表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生したので楽しく過ごすようです  作者: 十六夜 九十九
第5章 武道会そして陰謀
96/204

第87話 闘争心全開のようです

 いそがないと遅刻する!あと一分で昼休憩終わりだし!!


「うおぉぉぉおお!!」


 俺は奇声をあげながら会場内を全力で駆け抜ける。周りからの目線が痛いのは重々承知だが、声を出してた方が速く走れてる気になるから気にしない!


 リ、リングがみえた!このままなら間に合う!


 俺はリング内に滑り込む。それと同時に昼休憩が終わりを告げ、次の試合のアナウンスが流れ始める。


「セーフ!いやー、間に合って良かったわー。一時はどうなる事かと……」


「おいてめぇ!なにギリギリで飛び込んできてんだよ!五分前行動基本だろ!」


「す、すいません……」


 レオンに怒られてしまった……。だが、レオンが意外に真面目だという事が分かったな。五分前行動とか言ってるし、怒る理由が正当すぎて何も言い返せないし。


「で?お前は戦う準備出来てんのか?俺、お前と全力で戦うのずっと楽しみにしてんだよ。お前強いしな」


 いやー、俺モテモテだなあ!こんなモテ方したくないけどなあ!何でこんなに狂戦士みたいなのに目をつけられるかなあ!よく分からないなあ!


 ただまあ、試合だしそこは礼儀を持って対応しないとな。


「準備運動なら今走ってきたからな、それで充分だ。戦いの方の準備もバッチリだぞ」


「俺も準備万端だしいつでもいけるな!」


 準備万端とか言いながら屈伸とか伸脚とかしちゃってるし、それほんとに準備万端?俺には準備体操してるようにしか見えないぞ?


 それにその間も新しい玩具を買い与えられたような子供の顔してるし。俺と戦うのそんなに楽しみだったのかよ。


「なあ、レオン…さん?」


「俺のことはレオンでいいぞ」


「ならレオン。どうしてそんなに俺と戦いたい?」


「は?強い奴と戦いたくなるのに理由とかいんの?」


「え、マジかよ……。そんな戦闘狂みたいな理由聞いたの初めてだ……」


「強いて言うなら、俺の蹴りを簡単に受け止めたから?」


「いや、俺に聞かれても……」


 蹴りって言うとあの予選の時の巻き込まれたやつか。あれ結構スキル使って止めたんだった。それで目をつけられるとはなあ。避けとけば良かったのかもしれん。


「多分だが俺だけじゃないぞ。フェルトも同じこと思ってるはずだからな」


「お前らなんでそんなに戦闘狂なんだよ。お前達と戦うこっちの身にもなれ!」


「そんなの知るか。俺は強い奴と戦えればそれでいいし」


「はぁ。駄目だこいつ……早く何とかしないと……」


 本当になんで俺の周りには頭のネジが飛んでる奴しか出てこないんだ。そのネジ一本どころか全部飛んでる奴だっているからな。


「これから始まるのは準決勝。ここまで駆け上がってきた四人の強者が決勝に上がるために、自分の力を証明する!そして、その力を見せてくれるのはロウリ・コーン選手とレオン選手だ!」


「お、もうそろそろか!」


 レオンは興奮が抑えきれず、既に修羅のような空気を醸し出してきてる。


 やはりその空気を直に感じるとその異様さが良くわかる。肌に刺さる様な刺激、全身から恐怖が溢れ、気を抜くとその雰囲気に飲み込まれそうになる。


 俺も仕返しに威圧しておくか。八割程度でな。それ以上は制御が効かないからな。


 俺が威圧をするとさっきまでの空気や雰囲気はなくなった。だが、レオンに俺の威圧が効いている様子はない。恐らく俺の威圧と拮抗しているのだろう。


「準決勝、我らにどんな戦いを魅せてくれるのか!!ロウリ・コーン対レオン戦、試合開始!!」


 試合が始まった。俺は真っ先に思考解読のスキルを常時発動させる。さらに思考加速、並列思考により状況確認能力を高める。


 一方、レオンは一切動かずにその場で下を向いて意識を集中している。レオンのその思考は戦える喜びで染まっていた。


「今までないくらいに昂ってきた。こんな状態で戦えることに感謝を」


 顔を上げたレオンは開口一番、独り言のように呟く。


「そんじゃいくか!」


 レオンが動き出す。思考加速を使っている俺でギリギリ目で追える速さだ。速さだけでいえば勇者に匹敵するだろう。


 その速さで突っ込んでくるレオンは真正面から俺の鳩尾を殴ってくるようだ。俺はレオンと同じく拳を突き出す。


 そして俺とレオンが突き出した拳同士がぶつかり合う。


 衝撃波が起き、空気が振動する。俺とレオンはそれにより後に飛ばされた。


 俺は受け身を取り、その場に素早く立ち上がる。


「やっぱりこれぐらい余裕で受け止めるか……ぐっ…!」


 同じく立ち上がったレオンの片手が潰れている。


 これは俺がやった事だ。拳同士が衝突した時、俺の拳は、硬化、超硬化されていた。さらに衝突した直後、衝撃波を発生させたことにより、俺に来る衝撃を緩和、弾き返した。


 それによって予想もしない衝撃波が発生し俺達が飛ばされたのだ。


 これぐらいなら勝てる。余裕とまではいかないが勝つことは出来る。


「それなら、ブースト1。速度制限解除」


 レオンが何かを呟いたと思った瞬間、レオンの体がブレた。


 俺がそれを認識した時にはレオンが回し蹴りの体制で俺の目の前に来ていた。


 俺は咄嗟にガードをしたが不完全な状態で回し蹴りを食らい、横に飛ばされ地面を転がっていく。


 転がる先には既にレオンが構えていた。


 やばい!このままいけば上に上げられたあと、ラッシュを食らってしまう!


 俺はそれを防ぐためにレオンが構えている所から離れた場所へ転移をした。


 ガードしきれてなかったとはいえ、回し蹴りをあの速度で受けると流石にやばいな。


「ちっ、読まれてたか」


「流石、レオンもやるな。だが……」


 俺はさっきの速度に対応する為に自分自身に支援魔法を掛ける。速度、筋力、防御力、それらを強化する。


「だが、やられっぱなしっていうのも気に食わないな」


 俺は走って刹那の時間でレオンの前に現れるそして、初めにレオンがやったように拳を突き出した。


 レオンはさっきの一回で分かっていたのか回避してきた。服にかするくらいギリギリで避け、かすった部分は刃物で切られたかのようになった。


 俺はこの流れのまま、回避したレオンに追撃を加える。レオンの横に移動した俺は後頭部に狙いを定め、蹴りを繰り出した。


 これを察知したレオンはその場にしゃがみ、俺の蹴りを躱そうとしている。だがそんなのは思考を読んでいる俺には意味が無い。


 そうなることを知っていた俺はレオンを土魔法を使い、バランスを崩した。


 それによって俺の蹴り入り、レオンが飛んでいく。


 場外にまではいかず、レオンは立ち上がる。


「レオン、こんなもんか?」


「まだまだこんなもんじゃねぇよ、ブースト2、筋力制限解除」


 レオンがまたしても動き始め、捕捉できなくなる。


 今度は俺の後ろに現れ、地面をおもむろに殴った。するとリングにヒビが入り、強い衝撃が俺を襲う。


 少し体勢を崩した俺をレオンがしたから蹴り上げ空中に打ち上げる。


 まさかあのラッシュが!


 俺はすかさずベース雷で魔力転化した。そして、身体全身から放電する。


 レオンにその内の一つが当たり、あのラッシュはされることは無かった。だが蹴り上げられた箇所は骨折しているのが分かった。


 威力が上がっているか……。あまり食らうと俺の自己再生でも間に合わない。


 レオンはそれを知ってか知らずかしてなおも攻撃を加えてくる。体術を駆使し、俺の急所を突いてくる。


 俺はスキルをフル稼働し、下段上段の蹴り、突き出す拳、様々な攻撃を読み対処していく。


「ははは!流石だ!それでこそ俺が求めた奴!さあ最後のブーストだ!ブースト3、獣化!」


 レオンは攻撃をしながら、どんどん獣化していく。


 潰れた腕が再生し、全身が金色に輝く毛に覆われ始め、筋肉が隆起し、両手両足の爪が鋭く尖り出す。更に牙がむき出しになり、その姿はもう戦神のようだ。


 獣化は半人半獣で終わり、修羅のような雰囲気が一気に増した。


 威圧を放っているはずなのにその雰囲気に呑まれそうになる。その反動で魔力転化も解けてしまった。


 八割じゃ駄目だ!全開でいかなければ!


 全開で威圧を放つ。制御が効かず観客席まで影響を及ぼすだろうがそんなの気にしているときではない。


「この形態になるのも久しぶりか……。ここからラストだ。これで終わらせる」


 レオンは獣化をした事で、スピードもパワーも先程とは桁違いになっている。


 さらに、獣化したからなのか、野生の勘のようなものが働いているようだ。俺が躱す先に攻撃が既に飛んできていることがある。


 俺が躱すのも全てギリギリだ。レオンにそこを突かれ、殴ってくると思いきや服を捕まれ、上に投げられた。


 転移をしなければと思った時には既に、鋭い爪によって切り裂かれていた。


 さらに傷は増えていき、どんどん血まみれになっていく。


 そして最後には踵落としをくらい、地面に勢いよく激突する。


「がはっ!!」


 俺は地面に横たわっていた。


 目の前が目に入った血で赤く染まっている。その目に映るのは無傷で立つレオンだ。


 痛覚遮断で痛くはないが、体の至る所がだめになってるな。


 これ以上はどうしようもないかもしれない。ならもう何も考えず、倒れるまで全力で戦いたい。



 …………条件クリア――思考破棄発動。



 思考破棄が発動すると同時に何をしなければいけないのか、頭の奥から溢れだす。


 俺はその衝動に身を任せた。すると、俺が俺でなく、だが、確かに俺の意思で体が動き出す。


「回復魔法と自己再生機能をフル活用……全快。全身を超硬化。触手を四本追加。思考加速と思考破棄の併用により思考速度増加。並列思考により魔力転化のベースを火、水、風、土、光、闇の六つに。支援魔法を並列思考により重ねがけ」


 立ち上がった俺は、俺でも知りえなかった方法でどんどん自身を強化していく。


 回復をして、スキルを駆使し出来うる限りの強化をする。


「目的の達成条件を再確認、行動開始」


 最後にそれを呟くと、レオンに攻撃を開始した。


 レオンの元まで行くのに時間が止まっていたのではないかと言うほどの刹那の時間しかかからなかった。


 そして、レオンを蹴り飛ばす、


 飛んでいるレオンの上に張り付き、両腕両足をもぎ取る。レオンがそれをされた事を気付かないほどに早く。


 最後に六つの腕で、レオンの腹を連打する。あまりの衝撃にレオンの腹には大きな風穴があいた。


 レオンはその状態になり死んだ。


「目的達成。思考破棄を解除」


 思考破棄が解除された途端に、頭に鋭い痛みが走った。


 ぐわあぁぁあ!!頭が!頭が割れるように痛い!こ、これは思考破棄の代償か……!!


「準決勝ロウリ・コーン選手対レオン選手は、ロウリ・コーン選手の勝利だぁ!!」


 俺はそれを最後まで聞き届けて、意識がブラックアウトした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ