第52話 勇者と対面するようです
魔王様は完璧な場所に転送させてくれた。遠目に見るといかにも勇者が着てそうな鎧を着ている一行が見えたからな。あれが勇者達で間違いないだろう。
その勇者達はもうすぐそこに来ている。どうやら走っているみたいだ。
って言うか走ってるだけなのにめっちゃ速くね!?地球にいた時の車より早いんじゃね!?どんな事したらあんなに速くなるんだよ!?
そんな事を考えている内に勇者達は俺たちの前にきて止まった。
その止まり方と言ったらもうありえない。
普通だったら少しずつ減速したり、地面を滑る感じで止まったりするよな?
だが勇者達は違った。
あいつら地面に足と手をめり込ませたんだぜ。それからは地面を裂きながら徐々に停止。
俺、あいつらの腕が折れてないか心配だわ…。だけどそうしないと急停止出来ないんだもんな。どんな身体してるんだよ…。
「君達はこんなところで一体何をしてるんだ?」
「……はっ!余りにも非現実的な光景を見て意識が飛んでた!」
俺、やっと皆の気持ちが分かった気がするわ。確かにこんなの見てたら引く。
っとそんな事は今はどうでもいい。今は勇者に集中だ。
「俺達はある人に頼まれ事をしていてな。この先に勇者を通す訳には行かないんだよ」
「……お前。何故俺達が勇者だと知っている?」
「いや、まぁそんな装備をしてたら誰でも分かると思うけど…。なぁ皆?」
「「「「「うんうん」」」」」
「ほらな?」
勇者達は自分達の姿を見て、納得したようだった。
なんで先にそういう事に気付かないんだよ…。装備する前からそういう事分かるだろ…。
「……確かにお前の言う通りかもしれない。だが、お前はある人に頼まれたと言っていたな?それは誰だ」
まぁそう来るよなぁ。
「お前達がここに来た目的、その人だと言ったらどうするつもりだ?」
「……ッ!貴様等魔王の手先か…!」
勇者はそう言うと武器を構えた。今にも飛びかかって来そうな雰囲気だ。
「おい、話を聞け。どうするつもりだと聞いている」
「どうしたもこうしたもない。貴様らを殺し、魔王も殺すだけだ」
その目は本気だった。本気で俺達を殺そうとしている。
俺はそこで初めて勇者達の様子をしっかりと見た。
勇者達の防具には一切の傷らしきものはない。新品同様だ。しかし、武器の構えや一つ一つの所作が洗練されていた。
そして極めつけは勇者4人の目に宿っていたものだ。その目には深い悲しみや憎しみ、決意と覚悟、そして狂気……。そんなものだった。
確かこいつらは俺と同じ時期にこの世界に転移してきたはずだ。
なのにこいつらはこの世界に来て楽しんでいた俺とは全然違っていた。
一体こいつらに何があったというのか。
だがそんな事は俺達に知る理由も知る術もない。
「はっきりと聞かせてもらう。貴様等は魔王の手先なのか?」
「……俺達は魔王様に仕える幹部だ。ここでお前達にはお引き取り願いたいものなのだがな……」
「それは出来ない。俺達には成し遂げるべき目標がある」
「私達はその目標を成す為なら何でもすると誓ったのよ」
「たとえそれが相手の命を取ることだったとしても」
「そうやってここまで来たんです」
もう戦闘は免れないだろう。ここで意地でも勇者を止めるしかない。
俺は戦うための準備として勇者4人のステータスを確認した。
そして、そのステータスを見た俺は驚きを隠せなかった。
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ヒイラギ タクマ
Lv.223
HP:124500
MP:36000
【魔法】
聖光魔法・雷魔法・時空魔法・回復魔法
【スキル】
宝具召喚・鑑定・言語理解・念話・感知・魔力転化・獲得経験値増加・獲得経験値増加大・獲得経験値増加極・剣王・剣聖・筋力強化・筋力強化大・筋力強化極・俊敏強化・体力強化・物理威力増加・物理威力増加大・物理威力増加極・魔法耐性・物理耐性・無詠唱
【ユニークスキル】
信念を貫く為に
【称号】
勇者
超越者
無慈悲なる者
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シノノメ アイカ
Lv.219
HP:119000
MP:26500
【魔法】
炎魔法・火炎魔法・風魔法・暴風魔法
【スキル】
宝具召喚・鑑定・言語理解・念話・感知・魔力転化・獲得経験値増加・獲得経験値増加大・獲得経験値増加極・槍王・槍聖・筋力増加・俊敏強化・俊敏強化大・俊敏強化極・体力強化・物理威力増加・物理威力増加大・物理威力増加極・飛行・投擲・無詠唱
【ユニークスキル】
日常を取り戻す為に
【称号】
勇者
超越者
無慈悲なる者
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タカナシ ナユタ
Lv.208
HP:105500
MP:98500
【魔法】
炎魔法・水魔法・土魔法・風魔法・闇魔法・光魔法・支援魔法・結界魔法・守護魔法・封印魔法・浄化魔法・生活魔法・回復魔法・蘇生魔法・復活魔法
【スキル】
宝具召喚・鑑定・言語理解・念話・マジックボックス・マップ・魔力転化・獲得経験値増加・獲得経験値増加大・獲得経験値増加極・杖王・杖聖・祝福・体力強化・魔力増加・魔力増加大・魔力増加極・無詠唱
【ユニークスキル】
親友と共にいる為に
【称号】
勇者
超越者
無慈悲なる者
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キサラギ ミユキ
Lv.214
HP:112000
MP:87000
【魔法】
炎魔法・火炎魔法・水魔法・氷魔法・土魔法・樹木魔法・風魔法・暴風魔法・闇魔法・深淵魔法・光魔法・聖光魔法
【スキル】
宝具召喚・鑑定・言語理解・念話・魔力転化・獲得経験値増加・獲得経験値増加大・獲得経験値増加極・杖王・杖聖・体力強化・魔力増加・魔力増加大・魔力増加極・魔法威力増加・魔法威力増加大・魔法威力増加極・無詠唱
【ユニークスキル】
秘密を守る為に
【称号】
勇者
超越者
無慈悲なる者
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俺は勇者達のこの1ヶ月を垣間見た気がした。
勇者達の目に宿っていた数多くの感情の答えはこのステータスがもの語っている。
獲得経験値増加があるとはいえ、レベルを200まで上げることは容易では無かったはずだ。それに、称号には無慈悲なる者というものまである。
そして、ユニークスキルと超越者。俺は1度も聞いたことがない。
こいつらは何を目標にする事で、この領域まで達する事が出来たのだろうか。
俺は気になった。
しかし、今はそんな事を問うことができる状況ではない。問うためにはここで勇者を止めなければ。
『皆聞いてくれ。始める前に俺が鑑定した勇者4人のステータスを以心伝心と共有で送る。……どうだ?見れたか?』
『うん。みれたよー』
『こちらも大丈夫です』
『ん。見れた』
『私も見たわ』
『わ、わたしも!』
『よし。見たってことはこいつら4人がどれだけやばいか分かったはず。だが、俺はタクマって奴と1対1でやる。皆は協力して残り3人を無効化してくれ』
『あなた一人で大丈夫なの?流石にこれはあなたでもきついと思うのだけど……』
『だろうな…。だが、こいつは俺がやる。聞きたいこともあるしな』
『そう…。なら何も言わないわ。でも、やられるのはなしよ』
『分かってる。皆もそれで大丈夫か?』
『『『『うん』』』』
『よし。いいか、絶対に死ぬな。こいつらは俺達を殺しに来てる。手を抜くな。手を抜いたら死ぬと思え。……それが理解できたら戦闘開始だ…!』
そして俺達と勇者達の激しい戦いが始まる。