第59話 勉強をするようです
とりあえず俺は食事を楽しむ事にした。
俺が目覚めたの2日ぶりだ。腹が減っているのは当然だ。しかし、机の上にはもう半分近くの料理が無くなっている。
これ、俺の食える量少なくね?ていうか、ミルとゼロが食いすぎなんだよ!俺とタクマが話してた時間短かったろ!なんでこんなに無くなるんだよ……。
俺は急いで料理を自分の皿に取り分ける。
多分これで食べられる心配はないだろう。
「あれ?料理食べないの?食べないなら私がもーらお」
「おいこら女神。俺はそんな事一言も言ってない」
「ほぇ?もふたへたった」
「口に物を入れたまま喋るな!」
折角取り分けた料理を食べられてしまった……。俺が油断したばっかりに……!
そうこうしているうちに、料理はどんどん減っていく。
俺は慌てて女神に食べられた分の料理を取り分けた。
今回の料理はこの前食べたプレミアムボアではなく、俺達がよく食べているドラゴン肉だった。
料理をされたドラゴン肉はステーキにされており、溢れ出るような肉汁とドラゴン肉によく合いそうなスパイシーな香りを漂わせるソースが互いに絡み合って、光り輝いていた。
普段俺達が作ってるのって丸焼きだもんな……。これぞ宝の持ち腐れってやつだ。今度俺の持ってるドラゴン肉、魔王様に渡しとこ。
俺はそう決意してドラゴン肉を一口頬張った。
柔らかく、それでいてしっかりと肉の食感を残し、スパイシーなソースがいいアクセントとしてなっていて、調和のとれた料理だと確信した。
というかマジで美味い。お店で出てくるレベル。もしかしたらそれ以上。空きっ腹にも丁度いい感じ。
「どうだい?うちのドラゴン肉は?」
「とても美味しいです!」
「それは良かった。このかかっているソースが私のお気に入りでね。ドラゴン肉を食べる時はいつもかけているんだ。それから・・・」
それからは魔王様の料理の解説を受けながら、食事を取った。
魔王様に言われた事を意識して食べると、より一層美味しく感じて、満足いく食事が取れた。
「ごちそうさまでした。とても美味しい料理でした」
「美味しく食べてもらえて嬉しいよ。それと、女神様の方も口にあったみたいでよかった」
その女神だが、食べ過ぎで横になっている。俺的には横になったら更にやばい気がするんだが、まぁ女神だしいいだろ。
「それで君はこれからどうするんだい?」
「これからですか?」
「勇者達は僕が勉強を教えているし、他にも自分達でなにかやりたいことがあるみたいだけど、君の事は何も知らないからね」
「んー。俺も勉強してみます。でもタクマ達がやっている様な魔方陣についてではなく、この世界についてを学ぼうと思います。あの女神に聞けば大体分かると思うので」
「それはいいことだね。君も頑張ってね」
「はい。それじゃ俺はここで」
俺は魔王様に頭を下げ、女神のいる所へ向かった。もちろんこの世界について教えてもらうためだ。
「おい女神。俺にこの世界について色々教えてくれないか?」
「この世界について?別にいいよー」
「面白そうな話をしてるわね。私も入れてもらっていいかしら」
「全然オッケー!教えるなら人が多い方が良いしね!」
「でしたら私も聞きにいきたいです」
「あたしも聞いてみる」
「なんかおもしろそーだからわたしもいくー!」
「わ、わたしも……」
「うんうん!全員で受けよー!」
結局全員で受けることになった。
別に問題はない。大勢で受けた方がいろんな視点から見れていい事もあるし。
そして、俺達は椅子を6個、横一列に並べて座った。目の前にはどこから出したのか黒板の様なものが出てきていて、女神は眼鏡をかけていた。
どこの教師になろうと言うのだろうか……。先が思いやられる……。
「はい。ではこの世界についての授業を始めます」
ん?口調が変わった?これは俺が初めて女神と出会った時の口調と一緒か……?ということは女神モード発動ということになるな。
「じゃ俺から。さらっと流してたんだが、人間になったゼロ達のレベルが下がっていたのはなぜだ?」
「それは種族が変わったからです。ゼロさん達は元々魔物としての経験値を得ています。ですが、人間になったことで魔物の時に得た経験地が不要になります。その為、本来は経験地が破棄されレベルが0に戻ります。しかし、ゼロさん達は人化していたのでその間で得た経験値はそのままになり、レベルが下がったようになっているのです」
「ということは、人化っていうスキルを獲得するのは人間になるための準備みたいなものだったってことでいいのか?」
「はい、そうです」
なるほどな。人化のスキルを獲得していた時点で、既に人間になる準備は始まってたわけだ。俺、全然気にも留めてなかったわ……。
「はい!女神様!」
「ゼロさん。なんですか?」
「私達が人間になったのは分かったけど、ミルとか魔王様みたいに角がある人がよく分からない!」
「そうですね。確かに人間にも色々な種がいますね。例えばジュリさんの様な人族であったり、ミルさんのような魔人族であったりです」
「魔人族って何だ?ミクトリアさんが魔王と呼ばれるのもそこからきているのか?」
「はいそうです。元々魔人族は人族でした。しかし、人族の中で一際魔法の使える者が現れ、その者達には共通して額に角の様なものが出てきました。ミルさんにも角があるんじゃないですか?」
「ん。ある」
「その角には体内の魔力を増幅したり、魔法の威力を上げたりと、様々な利点があります。しかし、その角にはそれだけのことを使用とする神経のようなものが多くあるので弱点になりやすいです」
いつだったかミルにふにふにをした時、角が性感帯である事が分かったからな。多分神経が沢山通っていたからだな。
「魔王はその角を持っていて、特に魔法の使い方に長けているものがなります。今だとミクトリアさんですね」
「なるほどな。一応納得した」
「わたしもー!」
「余談ですが、人の種というものは他にも獣人族や亜人族がいます。今後旅をする中で出会うでしょう」
へぇ…そうなのか!楽しみだな!
「ちょっといいかしら?」
「何でしょうか?」
「魔法って結局なんなの?魔人族の話でも出てきたけど魔法ってこの世界では大事なものなの?」
魔法か……。何気なく使っているが、確かに何なのか分からんな。
「魔法について知るには初めに魔力について知っておいた方がいいでしょう。初めにそっちから話してもいいでしょうか?」
「分かったわ。お願い」
「この世界における魔力というのは、大気中の魔素が集合したものになります」
「あ、あの魔素って何でしょうか……?」
「魔素というものは、植物が発生させます。この魔素は簡単に言えば植物の廃棄物になります」
廃棄物ってマジか……。それ大丈夫なのかよ。
「魔素には危険な事が1つあります。それは体内に含みすぎると暴走し爆発を起こすことです」
「ばくはつー?」
「わかりやすく言えば、体が破裂します」
「マジか……。そんなに危ないものだったのかよ……」
「ですからここで魔力が出てくるわけです。さっきも言ったように魔力とは魔素の集合体です。体内に取り込まれた魔素は体内で集められ、魔力となります。この魔力は生活していく上でエネルギーとして使われたり、体外に少しずつ漏れたりします。ですから魔素を体内に大量に含んだ状態にはならず、暴走することもありません」
すげーな。魔力ってこんなことになってんのか。でも魔法となんの関係があるのかさっぱり分からん。
ちなみに俺が考えたんだが、魔力がなくなってだるく感じるのは、魔力からのエネルギー供給が無くなるからじゃないだろうか。
まぁこれも推理のスキルのおかげなんだけどね。
「魔力については分かったわ。でもそれと魔法はなんの関係があるのかしら?」
「では、魔法とはなにか、から離しましょう。皆さんが魔法を使う際には、普通は魔力を使いますよね?この魔力を使うということは、魔素を使うということになります。そして、この魔素を呪文によって操作し、ある一定の動作をさせることにより、火が出たり、水が出たりという事象が起きる、これが魔法ということになります」
「じゃあ魔法が必要なのはどうして?」
「魔法がない時代は体内に魔素を含み過ぎる事が多々あり、わかくして亡くなる方が多かったようです。その解決策として出てきたものが魔力を強制的に放出するというものです。初めは魔力だけを放出する方法を探っていたようですが、魔力だけを放出することは出来ませんでした。そこで、魔力を何かに変換し、それを体外に放出するという形を取りました」
魔法にそんなの秘密があったのか。
「なるほど。それが魔法というわけね」
「はい。その通りです。しかし今はその事実が語られることはなく、魔法は戦いの道具として開発されていきました。悲しいことです……」
まぁそうだな。人の命を救うために作った魔法が今や人を傷つける道具になってるんだもんな。
「少ししんみりしてしまいましたね。気を取り直して次に行きましょう!なにか聞きたいことないですか?」
「私も聞きたいことがあります。魔物とは一体何なのですか?」
あ、それ魔王様が後で話してくれるって言ってたやつだ。俺も気になってたから聞いておこう。
「そうですね…。魔物というのは動物の進化であると考えると早いです。動物が魔素を吸い続け、魔素に対応できるように進化したものが魔物です。その為、動物より強く、魔法が使える魔物がいます。突然変異として、偶に強い個体が現れる事がありますが、それは魔力溜りと言われる、魔素が集まりやすい所にずっといたからですね」
「なるほど。ありがとごさいます」
「ミルさんは質問されてませんよね?何かありますか?」
「あたしは特にない。聞きたくなったらその時にきく」
「分かりました。他に何か質問などあれば言ってください。それでは授業を終わります」
「「「「「「ありがとうございました」」」」」」
こうして授業が終わった。