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異世界に転生したので楽しく過ごすようです  作者: 十六夜 九十九
第5章 武道会そして陰謀
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第78話 六種族同士の戦いとレンの死闘のようです

「第三回戦!紫熊族のグリーズと白兎族のラビの戦いだぁ!!」


 ミルとの戦いが終わり、観客が少しの余韻に浸った後、司会がそう告げる。


 リング上には既にグリーズとラビが待機している。


「まさか初戦で、六種族同士で戦うことになるなんて、引きが悪いなあ僕も」


 少し落胆しながら、いじけた様に言っているラビ。


「俺は簡単に勝てそうで嬉しいけどなぁ?」


 それに対してグリーズは戦う前から勝負は決まっているというかのようなニュアンスを含んだ挑発をする。


「ふん!そんな事言ってられるのも今のうちさ!」


「まあよろしく頼むぜ、おちびちゃん」


「う、うるさい!」


 聞いている限り、緊張感のない会話をしている。


 しかし、これでも六種族代表なのだ。馬鹿にできない。


「では、第三回戦!試合開始!!」


「最初から本気でいかせてもらうからね!どうせ出し惜しみしても意味無いでしよ!」


 ラビがそう言って獣化していく。


「話が分かるやつじゃねぇの」


 グリーズも獣化を開始した。


 六種族同士の戦いで獣化せずに戦うのは殆ど意味が無いのだろう。無駄に体力を使って獣化するよりも、最初から獣化して戦った方が理にかなっている。


 俺がリング上へ視線を戻すと、ラビとグリーズは既に獣化が終わっていた。


 小柄で、白い毛皮に包まれているラビ。半人半兎のような感じで、二本足で立ち、ステップを踏んでいる。


 対してグリーズは、腕と脚だけを獣化させて、攻撃に特化している。深い紫色の毛をしていて、鋭く尖った爪が見てとれた。


 変化が終わるとすぐに、二人がぶつかり合った。


 グリーズがラビを狙って右腕を振り下ろし、ラビが難なく躱していく。グリーズの爪は地面を紙を切るような鋭さで、食い込むことは無かった。


 ラビはがら空きになっているグリーズの顎を狙って膝蹴りを繰り出す。しかし、グリーズはそれを読んでいたのか、もう左腕でラビを弾いた。


 グリーズに飛ばされたラビは二転三転とし、リングの端で止まった。


 ラビの二の腕からは血液が溢れ出てとても痛々しかった。


「へっ!いきがってた割に呆気なかったな」


 グリーズは悪魔のような笑みで、倒れているラビに近づいていく。


「ふ、ふん!これくらいなんとも…っ!」


 ラビは腕の痛みに悶える。


「強がってんじゃねぇよ。まってな今楽にしてやるからよ」


 グリーズは一歩、また一歩とラビに近づいていく。


「僕がただ飛ばされただけだと思ったら大間違いだよ!」


 ラビは血が出てる腕を抑え、立ち上がった。


「あ?何言ってんだお前」


「設置式魔法!火炎!」


 ラビがそう唱えた。すると、グリーズの足元から火柱がたった。


 炎に包まれ、もがくグリーズ。


「どうだ!僕だってやる時はやるんだ!」


「ぐわぁぁ!」


 突如、雄叫びを上げながラビに突進を仕掛けるグリーズ。


「わ、わぁ!」


 ラビは持ち前の小回りを生かして焦りながも回避をする。


 炎で視界が悪いであろうグリーズは端手前でラビを見失い止まった。見失ったラビを探すためにその場できょろきょろしている。


 それを見たラビはグリーズの背後から全力で蹴りを加えた。その勢いそのままに、蹴られたグリーズは場外にでてしまった。


「僕勝ちだ!」


「第三回戦の勝者、白兎族のラビ!!」


 勝利宣言されたラビ。そして、負けたグリーズ。ラビは負けて悔しがってるグリーズの元へと歩みを進めた。


「くそっ。なんだよ、笑いに来たのか」


「ううん、戦ってくれてありがとうね!」


「うっ……。………な」


「え?」


「次は負けねぇからな!」


「うん!僕はいつでも待ってるよ!」


 ラビは満面の笑みでグリーズに答える。グリーズはどことなく顔が赤い。これは惚れたな。絶対そうだ、間違いない。


「次は私の番ですね。行って参ります」


 俺がグリーズとラビの今後を思っていると、隣にいたレンがリング上に向かった。


 レンの次の相手は確かレオンだったな。レオンは強いぞ。頑張ってくれ。


 俺は既にこの場にはいないレン向けて心の中で応援をした。



◇◆◇◆◇



ーside:レンー


 いよいよ私の番です。主様もミル様も二回戦に出場しました。私も二回戦に出場したいです。


 リングに上がる間、私はそんな事を思っていた。


 私がリングに上がった時には既にそこには金虎族のレオンが待ち構えていた。


「全くこんなチビが本戦に上がるなんて、あの男といい今年はマジでどうしたんだ」


「今なんて言いましたか?」


「なんだ?見たまんまチビっていっただけだぞ?なにか不満でもあるのか?」


「私はチビではありません。レンという名を持っています」


「あー、はいはい、レンね、わかったわかった」


 本当に分かったか怪しいレオンをそっちのけで司会が進行していく。


「続きまして第四回戦!今回は注目の金虎族、レオンの登場だぁ!」


 金虎族のレオン。予選でも圧倒的な力のぶつかり合いで本戦に残った六種族の一人。全力でかからなければ倒せないだろう。


「では、第四回戦、試合開始!!」


 私は真っ先に剣を取り、転移をしてレオンの背後から首を狙った。


「ふぅ……。いきなり背後に来るなよ。ビビるだろ」


 そんな声が横から聞こえてくる。


 私は背後から首を狙ったのに、なんでそんなとこに!


「んじゃまあお返し」


 レオンは私の腹を一発、アッパーで殴った。避けようと思ったが間に合わず、もろに食らってしまった。


 私は殴られた衝撃で空高く上がる。私は浮遊でその場に留まろうとした。


「まだまだいくぞ」


 しかし、打ち上がったところにレオンが飛んできて、私を殴って地面に叩きつけた。


 私の体は衝撃で外も中もボロボロになってしまった。


「ま、俺にかかればこんなもんでしょ」


 レオンはもう勝ったみたいなことを言っている。


 私はまだ負けてない。負けたくない!だって主様もミル様も勝っているのだから!


 私は気力で立ち上がった。


「マジかよ。あれ食らって動けるのかよ。へぇ、これは楽しみだ」


 ニヤリと笑みを浮かべるレオン。戦いに飢えた猛獣のような目をしている。


「まだまだ……やれる……!」


 ここで頑張らないでいつ頑張るというのか。


 さっきはレオンの能力を見誤った。そのせいで今は立っているのもやっとだ。


 私はこの状況である戦いを思い出した。それは初めて完全なる敗北を経験した勇者との戦いだ。


 あの時も私は勇者の能力を見誤ってしまった。そのせいでリン様に苦痛を味合わせ、気遣わせてしまった。


 その時に私は誓ったはず。誰かを見捨てないでいいくらいに強くなると。その誓いは必ず守ると!


 その為にはこんなところで挫けていいはずがありません!今より強くなって戦わなければ!


 すると、胸が締め付けられその奥から何かが溢れてくる感覚がした。


「私は勝つ!」


「なんだ?雰囲気がさっきまでとは比べ物にならない」


 私はレオンを剣で斬りつけようと、走り出す。そして、レオンはわたしの剣を受け止めるべく素手を構えた。


「その程度の速度なら、素手で十分だ」


 レオンが勝ち誇ったように私に告げる。腹が立った。だから私は斬りつけている時に素手で受け止められる寸前で転移をした。


 今回は既に切りのモーションに入っていて、転移先で真っ先に斬りつけるため、さっきみたいに躱される時間もほとんどない。


 今度は厄介な腕を切り落とそうとした。剣の切っ先は腕に触れるか触れないかぐらいのところまで来ていた。


「ぐらぁ!!」


 しかし、レオンが突然放った咆哮で、一瞬だけ動きが止まってしまった。


 レオンはそれを見逃すことなく、私の剣を奪い、逆に私に突きつけてきた。


 奪われた剣の剣先が私の鼻先に向けられる。


「なにか変わったと思ったが、なにも変わっていなかったな」


 まだです!ここで負けてられない!レオンの言う通り変わってないのなら、今変わる!


「本当にこれで終わりだ」


 レオンが私の剣で私の首を切り落とそうとする。しかし、それは叶わなかった。


 切ったところには私の首は既になく、空を切ったからだ。


 私は今物理的に変わった。魔物化をしてインテリジェンスウェポンへと。


 レオンが私を見失った隙に私自身でレオンの足にに斬りかかった。


「うがあぁぁ!!」


 足を斬られ絶叫するレオン。私は勝機とばかりに人に戻り攻撃を加えようとした。


 しかし、斬られたあとのレオンの雰囲気が先程までとは全く別物になっていた。


「まさか俺がお前みたいなチビに攻撃を食らうとは。これは御礼だ。受け取れ」


 忽然と姿を消したレオン。探そうとするのも束の間、背後から強い衝撃が襲い、前に飛ばされる。


 そして、前に飛ばされたかと思えば、突然上に飛ばされ、上空で何十発という衝撃を食らった。最後にはまた地面に叩きつけられる。


 私の内蔵は既にいくつががいってしまって、口の中は血の味で一杯になってしまう。


「レンと言ったな。お前には敬意を払おう。俺が油断していたとはいえ、傷を追わせたのだ。俺もお前のようにこの戦いに本気で向き合おう」


 レオンは倒れている私に近づいて、蹴り上げた。


 私は既に動けなくなっていた。動かそうとしても全身が痛み、どうすることも出来なかった。


 私は浮遊すらも使う事が出来なかった。宙に浮かんで、そのまま自由落下を始めると、レオンがなにかの構えに入った。


 そして、私が地面に激突する間際に、回し蹴りをしてきた。


 防ぐ事ができず、受け身も取れない私はリング上で一回跳ねたあとにそのまま場外へと出てしまった。


「勝者、金虎族のレオン!!」


 司会者が勝利者の名前を読み上げる。


 悔しかった。本気で戦ったのに何も出来ず負けたことが悔しかった。


 そして、勇者との戦いで決めた誓いは未だ遠い事が分かった。しかし、この戦いで得た新しい決意で一歩前進出来た。


 気絶する前に私はそう思った。



◇◆◇◆◇



ーside:主人公ー


 リンは負けてしまった。本気で戦っていたのは見ていれば分かった。だが、レオンが強すぎた。あいつはまだ全然本気で戦っていない。


 もし、このまま俺とレオンが勝ち続ければ準決勝で当たる。警戒しておかなければならないだろう。


 だが今はレンの所へ行こう。目覚めたら目一杯褒めてやらないとな。


 こうしてレンの戦いは終わった。

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