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第60話 特訓するようです

 女神による、授業が終わった。時間的には短かったが色々知ることが出来た。結構有意義な時間だったと思う。


 さて、することがなくなったな……。もう少しなんか聞いとけば良かったかもな。だが、あんまり聞いてもすぐには覚えれないし。難しいところだ。


 そういえばこのあと皆はなにするんだ?聞いてみるか。


「皆はこのあと何かする予定あるのか?」


「私達は特訓するわ」


「特訓?なんの?」


「もちろん戦闘のよ」


「はぁ?」


 俺が何を言っているのか分からないという顔をしていると、レンが補足してくれた。


「私達は勇者様との戦いで全力を出しましたが、酷くやられました。その為、もっと強くなろうと思い特訓をすることにしたのです」


「皆が負けたのはあの勇者達が相手だったからだと思うんだが……」


「それでもです。またいつあの様な戦いになるか分かりません。その為の特訓です」


「そういうことならなにも言わんが……。あんまり無茶するなよ?」


「はい。分かっています」


「ならいいんだ。皆頑張れよ」


「マスターはなにするの?」


「俺か?どうするかなぁ……」


 皆が何するか聞いてから決めようと思ったけど、なかなか決まらんな。皆真面目に特訓するみたいだし。俺も特訓した方がいいのか?


 ただ、特訓って言っても何すればいいのか分からん。ほんとどうしよ。


「……特訓って何してるんだ?」


「魔王に言われてとりあえず精神統一してるわ」


「精神統一?なんでそんなことを?」


「それをして自分の中にある何かに触れることが大切だって言ってたわ。私とレンとミルは勇者との戦いでそれに触れてたらしくて、もう一回触れろって言われたわ」


「ちょっと待て。何かってなんだ?」


「私にも分からないわ。でも魔王はそこにある確かなものって言ってたわ」


 そこにある確かなものか。それは一体何なのだろうか。皆同じものを持っているのか。それとも1人1人違うのか。それすらも分からん。


「とりあえず私達はそれを見つける為に毎日精神統一をしてるわ。これ結構疲れるのよ?」


「精神統一か……。俺もやってみるか」


 俺も皆に混じって精神統一をすることにした。


 精神統一は辛くない体制を取ることが重要らしい。要はリラックスした状態にしろってことだ。


 俺は横になり、体ごと右を向いた。そして、両足を曲げ、太ももの間に両手を突っ込む。これで一応リラックス出来る。もしかしたらリラックスと言うより安心という感じかもしれない。


 皆もそれぞれ辛くない体制を取る。ゼロは俺と同じで横になった。レンとリンは壁に寄りかかってる。この3人は従魔の頃の名残が残っているんじゃないだろうか……。


 そして、ジュリは椅子に深く腰をかけ、ミルはどこから持ってきたのか分からないが枕を抱いて、床に座っている。


 ……ミル?睡眠と精神統一は違うからな?絶対寝るなよ?


 そんな心配をしながら俺達は目を瞑り、精神統一を始めた。



◇◆◇◆◇



 そこにあるのは真っ暗で、冷たく、全てを飲み込んでしまいそうな深い闇。


 俺は闇が嫌いだ。闇を見ると苦しみだとか悲しみだとかそういうものが頭を過ぎってしまう。


 辛かった過去や、思い出したくない過去などをつい思い出してしまう。


 俺はその度に自分の弱さや不甲斐なさを突き付けられ、自分自身が嫌いになる。


 だが、俺の過去は決して悪い事ばかりではない。親しい者と共に笑い、共に怒り、共に泣き、そして共に楽しむ。そんな日常があった。


 それは人生の中で一番輝いていて、そして幸せな時だった。


 しかし、そんな時間があっても尚、それ以上の闇というものが俺の中には巣食っていて、それが強大な為に、眩しい思い出が霞んで見えてしまうのだ。


 俺は俺の中にある強大な闇をいつになったら払う事が出来るのか。


 それは俺自身も分からない。


 もしかしたら闇を払う事なんて叶わないかもしれない。


 でも……。それでもいつか払う事が出来ると信じたい。


 だからその為に必要なものを探そう。それはきっとすぐ近くにあると思うから……。



◇◆◇◆◇



「マスター!起きてマスター!」


「…………」


「マスターってば!」


「…………」


「おーきーてー!」


「…………」


「むぅ……。マスターが起きない」


「ゼロ。私に任せなさい」


「うん。分かった」


「いくわよ!秘技!めざましビンタ!」


 そのビンタは勢いよく当たり大きな音をたて、しっかりとその目的を果たした。


 ビンタされた男は目を覚まし飛び上がった。


 まぁ、俺なんだが。


「なんだなんだ!敵襲か!」


「敵襲か!じゃないわよ全く」


「……ん?敵襲じゃないのか?」


「特訓途中で寝てたから起こしただけ」


「特訓……?はっ!忘れてた!特訓の途中だった!俺は寝てしまったのか……」


「あるじさま、さっきとても気持ち良さそうに寝てた」


 特訓する前に、ミルが寝ないか心配してたのにまさか自分が寝てしまうとは……。これぞフラグ回収といったところだな。


「俺は寝てたが皆は特訓終わったのか?」


「あんまり成果はあげれなかったけどね」


「後もう少しの様な気がするんですけど、まだまだみたいです」


 皆はしっかりと精神統一してたんだな。さすがだ。


「それでだな。お前らに聞きたいことがあるんだがいいか?」


「はいなんでしょうか?」


「どうして俺の足に女神が引っ付いて寝てるんだ?精神統一する時は隣にいなかったはずなんだが」


「女神様ならいつの間にかそこで寝てたよー!」


「引きはざそうとしてもがっしり掴んでしまって離れなかったです」


「ふむ。そうか。ならすることは1つだな」


 俺は拳を作って、はぁーと息をかけ、その拳を振りかざす。


「必殺!インパクト!」


 まぁ必殺とは言ったが要はただのゲンコツ。ただし、本気の。


 女神は俺のゲンコツを食らって飛び起きた。


「いったーい!なになに!敵襲!?きっとこの麗しい女神を襲いにきたのね!」


「はいはい。もうそれ俺がやったから。それとお前は全然麗しくない。自分で言ってて恥ずかしくないのかよ」


「もぉー!ノリが悪いんだから!」


「よし、女神も起きて特訓も終わったな。……今何時だ?」


 無視された!とか言ってる女神はほっとくのが正解だ。話が進まなくなるからな!


「今は午後6時くらいですね」


「え?俺何時間寝てたんだ?」


「大体4時間ほどかと」


「マジか。昼寝のレベル超えてた……」


「まぁ、今日起きたばっかりだし仕方ないわよ。まだ疲れが残っているんだと思うわ」


「そうかもな。じゃあ俺はもう部屋に戻って体を休めとくわ。晩ご飯は要らないって言っといてくれ」


「分かった。あたしが食べておく」


「うん。それは分かってるとは言わないな」


「冗談」


「お前の冗談は冗談に聞こえねぇよ!」


 全く……。いつでも全開でボケをかましてくるなよ。ツッコミするの疲れるんだから……。


「はぁ。それじゃ俺は部屋に戻るよ。もし魔王様が何か言ってたら部屋で休んでますって言っといてくれ」


 そうして俺は部屋に戻って休むことにした。

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