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幼馴染を寝取って始まる鉄拳伝説〜武闘家の俺、勇者が偉そうにしてきたから花嫁寝取ってやったわ〜  作者: アルファベータ


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第5話 伝説の始まり


 神の祝福と謳われた勇者レオンが、ダンジョンの闇へと消えてから幾日が過ぎただろうか。


 かつて王都の空を覆っていた、眩いばかりの神聖なオーラは霧散し、この地には冷たい風と、真実を知る者だけが抱く静かな恐怖が満ちていた。


 かつての勇者の城、その最も高い塔の頂にある玉座の間。


 重厚な扉が開かれ、漆黒の外套を纏った男がゆっくりと歩を進める。ゼノスだ。


 彼の足音は不思議なほどに静かだった。かつて重い荷を運び、骨を軋ませていた頃の荒々しさは消え去り、今では地に足をつけるたび、周囲の空気が彼という「絶対者」に恭順するように震える。


 玉座に座るのは、かつてレオンが王から賜った黄金の椅子だ。今、そこにはかつての「荷物持ち」が座り、誰にも屈することのない覇気で場を支配している。


 その背後には、かつての聖女エリスがいた。彼女はゼノスの影に寄り添い、盲目的な忠誠という名の鎖に繋がれた人形のように、ただ虚ろな瞳で前方を見つめている。


「……静かだな」 


 ゼノスが低く呟く。その言葉に呼応するように、玉座の間の外で控えていた数人の側近たちが、一斉に平伏した。


 彼らはかつてレオンを崇めていた者たちだったが、今やゼノスの圧倒的な暴力と「怨撃」という支配の力に屈し、新しい主を戴くしかないことを悟っていた。


 この国、ゼノシリアの誕生であった。


 勇者が消え、守護神を失ったことで、この国は周辺諸国から「獲物」とみなされつつある。かつての権威は地に落ち、民は英雄の不在を嘆き、王家は崩壊の危機に瀕していた。


 だが、ゼノスにとって、そんなことはどうでもいい。彼にとって重要なのは、この国が「自分たちの箱庭」になったという事実だけだ。


「ゼノス様、隣国ルビエスタの使者が……」

「入れろ」


 側近が言葉を終わらせるよりも早く、ゼノスは吐き捨てるように言った。


 重厚な扉が再び開き、ルビエスタ国の特使である傲慢そうな男が、護衛を引き連れて入場してくる。


 男は周囲を見回し、明らかに蔑んだ笑みを浮かべた。勇者不在の国など、いずれ自分たちの植民地に過ぎないという確信が、その瞳に宿っている。


「ゼノスとやら。我々の主ルビエスタ国王は、勇者を失ったこの国の行く末を案じている。無駄な血を流したくなければ、国境沿いの三つの街を割譲せよ。それならば、我らが保護下に置き、平和を維持してやろう」


 男の言葉は、平和を装った明らかな侵略の通告だった。広間に緊張が走る。


 側近たちは顔を見合わせ、恐怖に震える。だが、ゼノスだけは表情一つ変えず、玉座から立ち上がった。その所作一つひとつに、言葉では言い表せぬほどの殺気が宿っている。


 ゼノスはゆっくりと歩き出し、使者の目の前で止まった。


「保護下、か。面白い冗談だ」


 ゼノスが右手を上げ、使者の肩に軽く触れる。ただそれだけで、使者の全身が激しく痙攣した。


 彼が感じたのは、物理的な圧力だけではない。魂そのものが砕け散るような、純粋なる「死」の予感だ。


「俺の国に、他国の踏み入る領域など不要だ。帰って王に伝えろ。これ以上、俺の箱庭を汚すならば、ルビエスタの地図そのものをこの世から消し去ると」


「き、貴様……勇者でもない分際で、何を――っ!」


──ヴン。


 使者が叫ぼうとしたその瞬間、ゼノスの拳が空を切る。直接触れたわけではないが、拳から放たれた目に見えない「怨撃」の余波が、使者の護衛たちを壁まで吹き飛ばし、使者自身の両膝を強制的に地面にめり込ませた。


「っ……あ……!」


 使者は恐怖で声を失う。自分の支配下にある魔力が、ゼノスの放つ黒い闘気の前に、霧のようにかき消されていくのを感じたのだ。


「俺は勇者じゃない。……勇者よりずっと、お前たちの命を容易く刈り取る、悪魔だと思え」


 ゼノスは使者の髪を掴み、玉座の間の外へと引きずり出すように歩き出した。


 エリスがその背後を、音もなく従う。彼女の瞳には、かつて神に祈りを捧げていた面影など皆無だった。


 ただ、ゼノスという絶対者を世界に刻むことだけが、彼女の生きる唯一の理由となっている。


 広場に出ると、民衆がゼノスの姿を見つけ、ざわめき出した。


 恐怖、困惑、そして微かな期待。かつて「無能」と呼んだ男が、今は圧倒的な威圧感を纏って現れたのだ。


 ゼノスは広場の中央で、ひざまずかせた特使の首を、見せしめのように掲げた。


「これより、ユーステア国改め、ゼノシリア国は俺のものだ。俺に逆らう者は死あるのみ。俺を守る者は、俺の加護の下で生きることを許そう」


 彼が右手を掲げると、雲が割れ、どんよりとした鈍色の光が広場を照らした。それは祝福ではなく、圧倒的な支配の徴。


 この日から、英雄の時代は終わりを告げた。武力と憎悪、そして絶対的な所有欲によって塗り替えられた、冷たくも美しい「鉄拳の統治」が始まる。


 ゼノスは玉座へと戻る途中、エリスの手を強く握り直した。彼女が痛みに顔を歪めることはない。ただ、彼に触れられることを望み、そのぬくもりだけを世界の全てとする。


「エリス、見ていろ。この世界が俺たちの色に染まるまで、あと少しだ」


 彼の言葉に、エリスは壊れた人形のような微笑みを返す。空を覆う雲はさらに厚く、鈍色に輝きを増していく。


 勇者を失った世界は、今や救済ではなく、終わりなき蹂躙という名の支配へと引きずり込まれていった。


 夜、ゼノスは一人、玉座の影に隠れながら、自分の拳をじっと見つめていた。


 まだ熱い。レオンの魂を飲み込み、その傲慢な加護を自身の燃料へと変えた余韻が、今も右手に残っている。


 国境線の向こう側で、ルビエスタが軍を動かし始めていることは知っている。


 戦鬼と呼ばれる男、アーシュノルド。その名を耳にするだけで、胸の奥で黒い炎がさらに激しく燃え上がる。


「戦鬼、か。……俺の箱庭を荒らすには、いい生け贄になりそうだ」


 ゼノスは薄く笑った。これから始まる戦いは、もはや聖戦などではない。


 ただ、彼が最強であることを証明するための、果てしなき蹂躙の宴。


 遠くで火の手が上がった。国境の街が、ルビエスタの斥候によって襲われたのだ。報せを受けた側近が青ざめて駆け寄ってくる。


「ゼノス様! 国境の街、ベルノアが……!」


 ゼノスはゆっくりと立ち上がった。その背中には、かつての武闘家が背負っていた孤独など欠片もない。そこにあるのは、支配者としての冷徹な意志だけ。


「いいだろう。エリス、行くぞ」


 ゼノスはエリスの手を引き、玉座を降りる。彼らが歩くたび、床の石畳が重圧に悲鳴を上げた。


 最強の鉄拳伝説。その幕は、このようにして、誰にも止められない速度で開かれたのである。 


 夜闇を切り裂くように、二人は城を出る。その影は長く、深く、世界を塗りつぶしていく。


 復讐を果たした男が、今度は支配者として、新たな「物語」の終焉を求めて歩き出した。


 蹂躙の果てに何が待っていようと、それはゼノスの想定の範囲内だ。彼が欲するのは、ただ一つ。


 自分という存在が、この世界において絶対的な中心であるという、甘美なる事実だけなのだから。


 城門を抜けた先、冷たい空気が彼らを待ち受けていた。だが、ゼノスの胸の内は、かつてないほどに熱く、昂ぶっていた。


 これから始まる惨劇、その先にある絶望の頂点。それら全てを、彼は楽しむ権利がある。


 「さあ、見せてくれ。戦鬼とやらの実力も、この世界の理がどれほど脆いのかも、全て俺がこの拳で壊してやる」


 ゼノスは闇の向こうを見据え、小さく呟いた。彼の背後では、エリスがただ一言も発さず、影のように付き従っている。


 伝説は、まだ始まったばかりだ。この鈍色の光の先で、一体、彼らはどのような結末を迎えるのか。


 それさえも、ゼノスの拳一つで書き換えられることを、まだ誰も知らない。


 暗闇の中、ゼノスの瞳が怪しく光る。そして、今夜、国境の街ベルノアは、鉄拳による支配の証として、最初の産声を上げる。 


 これは物語の始まりではなく、終わりの始まりだとも言えるだろう。


 誰にも邪魔をさせない。何人たりとも、俺たちの愛と支配に干渉することは許されない。そう心に刻み、ゼノスは夜霧の中へと消えていった。


 玉座には誰もいないが、その冷たい椅子は、次にゼノスが戻ってくる時を静かに待ち続けている。──血と絶望にまみれた、最強の玉座として。

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