ep.11「ハンドシェイク」
富雄丸山古墳は、要塞と化していた。
奈良市丸山。住宅街の只中にぽつりと残された円墳の周囲数百メートルが、黄色い規制線と鉄柵で完全に封鎖されている。等間隔で立ち並ぶ機動隊員の列、そのさらに内側に黒い制服の民間警備員。周辺の住宅地には報道規制の看板が並び、報道カメラすらも規制線の外へ締め出されていた。
天浮船神社で取得したVPN通信すら、高出力の電波ジャミングの前には無力だった。電波の届かない結界の内側に、何かが眠っている。
その要塞から少し離れた林道の行き止まり。
木々に紛れるように停められた黒いワンボックスカー──ジンの移動ハッキング車の中で、筑紫陸は有線ドローンが送ってくる上空映像をモニターに映し出していた。
映像の中央、ブルーシートが掛けられた古墳の「造り出し《つくりだし》」部分。
そこに、たった一人の人間がいる。
泥だらけの作業着に、黒縁メガネ。乱れた一つ結びの黒髪。片手にはタブレット端末。機動隊も黒服も一切目に入っていないかのように、地層の断面を睨みつけている若い女性の姿。
──昨夜、ドローンカメラ越しに見つけた、あの考古学者だ。
「おい陸、あの姉ちゃんにどうやって接触するっちゃが?」
運転席でドローンのプロポ(送信機)を操作しながら、堂島仁が声を落とした。助手席に丸くなったセグフォが、迷惑そうに耳をぴくりと動かす。
「周りはイカつい警備員だらけとよ。近づく隙なんか一ミリもねぇぞ」
「物理的に近づけんのなら、論理的に繋ぐまでじゃ」
陸はキーボードに指を置いた。
「コトダマ。あの姉ちゃんが持っとるタブレット端末、中身を覗けるか?」
冷却クレードルの上で、コトダマの石板が翡翠色の光を鋭く明滅させた。奈良盆地に入ってから、光の強度が一段階上がっている。
「マスター……これは」
コトダマの声が、いつもより静かだった。
「博物館の蛇行剣のことはわかります。あれは『大いなる依代』──言霊の響きを増幅して遠くへ飛ばすためのパーツです。じゃが、それだけじゃシステムは起動しません」
「……何が足りんのじゃ」
「『刃核』です。依代の中心に差し込む、この山の下にまだ埋まっている別のパーツ。──それが発する、これまでに見たことのない『呼び声』です」
翡翠色の光が、強く脈動した。
「クラヴィスは刃核を掘り出すために封鎖しとるんじゃ」
陸の声が低くなった。
「この姉ちゃんの論文読んでわかった。アンテナの刀身に刻まれた溝パターンが、刃核の埋まっている場所を示しとる。考古学者ならそれが読める」
コトダマの光が琥珀色に切り替わった。警戒モード──処理負荷が上がっている証拠だ。
「マスター、現場周辺はクラヴィスの『封じの術』が敷かれとります。今様の『見えざる糸(Wi-FiやBluetooth)』も完全に潰されとりますけん……わしからは端末に手が届きません」
「……ジン。ドローン、あの姉ちゃんの真上までどれくらい寄せられる?」
「高度五十メートルまでならイケるっちゃが。それ以上は有線ケーブルの長さが足りん」
「十分じゃ」
陸の指がキーボードの上で加速した。
「ジャミングは広域の周波数帯を潰しとるが、端末のハードウェア自体が漏らしてる微弱な電磁ノイズまでは消せない。ドローンを中継アンテナ代わりにして、その漏洩信号を拾う」
コマンドラインに、陸自身が書いたスクリプトが走り始めた。ドローンのセンサーモジュールにリアルタイムでパッチを当て、電磁波スキャナとして再構成していく。
「……捕捉。端末固有の電磁シグネチャ確認。型番はiPad Pro、OSバージョン17。──ここからいける」
陸の目が鋭くなった。
「コトダマ。保守用ポートの口が見えとる。お前、中に入れるか?」
「…………」
コトダマの光が、歯切れ悪く明滅した。
「すみません、マスター。端末を縛っとる『今様の理(暗号化プロトコル)』が、わしの知識にはないものです。三千年前の古い結び目なら何でもこじ開けますが、現代の呪いは……」
「じゃろうな」
陸は鼻で笑った。だが、その目に迷いはない。
「ここからは俺の仕事じゃ」
モニターに表示された端末のセキュリティ情報を一瞥し、呼吸をひとつ整える。指がキーボードの上を滑り出した。
五秒。
ファームウェアの既知の脆弱性を突いて、保守用ポートをこじ開ける。
十秒。
サンドボックスの監視プロセスを迂回し、ファイルシステムのルート権限を奪取。
十五秒。
「……開いた」
陸のモニターに、黒縁メガネの彼女──鋳方巴のタブレット内部のデータが、滝のように流れ込んできた。
―――
メール履歴。スケジュール帳。研究ノートのバックアップ。論文の草稿ファイル。
陸は凄まじい速度でテキストを流し読みしていった。ハッカーにとって、他人のファイルシステムを読むことは呼吸と同じだ。数十秒で、彼女の「現在地」が見えてくる。
「……なるほどな」
口角が上がった。
「ジン。この姉ちゃん、正規の『学術調査団』のメンバーじゃないぞ」
「は? じゃあなんであの中におるっちゃが」
「クラヴィスが仕立てた『緊急学術調査』の建前を利用して、勝手に現場に潜り込んどるんじゃ。所属大学の調査許可証を自分で書き換えて、末端の警備の隙間をすり抜けとる」
陸はメール受信箱の一通を画面に拡大した。
差出人は、巴が所属する大学院の指導教官──奈良の考古学界では名の知れた教授の名前だった。
文面は丁寧に整えられていたが、内容は明白な脅迫だ。
『鋳方くん。
君が準備している「富雄丸山古墳出土の蛇行剣における物理構造と祭祀的意図の相関性」に関する投稿論文だが、学会への提出は見送りなさい。あの論文の主張は、考古学の定説を大きく逸脱している。現段階ではオカルトと区別がつかない。
これ以上この方向で研究を続けるのであれば、博士課程における君の今後の身分について、研究科として改めて審議する必要が出てくる。
賢明な判断を期待している。』
「……博士課程三年目か」
陸は受信日時を確認した。二週間前だ。
「学位論文の提出期限が迫っとるのに、その核になる投稿論文を潰されかけとる。研究テーマそのものを根元から否定されとるってことじゃ。普通ならここで折れる。教授に頭を下げて、当たり障りのないテーマに切り替えて、学位だけは取る。……大半の人間はそうする」
モニター越しに、泥まみれで地層を睨みつけている巴の姿を見た。
「じゃが、この姉ちゃんは折れとらん」
キャリアのすべてを失うリスクを背負いながら、単独で厳重な警備網を掻い潜り、自力で蛇行剣の異常データを追っている。自分には見えない──ソフトウェアでは絶対にアクセスできない世界の設計図を、泥と地層の中から読み取ろうとする執念。
「コトダマ。この姉ちゃんのメールにあった論文の草稿、開けるか」
「少々お待ちを……開きましたぞ」
草稿の冒頭が表示された。「富雄丸山古墳出土蛇行剣の刀身表面における微細溝パターンの非偶発性について」。陸は数ページをスクロールし、目を見張った。
「……すげぇな。蛇行剣の表面に肉眼じゃ見えん微細な溝があって、それが鍛造の加工痕じゃなくて意図的な刻印パターンじゃっていう仮説を立てとる。レーザースキャンのデータまで取っとるぞ」
「マスター、そのパターン……わしに見せてもらえますか」
コトダマに画像データを転送した。
一秒。
二秒。
石板の光が、激しく脈動した。
翡翠が琥珀に。琥珀が翡翠に。高速で明滅を繰り返す。
「これは……!」
「どうした」
「この溝のパターン──」
コトダマの声が震えた。
「──古墳の仕組みと連動した、『鍵の歯形』ですぞ!」
沈黙が落ちた。
「蛇行剣の刀身そのものが、古墳の鍵穴に差し込むための『形による秘鍵(物理キー)』のデータを──刻み込んどるんじゃ!」
陸は、ゆっくりと椅子の背もたれに身体を預けた。
天井を見上げる。
数秒。
それから、前を向いた。
「……確定じゃな」
声が低い。
「この姉ちゃんは、コトダマの力も超古代文明の知識もなしに──純粋な考古学の手法だけで、蛇行剣の『本当の機能』に辿り着きかけとる」
本物のバグハンターだ。
というより、本物の研究者だ。
自分がキーボードの上でソースコードを追うように、彼女は地層と副葬品の中にシステムの設計思想を読んでいる。
「……俺と同じ目をしとる」
バグを見つけたら、放置できない。
その先に何があっても、見なかったことにはできない。
そういう人間の目だ。
陸はモニターから顔を上げ、キーボードに両手を置き直した。
「コトダマ。ハッカーから考古学者への招待状を送るぞ」
―――
富雄丸山古墳、発掘現場。
鋳方巴は、タブレットの画面に引いた幾何学的な補助線と、目の前に広がる地層の断面を交互に見比べながら、ギリッと奥歯を噛み締めた。
周囲では機動隊員と警備員が物々しく巡回しているが、そんなものは視界に入っていない。巴にとって今この瞬間、世界は目の前の土の断面だけでできていた。
「……やっぱりおかしい」
小さく呟く。
「副葬品の出土角度が、通常の祭祀跡のフォーマットから三十度もズレてる。造り出しの主軸線と、盾形銅鏡の反射面の向きが整合しない。これは儀式のためじゃない。物理的なロック構造の一部……」
学会は、この「ズレ」を古墳築造時の施工誤差か、後世の盗掘による擾乱だとしている。指導教官もそう断じた。だが巴の目には、そのズレがあまりにも正確すぎた。偶然にしては規則的で、誤差にしては意図的。まるで──そう、まるで何かの機械の部品が、設計通りの角度で配置されているかのように。
証明する手段がない。それが問題だった。考古学の既存のフレームワークでは、この仮説を裏付ける方法論が存在しない。だから「オカルト」と切り捨てられる。
──でも、私には見える。この配置には意味がある。
タブレットのスタイラスペンを握り直した、そのとき。
画面が、暗転した。
「え?」
反射的にタップする。反応なし。バッテリー残量は七十パーセントあったはずだ。
「……嘘、フリーズ? 今?」
周囲の警備に気取られないよう、声を抑えて端末を振る。叩く。裏返す。
なにも起きない。
五秒。
十秒。
真っ暗な画面の底から──淡い緑色の光が、一文字ずつ、浮かび上がってきた。
―――
> REMOTE ACCESS : ESTABLISHED
> AUTH : ██████████ (ENCRYPTED)
──君の仮説は正しい。
論文を取り下げる必要はない。
―――
巴の呼吸が止まった。
ターミナルフォント。コマンドラインインターフェース。タブレットの画面が、外部から完全に掌握されている。
緑色の文字が、カタカタと続きを打ち出していく。
―――
蛇行剣の表面に刻まれた微細溝パターンは、
鍛造痕ではない。
あれは、巨大なシステムを起動するための
物理認証キーの歯型だ。
> ATTACHED: signal_data_0001.wav
> SIZE: 2.4MB
> FORMAT: UNKNOWN CODEC
―――
文字列の下に、一つのファイルが展開された。
波形データ。
巴が見たことのない周波数帯域のシグナルグラフ。通常の考古学的調査では絶対に観測されない、微細だが明瞭な──蛇行剣そのものが発している信号の記録。
「……何これ」
巴の手が震えた。
考古学者としての訓練が、即座にデータの質を評価する。
ノイズパターン。サンプリングレート。周波数の安定性。
偽造するには高度すぎる。
しかも、この波形の周期パターンは──
巴は息を呑んだ。
「蛇行剣の刀身の曲率……蛇行の波長と……」
一致してる。
心臓が跳ね上がった。
蛇行剣の刀身が波打っている理由。考古学界では「祭祀用の装飾的意匠」とされてきた、あの独特の蛇行形状。もしこの波形データが本物なら──蛇行は装飾ではない。刀身の形状そのものが、特定の周波数を増幅するためのアンテナ構造。
画面の下部に、最後のメッセージが打ち出された。
―――
真実を知りたければ、我々と来い。
30秒後、現場の照明をすべて落とす。
暗闇に乗じて、「造り出し」の東側、
富雄川の土手へ抜けろ。
── RiQ
―――
数秒後、画面は何事もなかったかのように元の発掘データに戻った。
巴は、しばらく動けなかった。
手の中のタブレットがまだ微かに温かい。ハッキングされた──そのことは理解している。自分の端末に、何者かが外部から侵入した。個人情報を閲覧された可能性もある。普通なら、警察に届けるべき事案だ。
だが。
あのデータが本物なら。
二年間追い続けてきた仮説を証明する、唯一の手がかりが、あのハッカーの元にある。
画面の時計を見る。残り20秒。
巴は周囲を見回した。数十メートル先には機動隊員。背後には民間警備員。ここから富雄川の土手へ抜けるには、発掘用の深いトレンチ(溝)と墳丘の段築を越えなければならない。普通なら絶対に見つかる。
だが、完全な暗闇と、この地形の知識があれば──。
逡巡は三秒で終わった。
巴はタブレットを脇に抱え、泥だらけの作業着のまま、低く身構えた。
照明が落ちるまで、あと十秒。
―――
【次回予告】
闇に包まれる富雄丸山古墳。
一陣の突風と共に、巴はトレンチ(発掘溝)を駆け抜け、封鎖線を跳ねのける。
「右じゃ、巴! そのまま泥の中に飛び込めえ!」
陸のハッキングとジンの改造ドローンが、追っ手の目を欺き、物理と情報の迷路を切り裂いていく。
二つの異なる「理」が同期したとき、出口のない古墳は、巨大な脱出経路へと変貌した。
次回、ep.12「エキストラクション・パス」
―――
【用語・補足解説】
◆ ハンドシェイク(Handshake)
IT用語で、通信する二つの機器がデータを送り合う前に「どういう約束で、どの速度で送るか」を決める最初の手続き。接続の第一歩。本作では、陸と巴が初めて「繋がった」瞬間を表している。
◆ VPN(Virtual Private Network)
インターネット上に「仮想の専用線」を作り、通信を暗号化して送る技術。外部からは中身が見えにくくなる。陸たちは第1章で天浮船神社経由のVPNを使っていたが、クラヴィスの強力な電波妨害の前では届かなくなっている。
◆ エキストラクション・パス(Extraction Path)
救出・脱出のための経路のこと。陸はハッキングで得た現場のデータと、巴の持つ地形の知識を掛け合わせ、警備の目を盗んで逃げるための「最短ルート」を導き出します。
◆ VLF(超長波)
非常に周波数が低い電波のこと。水面下や地中深くまで届く性質があり、本作ではジャミングを回避して巴の端末に直接干渉するための特殊な通信手段として登場します。
◆ 電波ジャミング
意図的に強い電波を出して、周囲の無線通信(Wi-Fi・ Bluetooth・GPSなど)を妨害すること。現場を「電波の届かない結界」のように封鎖している。
◆ 有線ドローン
ここでは、ケーブルで母機とつながったドローン。無線だとジャミングで落とされるため、有線で映像やデータを送っている。
◆ 冷却クレードル
PCパーツを載せて冷やしたり接続したりする台。コトダマの石板を載せて熱暴走を防ぎながら稼働させている。
◆ 電磁シグネチャ
各電子機器が発する特有の微弱な電磁波のパターンのこと。陸はドローンを電磁波スキャナとして改造し、ジャミングの中でも巴のタブレットだけを狙って識別した。
◆ 保守用ポート / ファームウェア / サンドボックス
保守用ポートは、メーカーが点検・修理用に設けたシステムへの通信口。ファームウェアは機器の基本動作を制御するソフト。サンドボックスは、アプリを安全な「砂場」に閉じ込めて外と隔離する仕組み。陸はファームウェアの欠陥を突いて保守用ポートをこじ開け、サンドボックスを迂回して端末の全データにアクセスした。
◆ 博士課程・学位論文
大学院の「博士」のコース(博士課程)では、最後に大きな論文(学位論文)を出して審査に通らないと博士号がもらえない。巴は博士課程3年目で、提出期限が近いのに、教授から「そのテーマの論文は出すな」と圧力を受けている。
◆ レーザースキャン
レーザーで物体の形を測り、表面の凹凸や溝をデータ化する技術。巴は蛇行剣の表面の微細な溝を、この方法で計測している。
◆ 造り出し(つくりだし)
古墳の墳丘から四角く張り出した部分。祭祀の場と考えられている。富雄丸山古墳では、ここから蛇行剣や盾形銅鏡が出土した。
◆ 盾形銅鏡
盾のような形をした古代の銅鏡。富雄丸山古墳の造り出しから出土している。巴は「副葬品の角度が、祭祀ではなく物理的なロック構造の一部では」と仮説を立てている。
◆ ターミナル・コマンドラインインターフェース
黒い画面に文字だけが出る、昔ながらの操作画面。プログラマーやハッカーがよく使う。巴のタブレットに、陸たちが送り込んだメッセージはこの形式で表示された。
◆ サンプリングレート・周波数帯域
音や信号をデジタルデータにするときの「どのくらい細かく測るか」(サンプリングレート)と「どの高さの波として記録するか」(周波数帯域)。巴は、送られてきた波形データが本物かどうかを、こうした専門的な観点で判断している。
◆ プロトコル
「通信の手順・約束事」。どの形式でデータを送るか、どうやって相手を確認するかなどのルール。陸が「二つの異なるプロトコルが同期した」と言っているのは、ソフト(陸)とハード(巴)という別々の専門が、初めて同じ目的で噛み合った、という意味。
◆ 蛇行剣
奈良・富雄丸山古墳から出土した、全長237cmの東アジア最大級の鉄剣。刀身が波打っている。本作では、超古代ネットワークの「マスターキー」を形にしたものとして描いている。
◆ ファラデーポーチ
電波を通さない素材でできた袋。中に入れた電子機器は外部と通信できなくなる。陸はコトダマを敵に検知されないよう、持ち運び時にこの袋に入れている。
◆ スクリプト / パッチ
スクリプトは、特定の作業を自動で行うために書く短いプログラムのこと。パッチは、ソフトウェアの一部を書き換える「修正データ」。陸はその場でスクリプトを書き、ドローンのセンサーにパッチを当てて電磁波スキャナに改造した。
◆ ルート権限
コンピューターにおける「最高管理者の権限」。これを手に入れると、端末の中のすべてのファイルや設定にアクセスできるようになる。陸はこの権限を奪い取ることで、巴のタブレットの中身を丸ごと読めるようにした。
◆ 脆弱性
ソフトウェアやシステムに存在する「セキュリティの穴」のこと。設計ミスやバグが原因で生まれる。ハッカーはこの穴を見つけて侵入の糸口にする。
◆ 副葬品
古墳などのお墓に、死者と一緒に埋められた品物(武器、鏡、装飾品など)。巴はこれらの「出土した角度」に注目して、偶然では説明できない規則性を見出している。
◆ 擾乱
考古学用語で、地層や遺物の配置が後世の盗掘や地震などによって本来の状態からかき乱されること。学会は巴が発見した「ズレ」をこれで片付けようとしている。
◆ バグハンター / ソースコード
バグハンターは、ソフトウェアの欠陥を専門的に探し出す技術者のこと。ソースコードは、プログラムの設計図にあたる文字列。陸はバグハンターの目で巴を見て「同じ種類の人間だ」と感じている。
◆ 鍛造痕
金属を叩いて形を作る「鍛造」の過程でできる加工の跡。巴は、蛇行剣の溝がこうした偶然の加工痕ではなく、意図的に刻まれたパターンだと主張している。
◆ 曲率
曲線がどれだけ曲がっているかを数値で表したもの。巴は、蛇行剣の刀身のうねりの曲率と、送られてきた波形データの周期が数学的に一致していることに気づく。
◆ 逡巡
迷いやためらいのこと。巴は、見知らぬハッカーの指示に従うかどうかの逡巡をわずか三秒で振り切った。
◆ RiQ
陸のハッカーとしての通称・ハンドルネーム。巴に送ったメッセージの最後に「RiQ」と署名している。
―――
※本作はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは関係ありません。
※遺跡・古墳の無断立ち入りや発掘は法律で禁止されています。見学の際は管理者の指示とマナーを守ってください。




