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異世界に転生したので楽しく過ごすようです  作者: 十六夜 九十九
第5章 武道会そして陰謀
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第80話 因縁の決着とジュリの勝負のようです

「第七回戦はトミー選手対ロニ選手!!二人は戦う前から闘志が煮えたぎっているぞぉ!!」


 七回戦目、ドラゴン討伐の時に一緒に戦ったトミーさんとロニさんとの戦いだ。二人はリング上で互いに睨み合い、雑言罵倒を繰り返している。


「ふん。俺がお前に負けることはない。万が一負けたとしてもそれは俺に急用があってどうしても棄権しないと行けなくなった時だろうな」


 何を言ってるのか分からないロニ。


「な、なんだよそれ!俺だってお前になんて負けないさ!お前みたいな理論詰め野郎に負けない!」


 それに張り合うトミー。


 この二人実はめっちゃ仲いいんじゃないのか。トミーさんとかロニさんのことよく分かってる感じだしな。


「第七回戦、試合開始!!」


 二人が罵倒しあってる間に試合が開始される。


「……お前と言い合っていても時間の無駄のようだ。……炎魔法、火炎球!」


 ロニが先制攻撃を仕掛ける。


「うわ!ロニお前いきなりとかずるいぞ!それに魔法とか……!」


 トミーはあたふたと慌てながら火炎球を回避する。


「あちち!……くそっ!俺だって!!」


 トミーは剣を抜きロニに突っ込む。


「ふん。そう来るのは分かってた。風魔法、旋風!」


「……くっ!」


 トミーは風魔法のせいで中々ロニに近づくことができない。


「お前魔法とか卑怯だろ!?」


「何を言ってるんだお前はこれは試合だ。卑怯も何も無い」


「全くもって正論だが、俺魔法使えないんだぞ!ちょっとは遠慮しろよ!」


「そうは言っても俺だって剣術は使えん。誰しも得意分野で戦うだろう?」


「ぐぅ……」


 トミーは戦闘で劣勢な上、言葉でも言い負かされる。そりゃぐぅの音も出るわ。


「俺は一体どうすれば…………そうだ!いい事を思いついた!」


 トミーは未だ起きている旋風をどうにかするつもりらしい。


「何をするのか知らんが何をしても無駄だ。暴風魔法、乱気流!このまま場外に落ちろ!」


「落ちてやるもんか!」


 トミーはそう言いながらリングの端へ移動する。そして、あろう事か自分から場外へと降りてしまった。いや、正確には降りたように見えた。


「ふん。いきがっていた割には明けっけなかったな」


 ロニは暴風魔法をやめ、勝ち誇った様に鼻を鳴らすが、いつまで経っても司会者の勝利宣言が行われない。


 ロニがそれに気付いた時には既にトミーは迫っていた。なんとトミーはリングの端にぶら下がった状態で、ロニの背後へ移動していたのだ。


「もらった!」


 トミーはロニが自分の攻撃範囲に入ると同時に剣を横に薙いだ。


 ロニは咄嗟に回避行動を起こすが、間に合わずに、腕を斬られる。


 斬られたロ二の腕は血が滲み、痛々しい。


 ロニは対処する為にまた魔法を使おうとする。しかし、トミーがそれを良しとしなかった。


「魔法は使わせないよ!」


 トミーは魔法を使わせない為に攻撃し続ける。


 負傷した上に魔法も使えないとなって徐々に焦り始めたロニは、トミーの攻撃を避けるので手一杯のようだ。それを好機と見たトミーは攻撃の手をより激しくしていく。


 どんどん押され、後退していくロニ。遂にはリングの端に到達してしまう。


「どうだ、ロニ!俺だってやる時はやるんだ!」


「くっ、認めたくはないが確かにそうだな……。だが勝つのは俺だ!」


 ロニは会話をした時に出来たトミーの一瞬の隙を見てトミーに抱きついた。


「まさかお前……!」


「そのまさかだ」


「くそっ、離せ!離してくれ!」


 トミーの命乞いを完全に無視し、ロニはトミーと一緒に場外へと飛んだ。


 空中にいる間にも二人の戦いは続いていた。場外に相手を先に付けるその戦いが。


 ロニはトミーを完全に固めている。その為ロニはトミーを下にした状態で場外へと飛び出した。


 一方トミーは自分の持っていた剣でどうにかしてロニを引き剥がそうとする。


 一瞬の攻防の後、二人が場外へと落ちる。


「第七回戦、結果は……!ロニ選手!!」


 勝ったのはロニだった。あの攻防を制したのはロニだ。


 トミーは悔しそうに涙を流す。奇抜な発想で戦っていい所まできてたのだ。負けるのはさぞかし悔しいだろう。


「どうだ、俺が言った通りだろ。俺はお前なんかに負けない」


「グズッ……お、お前あれは卑怯だ……!だから俺はまだ負けてない!」


「全くどこの駄々っ子だ……。ほら、立てるか?」


 ロニはトミーに優しく手を出す。そして、トミーはその手を握り、うなずいて立ち上がる。


 えぇ。何この青春チックなワンシーン。やっぱりお二人は、熱い友情で結ばれてません?


 俺はロニとトミーを見てそう思うのであった。



◇◆◇◆◇



ーside:ジュリー


 全くどんだけ待たせるのかしら。待ちすぎて準備運動を最低でも十回はしたわ。


 でもそのおかげで体が軽い。私、この勝負勝てそうな気がする。


 ……盛大なフラグを立てた私が通りますよーっと。


 ……はっ!こんなこと考えてる場合じゃないわ。相手は六種族。全力で戦わないと負けてしまうこともありえる。


 リング上に上がりながら私はそんな事を思う。


「今日の私は絶好調!準備体操もしたしいい感じの体が出来てる!」


 私の向かい側には既にスゥと呼ばれる黒馬族がストレッチをしながら待機をしていた。


「さて!本日最後の第八回戦!戦うのはジュリエット選手とスゥ選手だぁ!!」


 スゥはストレッチをやめ、私と向かい合う。顔は笑っているが目が獲物を狙ったそれと同様の鋭い目だった。


「では第八回戦、試合開始!!」


 開始の合図と同時に、スゥが足を上げる。


「いくよ!疾風脚!!」


 疾風脚。予選でも出した技か。早々に蹴りをつけようとしているみたいね。……蹴り技だけに。


 ……私は何も言ってないし、聞いてない。さてと!私も序盤から出し惜しみしないわよ!!


 思考解読。スゥがどこに攻撃してくるのか。どうやって攻撃するのか。そして、どこががら空きなのか。思考を読めば分かってしまう。


「とりゃ!とりゃ!」


 スゥは斜めに、縦に、横に空気の刃を飛ばしてくる。


 私はスゥの方へ走りながら、空気の刃の斜線上からそれ、細剣を取り出す。


「なかなかやるねぇ!でも次はどうかな!疾風鳳脚!」


 先程の疾風脚よりも速い。そのせいで空気との摩擦で炎が起きているみたいね。


 でも、私にはそんなのは全部お見通しよ!


 私はスゥに着実に近づいていく。近づくつれ避けるもの大変になるが、泣き言は言ってられない。


「むむ!こんなこと初めてだよ!楽しくなってきたね!」


「私が遊んであげるから十分に楽しみなさい」


 この時点で私の攻撃範囲にスゥが入った。スゥの意識が薄い左肩を狙い、細剣を突きつける。更にそれと同時にスゥの背後に二体のホーリーナイトを召喚。


 スゥは肩を狙われていることに気付き、右にずれる。しかし、その時には既にホーリーナイトが召喚され剣を振りかざしている最中。


 さすがにスゥは焦ったのかその場から大ジャンプをして、私達から逃げる。


「あら、せっかく遊んであげてたのに、もう飽きたのかしら?」


「強いね!ほんとに強い!私もちょっとだけ本気出してみようかな!」


 会話は噛み合わなかったけど、スゥがやる気になったのは分かった。


 スゥはこの後に自分の俊足で私に攻撃をしてくるようだ。


 どれ程の早さなのか分からないがどこを攻撃しようとしてるのかが分ればなんてことは無い。


「じゃいくね!」


 スゥはその場から消えた。土埃すら立てずに消える。


 さすがに驚いたけど、もう大丈夫。攻撃が来るのは後ろからだって分かってるから!


 私は後ろを向いてスゥの攻撃を受け止める。その隙に召喚していたホーリーナイトで攻撃を加える。


 しかし、スゥも一筋縄ではいかず、またその場から消える。だけど私には分かってしまう。次は右から私の足を狙ってくる。


 私は細剣をスゥに攻撃される直前にそこにいれば刺さる場所へと出しておく。


 スゥは咄嗟の事で避けることが出来ずにそのまま細剣によって貫かれる。


「うぐっ…!ど、どうしてここが……!」


「だからさっきから言ってるでしょ?遊んであげるって」


 私はスゥを煽る。煽りに煽って冷静でいさせないようにする。


「分かった。なら私も本気で遊んでもらうから」


 かかった!スゥは冷静さをかいて全力を出してくる!


 獣化を始めたスゥは全身を黒い毛で覆われた馬になって、頭には深い黒色に光る一本角を掲げていた。


 く、黒いユニコーン!?なにそれかっこいい!!乗ってみたいわ!


「私に本気出させたこと後悔しないでよ」


 心の内は私にコケにされ、自分が下だと思われていることに、激昴しているのが分かる。だから攻撃が単調になる。


 ほら、真正面から突っ込んできた。丁度私も支援魔法をかけ終わったところだし、少し本気でいきましょうか。


「奥義!黒閃!」


「そんな見え見えの攻撃当たらないわよ」


 私はスゥの攻撃を避け、背中に乗る。


 あぁ。ふわふわの毛並み。それにしなやかに付いた筋肉が美しい。


 だけど今はそれを堪能している暇はない。私は拳を振り上げる。


「お、降りて!そこから早く降りて!!」


「残念ね。これでお遊びはおしまい。じゃあ決着付けましょうか」


 私は支援魔法をこれでもかと付けた拳で、馬状態のスゥの背中を力一杯殴りつけた。


 支援魔法で敏感になっている私の感覚は、肺から空気が全て抜け、骨の軋む音を拾う。


 上から殴られたスゥは地面に伏せる。頭を強く打ち意識が朦朧としているみたい。


「どう?降参する?それとも今以上の苦痛を味わって死にたい?」


 私はスゥの耳元でそう囁いた。


 プルプルと震えだしたスゥは、獣化を解いて早々と降参をした。


「うん。偉い子ね」


「第八回戦は、ジュリエット選手の勝利です!!」


 私は勝利が確定したその瞬間に、スゥの頭を撫でてあげて、ついでに回復魔法をかけた。


 スゥは頭を撫でてあげようとしたらすこしビクッとしたが、回復魔法をかけてあげると柔らかな表情をしてくれた。


「ごめんなさいね。戦いだと私手加減できなくなるのよ」


「それはしょうがないと思う。私も本気だしたし……。それで負けたなら悔いはないよ」


 私とスゥは笑い合った。



◇◆◇◆◇



ーside:主人公ー


 ジュリが勝ったか。まぁ思考が読めるっていうチート技持ってるしな。負けることはないと思ってたよ。


 ただ試合が終わった後のあれ何?トミーさんはロニさんもやってたけど青春真っ只中なの?


 俺の青春はな……。うっ……思い出したくもないこと思い出してしまった。


 今は俺の青春なんてどうでもいいのだ。考えるべきは次の戦い。


 次俺が戦う相手はミルだ。正直に言うとあんまり戦いたくない。仲間を傷つけないな言って言うのが一つと、俺をロリコンとか思ってる観衆がブーイングを起こすのが怖いって言うのが一つ。


 だけどミルはそんなのお構い無しに全力出してくるんだろうなあ。


 まあその時はその時でいっか。どうにかなるだろ。


 こうしてジュリの戦いが終わり、今日の分の大会が終わる。

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