第7話 ギルドマスターのようです
翌日の朝。俺たちは冒険者ギルドでレンの従魔登録をしている。やることは変わらないただ。水晶に手をかざすだけ。するとギルドカードが更新されるのだ。
日本にいた時よりマジ便利。色々手順とか踏んでたけど、そんなのいらないし。魔法の力は偉大だな。
くだらないことを考えていたら、1人の冒険者がボロボロで帰ってきた。泣いたのだろう。目が真っ赤になっている。それに様子を見る限り怯えているようにもみえる。
周りの冒険者達もなにかを察したのだろう。事情を聞き出している。
「お、おい。なにがあったんだよ?」
「…俺のパーティが森でやられたんだ…」
「なんだって!?森でか!?」
「ああ、そうさ。みんなは俺を逃がしてくれたんだ…」
「お前達に一体何があったんだよ」
俺は察しがついてる。と言うより森ならそれしかないだろう。
「ドラゴンに…。ドラゴンに襲われたんだ!」
ですよねー。森に入ったらそうなりますよねー。
「「「ドラゴンだってー!!?」」」
うぉ!びっくりした。いきなり大声出すのやめて欲しいわ。
「そ、それは本当なのか?」
「…嘘を言ってるように見えるか?」
「…………」
まぁ俺たちも知ってるし、ほんとのことだろ。それで、どうするつもりなのだろうか?
するとひとりの冒険者が受付嬢の人に話しかけた。
「今の聞いてたよな!?」
「ええ、聞いてました!至急ギルドマスターにお伝えいたします!」
そう言って受付嬢の人は奥に消えてった。
それから数分して、奥からさっきの受付嬢と30歳くらいの女性が出てきた。話しからするとこの人がギルマスなのだろう。
ギルマスと思われる女性は冒険者たちの前に立った。
「諸君!私はここのギルドマスターをしているエルシャだ!」
「「「「おぉぉぉ!」」」」
なにが、おぉぉぉ!、なのだろうか?
「これより非常事態宣言を発令する!今から言うことをよく聞いておけ!」
「「「「うっす!!」」」」
なんだこの無駄な連帯感は?
「まずドラゴンが出たのはもう周知の事実であろう。もし、このドラゴンがこの街に来てしまったらこの街は壊滅してしまうだろう……。だがしかし!お前らはそれを黙って見ているような奴ではあるまい!よって、このドラゴンを討伐することに決定した!」
「「「「わぁぁぁぁ!!!」」」」
おお、ドラゴンを討伐するとかすごいな。
「お前達にはドラゴンを討伐するための準備をしてもらう!ドラゴンの討伐をするのは私を含め、Bランク以上のものだ!それ以下はただの足手纏いにしかならないため連れて行くことはできない。しかし!Cランク以下のものにはこの街の住民の安全を護ってもらう!いいな!」
「「「「うっす!!」」」」
俺は住民の安全を護る方に着くのか。まぁ当然だよな。俺レベル5だし。たしかに足でまといだろ。
「よし!ではお前達!準備にかかれ!」
ダダダダダッ!!
おお、みんな出ていった。連帯感すごかったな。ギルマスのカリスマあってのものだろうな。
ちなみに俺はというと、ギルドの中でゼロとレンと遊んでいる。住民の避難はゼロが時空魔法を使って転移してくれるって言うからいつでもいいし。
ギルマスはそんな俺を見て怒ったようでこちらに向かってきた。
「貴様!そこでなにをしている!!お前も早く行け!」
「え、嫌ですよ。やらなくていいことは別にしなくていいでしょ?ただ住民は1箇所にまとめててください。」
「ふざけているのか!!ランクを言ってみろ!」
「Dですけど」
「なら住民の安全を護れと言っただろ!!なぜお前は行動しない!!」
「だから言ったじゃないですか。やらなくていいことはやらなくてもいいでしょ?って」
「やらなくていいとはどういうことだ!住民を見殺しにでもするつもりか!!」
「いや住民は護りますよ?主にこのスライムが」
そう言って俺はゼロを指さす。するとギルマスは顔を真っ赤にして、俺に罵声を浴びせた。と言うよりゼロに。
「スライムだと…!!お前私をおちょくっているのか!?スライムがこの世界で1番弱い魔物だということは子供でも知っているのだぞ!!なのにそのスライムが住民を護るだと?笑わせるな!!」
『ねぇマスター。この人に雷魔法ぶっぱなしてもいいー?』
『主様。私もこの方に痛い目を見て貰いたいです』
『あのねぇ、なんでお前達はそんなに気が早いんだ。ばかにされたらそれ以上の力をみせて黙らせればいいじゃないか』
『『たしかに…』』
『でもどうするのー?』
『俺に考えがある』
俺はゼロに使う魔法とタイミングを教えた。あとは俺が合図を出すだけだ。
「ギルドマスターさん?もしあなた達が間違っているとしたらどうです?」
「…何がだ」
「スライムが1番弱いってことですよ」
「そんなことあるはずないだろう。現に私が見てきた魔物の中でもスライムが1番弱い」
「ならみせてあげましょう。さあゼロやれ」
『うん!』
「は?お前はなっ!」
ギルドマスターは俺の足元で寝転がっている。ゼロが時空魔法の転移を応用したのだ。いいざまだ。
「貴様!今私に何をした!」
「私は何もしてませんよ。やったのはこのスライムです」
「そんなはずはない!」
「いいえ。本当です。まぁ否定したくなるのもわかりますよ。最弱だと思ってたスライムにこけにされたんですからね」
「くっ!貴様ぁ!」
ギルマスが我を忘れて剣を抜いた時、ゼロが微弱の雷魔法を放った。
雷魔法が当たったギルマスは痺れて剣を落とし、驚愕に満ちた顔をしている。
「雷魔法だと…?このスライムが…?あ、ありえん!!」
「あ、言うの忘れてました。このスライム、レジェンドスライムって言って強さ的に言えばスライムの種族の中で2番目に強いそうですよ?」
「なん…だと…!?」
「でもこのことは秘密でお願いしますね?もし喋ったらあなたを殺しますんで」
《威圧を獲得しました》
「っ!」
わぁお。俺の威圧とかなんの得もねぇだろ。だって俺レベル5だぜ?
『マ、マスター。息苦しい…』
『わ、私もです主様。お、おさめてください』
『ん?おぉ、そうか、すまない。後でお詫びになにか買ってあげるよ』
さて、眼の前のギルマスは……。あーあ、失禁しちゃってるよ…。ゼロとレンですら息苦しくなる程の威圧だったらそうなっちゃいますよね。
「あの、エルシャさん?大丈夫…なわけないですよね。すいません」
睨まれました。エルシャさん威圧使ってないのに俺にちびらせるとはやるな。
冗談はさておき、これで分かってくれただろう。まぁわからないって言うならまたやるだけだけど。
「とりあえず分かってくれました?分かってくれないようならまだやりますけど?」
「わ、分かったからもうやめてぇ……ぐすっ」
あら、泣き出しちゃった。女性を泣かせるとは俺も罪な男。
「それでエルシャさん?」
「ひゃい!」
「…普通にしてくれていいので、さっきまでのはただの脅しです」
「で、ですよね。殺すとかそういうのは脅し文句ですもんね」
「いや、殺すのは本当ですよ?喋ったらですけど」
「ひぃぃ!」
それにしてもずいぶん下手に出るな。さっきまでの高貴な感じはどこへやら。
「そんなことより、住民を1箇所にまとめとくことできますよね?」
「そんなことって……。まぁできますけどちゃんと全員集まってくれるかどうか…」
「そこへんはエルシャさんのカリスマでどうにかなるでしょ」
「そうだといいんですけど……。あの私もう行っていいですか?」
「あ、はい。引き止めてしまったようですみません。風邪ひかないうちに着替えてくださいね?」
エルシャさんは顔を真っ赤にして俯き、そそくさと戻っていった。
ちょっと虐めてみたくなったのでついそんなことをいってしまった。悪いと思っているが、後悔はしていない。
ちなみに俺の威圧はギルド内全てに影響があったらようで、ドラゴンの事で忙しく働いていたギルド職員の人たちも失禁や気絶をしていた。本当に悪かったと思ってます。
そして俺はギルド職員の人達に心の中で謝罪しながらギルドの外に出た