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異世界に転生したので楽しく過ごすようです  作者: 十六夜 九十九
第5章 武道会そして陰謀
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第81話 穏やかな空間のようです

 俺達は試合が終わってすぐ、救護室に居るであろうミルとレンの元へ向った。


 救護室に入ると二人はベッドの上に座っていた。もう、起きていたようだ。無事そうに見えたが、二人の表情は対照的だった。


 ミルは清々しく自分の勝利に酔ったような表情、レンは自分が惨敗してしまったという弱さを悔いている表情を。


「二人とも起きたか。体調はもういいのか?」


「ん」


「体調はもう大丈夫です……」


 ミルはいつも通りの声音で返事をしたが、レンは少し落ち込んだ感じの返事をした。


「レン?どうしたの?」


 そうか、ミルはずっと寝てて知らなかったな。


「私は全力を尽くし試合に負けました。……すいません」


 ミルはそれを聞いて驚いている。レンが負けるなんて思っても見てなかったっていう顔だ。


「謝る必要はないさ。相手が悪かった。六種族の中でも金虎族と銀狼族は特別強いみたいだからな。俺でもギリギリって言ったところだろうしな」


 それはゼロにも言える事だ。負けてからずっと俯いている。俺が見ていても分かるくらいに今まで以上に頑張っていたし、負けたのが相当に堪えているのだろう。


「レ、レンちゃん大丈夫……?元気出して……」


 リンが心配そうにレンに寄り添う。レンはそれに応えるように少し無理をした様に笑った。


「私はもう大丈夫ですよ。ですからそんなに悲しそうな顔をしないで下さい。リン様は笑ってる方が可愛いんですから」


 レンはリンの頭を撫でながら、子をあやす母の様に呟いた。


 なんとまあ絵になることか。二人が小学生高学年くらいの歳とか忘れてしまいそうだわ。


「あの二人絵になるわねえ。というかほんとに絵にして売ったら買い手多いと思うのだけど」


「ジュリよ。俺も最初の感想は共感できたが、後半に言ったことがよく理解できないのだが?」


「それあれかしら?この子達は自分のものだから他の人には見せてやらないみたいなあれ」


「違うわアホ!」


「アホってなによ。このロリコン!」


「お、俺はロリコンじゃねぇし!」


「へぇー、そっ」


「なんだよそのいかにも信じてませんみたいな口調は!」


「でもあなたの周りにいる子達を見たら……ねぇ?」


「うぐっ……。それを言われるとそうとしか見えないのが俺にはきついわ……」


 俺がジュリに言い負けうなだれている時、救護室に人が入ってきた。


「あー!やっぱりここにいたー!探したんだからね!」


「ここは救護室だ。静かにした方がいい」


 騒がしく入ってきたのが女神。そして、それを咎めていたのがロニさんだった。


 何故に女神がロニさんと一緒なんだ?


「ロニさんじゃないですか。どうしてうちのと一緒に?」


「この女性が君達を探していたからな。少し親切心が働いただけだ」


「そうですか。案内していただいてありがとうございました」


 すっかり女神の事忘れてたぜ。そのせいで今女神はいじけてるしな。


「すまないがもう戻る。再開を喜びたいところなのだが、パーティメンバーを待たせているのでな」


「はい、また会えたらその時にでもお話しましょう」


「そうだな。じゃその時まで」


 ロニさんは背中を向けて手を振り立ち去って行った。か、かっこいい!


 っと、そんな事は後で考えるとして、今は宿に戻ろうか。


「皆、宿に戻るが大丈夫か?」


 すると手を上げるミル。何か不都合があるのだろうか?


「ミルどうした?」


「お腹すいた」


「そういえばミルは昼間も寝てたな。そりゃあ腹も減るか」


「ん。だからよろしく」


「はいはい、分かったよ。……他の皆は大丈夫か?」


 またしても手が上がる。今度はゼロだ。


「……わたしにもごはん!負けたからやけ食いするのー!」


「お、おう分かった。じゃ、もういいな?」


 だが、まだ手が上がる。次はレンだ。


「私、晩御飯は主様の手作りが食べたいです」


「ん。あたしもそれで」


「わたしもー!」


「分かったよ。……食材とかは魔王様に貰ったのがあるから大丈夫なはず」


 大丈夫だよな?足りなくなるとかないはず。無くなった時は買いに行くしかないからな……。それはめんどい。


「よし!もういいよな!」


 しかし、まだ手は上がる。次はリンだ。


「あ、あの、今日寝る時隣で寝ていいですか……?今日の戦闘見てて怖かった時があったので眠れる気が……」


「それぐらいならお安い御用だぞ。もうないよな?な?」


 またしても手が上がる。手を挙げたのはジュリだ。


 なんだよ!皆、今日はやけに積極的だなおい!


「このやり取りってこの場に留まったままじゃないとできないのかしら?」


「マジかよ。お前……天才じゃね?」


 確かにそうだわ。これ全部、宿に戻りながら話せる内容じゃん。なんでそんな簡単な考えに辿り着かなかったんだ……!


「はい!はいはい!はーい!」


 一人まだ手を上げている女神とかいうやつがいるが、どうせくだらん事だろう。顔がニヤけてて、隠しきれない悪戯心が見え見えだ。


「うっし、じゃあ戻るぞー」


「えー!なんで私無視するの!ちょっと待ってよ!私を置いてかないでー!」


 コントみたいなやり取りをしながら皆で宿に帰る。


 しかし、ここで一つ重要な事に気付く。


 俺、料理器具何も持ってなくね?これじゃ何も作れないぞ……。


「おい女神」


「はいはーい!皆のヴィーナス、女神ちゃんだよ!」


「あのさ、お前料理器具出せるか?」


「えっ、ツッコミなし?何か私一人ではしゃいでるみたいで恥ずかしいんだけど」


「そんなのいいから質問に答えろ」


「……出せる」


「じゃあ出しといてくれ。俺が皆の分、腕を奮ってやる。……それとお前な……あれはさすがにいたいからやめとけ、な?」


「うわぁーん!残念な人を見る目で諭されたー!」


 などと言いながらもしっかり料理器具を出していくあたりが、さすが女神。


 IHクッキングヒーターに、お玉やヘラ、まな板、包丁、鍋、フライパン。炊飯ジャーに、電子レンジ、シンクなんてものまで出してくる。


 なんて充実したキッチンなんだ。これなら色々作れそうだ。


「うっし、今日頑張った皆の為に本気出しますか!」


 俺が料理を始めて一時間。出来た品は二十種類を超えた。


 ピザ、ポトフ、ハンバーグ、唐揚げ、ステーキ、カツ、コロッケ、サラダ、カレーライスの様な洋風のものから、麻婆豆腐、炒飯、焼売、餃子の中華に、白ご飯に焼き魚、うどんにそば、卵焼き、豆腐の和食を作った。


 シロ用に猫でも食べられる美味しい料理を作って上げた。


 触手のおかげて全てを並行して作ってたらスキルに並列思考ってのが手に入ったぜ!


 それと料理上手のスキルがすごいことに気がついた。とりあえず自分が思い浮かべた料理のことなら何でも分かってしまうところとか特に。


 材料とか貰ってきたやつだけで済ませちゃったし。よく出来たと思う。


 料理を作る時の時間短縮に時空魔法の時間を操作する方で、煮込み時間とかめっちゃ早めたし、ピザとかうどんの生地の発酵では本当に役に立った。


 クッキングヒーターとかより炎魔法とかで直にやった方が断然早いし、水とか自分で出せるし、一人で五、六人の料理人の役割するしで、魔法とスキル様々だった。


「な、なにこれ?見たことない料理ばっかり」


「お?そっかミルたちは知らないのか。説明した方がいいのだろうが、俺はめんどくさいからパスだ。詳しくはジュリに聞け」


「え、私?まあいいわ。私、今気分いいから。……久しぶりに和食が食べれるわ!」


 俺が腕によりをかけて作った料理。まあ美味しいだろう。


「ジュルリ……。食べていい?」


「おういいぞ!どんどん食え」


「「「「「「いただきます!」」」」」」


 さて、俺は作ってる間につまみ食いしてたし、食後のデザートでも作っておくか。


 まずは定番のケーキとアイス。和菓子だと団子に大福あたりか?それと俺の好物プリン。これは外せないな。


 あとは猫用のケーキ!シロにもあげないとね!


「久しぶりに食べるカレーはやっぱり美味しいわ!」


「ちゃーはんってやつご飯に味がついてておいしー!」


「うどんはつるつるしていて、初めての感覚です」


「こ、このはんばーぐってお肉の塊なのにかたくない!」


「麻婆豆腐、からい。けどうまい」


「意外に料理上手い!まあ私の方が上手いけど!」


「ニャオーン」


 三者三葉の感想をくれる。嬉しい限りだ。


「デザートもあるからな。あんまり腹いっぱい食うなよー」


「「「「「「はーい!」」」」」」


 こんなに楽しい食事も久しぶりだな。最近はちょっと色々あったからな。こういう時間があってもいいよな。


 そして、楽しい食事の時間は過ぎていき、みんながデザートを食べ終わる。


「アイス冷たくておいしかったのー!」


「頭キーンてする……」


「そりゃアイス一気に食うからだ」


「プリンってすごく美味しいですね」


「あのプルンプルン感が好きになりました!」


「ケーキなんていつぶりかしら……。紅茶とマッチするわ」


「私にも一つ下さりますか?」


「ええ、どうぞ」


 デザートを食べ終わった後のゆったりとした時間が心地いい。


 その心地よさがお腹一杯になった俺達にだんだんと眠気を誘う。


「あ、あるじさま……。寝る時は隣でお願いします……」


 眠そうな顔をしてリンは俺に告げる。


 俺もちょうど眠かったところだ。一緒に寝よう。


「じゃあ、今から一緒に寝るか」


「は、はい……!」


 俺とリンは同じベッドに横になる。


「私達も眠りましょうか」


 女神のその一言で、俺達全員が眠りにつくことになった。

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