エクスプレス(1)
0/0=1 | Null Pointer Memory=” ” 系列の話です。
今回は、web投稿を意識して書いてみました。
導入なので少し退屈ですが、この先どんどん派手になっていくといいなぁ。
1.列車旅行の醍醐味
俺はそれなりに席の埋まった長距離大陸間鉄道の列車内にいた。
地上の線路を走るそいつは、時速120キロメートルほどの速度で走行する。
車窓から見えるのどかな、牧草地は、あちこちに牛や馬などが走り回っている。
野生ではある。ただし管理された野生だ。
その集団性に配慮した、牧草地を点在させることで、定期的に移動しながら成長を続ける。
人は介入するが、それはその生存範囲の生態系を守るだけ。
人はその恩恵として、オーガニックな肉を得る。
病気もなければ、出産に失敗することもない。
無限とも言える循環を続けている。
人もそうなる予定ではあった。
安全で病気の少ない、誰かの管理のもとの幸せ。
問題はそう望むものもいれば、そう望まないものもいるということだ。
前者はその世界をユートピアとよび後者はディストピアと呼ぶ。
そんな個人の価値観の差にいちいち世界は構ってなどいない、世界は唯世界としてあるだけで、
人の感想に配慮なんて無いのだ。
向かい合わせの二人掛けの椅子に、俺は一人で陣取っている。
周囲には、1~3人の組み合わせで、列車内の座席は7割程度の埋まり具合だ。
一駅区間は約45分から60分ほど、貨物用の線路を観光用に作り変えたような佇まいの列車は
その風景を牧草地から、田園風景へと変えていく。
黄金色にたなびく成長しきった小麦を刈り取るトラクターは操っているのが人かロボットか、この距離では判別が難しい。
俺は手に持った、紙製の書籍に似せた電子ブックのページを捲りながら、こちらを見る子どもの視線を感じると
カバンからチョコレートを取り出し、その子に放り投げた。
手元にすっぽりと収まる。
このあたりではなかなか手に入れることができないようなパッケージに子どもの眼が輝くのを見て俺は満足してブックレットに視線を落とした。
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列車はその田園風景のほぼ真ん中にある瀟洒な田園都市の駅に到着する。
15分ほどの休憩。
窓を見ていると、大きな保冷バックから弁当を見せびらかしに来た初老のおっさんが
その優しそうな目で俺に、買わんかと目で訴えかけてきた。
それを見て俺は1つ購入する。
それとホットコーヒ、大きめの保温ボトルから、紙のコップに湯気の立つコーヒーを注ぐ。
風がないせいか車内にその香りが流れてくる。
弁当は、カツレツの挟んだサンドイッチが4切れ、ボリューム満点だ。
車内食堂もあるにはあるが移動がめんどくさい。
車窓を眺めながら地元料理に舌鼓を打つのもおつなものだと俺の親父が言っていた。
弁当屋のおっさんは俺に丁寧に礼をいうと走り去っていく。
この列車は24両編成、先頭から最後尾まで、800メートル近くある。
一人で売り歩いてるようで、秋口の涼やかな気候でも少し汗を書いていた。
その向こうに上品そうな銀髪の少女と、老紳士が列車に乗り込むのが見える。
このあたりの名士の娘かなんかだろう。
荷物もさほど多くないのを見てこの列車に似つかわしくないと思ったが、まぁ人それぞれさと思い
それ以上は考えるのをよした。
列車は長いようで短い休憩時間の間に荷物の積替えを終わらせると発射のベルが鳴った。
————————
すっかりサンドイッチをたいらげ、コーヒーを飲みきったあたりでバタバタと音をさせて、通路を数名黒服たちが通り抜けていく。
先頭の男が俺をちらりと見て一瞬たじろいたのがわかったが、他の連中は俺に見向きもしないところを見ると、先頭の男は普通の人だったかもしれない。
そして、脇の膨らみは武装していると思われた。
剣呑な雰囲気を感じながら関わり合いはごめんだとばかりに無視をする。
自己紹介をしておこう、俺の名前は九重九十九 。
肩書はあったほうがいいということで、ユニバーサル・ユニバース・ユニバーシティという学校の学長に誘われそこの研究員をやっている。
ユニ・・なんだっけという感想には俺も同意する。
旧世界考古学、具体的には地球歴史学の学会の出張で、移動費をケチるだけケチられて、こののんびりした列車の第三等級車両の、尻の肉を平らに均してその形を刻もうかというくらい硬めの椅子に座っている。
ま、列車の旅の醍醐味といえば臀部が痛くなるのもまたおつなものと、学長がニヤニヤしている顔が思い浮かんだ。
————
コーヒーを飲んだせいか、トイレに立ち上がる。
この長い車両の後部についているが、前の車両に移動したほうが近そうなため前の車両に向かうと
故障中、一度立ち上がった手前戻るのも癪だと思い、さらにその前の車両に入ったところでさっきの黒服の一人に静止される。
目に光が足りない、こいつは生体AIだと思うと大人しく言うことに従うことにしたが、
その奥を見ると、さっきの老紳士が誰かをかばうように立ち上がって、俺を見て、たじろいたおっさんに対峙していた。
俺は少しうんざりした顔をして、俺を静止した虚ろな目の黒服の首筋を軽く撫でる。
すぐ横の席に静に座らせた。
そして何もなかったようなふりをして老紳士のところまでいくと、
「あのぉ、お手洗いに行きたいだけなで通ってもいいですか?」
と誰にいうでもなくそう言った。
黒服のおっさんは俺のかをお見ると何かを思い出したのかキョロキョロと周りを見渡し、すっと横にどいた。
老紳士は座席側に下がろうとするが、
「お兄ちゃん!」
と老紳士の後ろから、少女の可愛らしい声とともに視線が俺に飛んでくる。
その目に怯えはないが、憔悴しきっており、なにか言いたそうな雰囲気だった。
俺は黒髪、お前は銀髪どう見ても兄妹にはみえまいよ。
親父の隠し子かもしれない、が……あの顔からこんな可憐な少女ができたというなら俺は世界を恨んだかもしれない。
まぁそんなことはないわけで、この少女の素性はある程度察しはついていた。
予定よりもかなり早いうえに場所も違うが……多分間違いないだろう。
第29位王位継承者、ダイアナ・フォン・ローゼンタール
俺に探し物の依頼があるという王女様いやまだ王女ではない貴族様だ。
俺はその少女に軽く頷くとバカっぽく
「こいつ妹なんです」と後ろに下がったおっさんに言ってやった。
「はぁっ?いや、九重九十九に妹なんかおらんぞ。」
やはり俺の顔を知っていたか。
最初ちらりと目があった時にギョッとしていたのは見逃さなかった。
「いや、まぁ最近出来たということにして、今日はお引き取りいただけないでしょうか?」
とさらに無茶苦茶な理屈を言う。
おっさんは黒服のおつきどもをチラチラと見ながら、「九重さんがそういうのなら」と声に出して言った。
責任を他の黒服を通じて上司に押し付けた。
どうやら、おっさんより黒服のおつきどものほうがお目付け役だったらしい。
まぁ黒服は生体AIだがな、俺がさっき首を撫でたのは、「そのまま座れ」って命令したんだ。
そしておっさんはスタスタと俺が来た方へ向かっていく。
黒服AIどももそれを止めるでもなく急ぐ?ようにそれに従った。
融通の聞くAIはかなり優秀だ、ちゃんと命令を聞く。
そりゃそうだ、俺はこの鉄道会社の役員。
そしてこの銀髪少女、ダイアナ・フォン・ローゼンタールが頭の上がらない人物の最上位 血盟連合 盟主 超絶皇帝 ライトニング・シュナイダーが目の敵にしている男なのだ。
その筋ではちょっとした有名人。
知らないやつは潜りとそしられることを免れない。
まぁ俺を見逃すことで、後ろに0が6つほどつくくらいのボーナスが匿名で振り込まれる。
俺を捉えてシュナイダー”クン”のもとに連行できれば0の数はもっと上がるが割に合わないと判断したのだろう。
俺は少女にウィンクして見せる。
優先順位がこの少女より高い俺に銀髪の美少女が驚くのに満足してトイレに駆け込んだのだった。
<続> 次回:第1章 アイゼン・エクスプレス(2) 2.ディアナ・ムーンリリー




