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第33話 夢をみるようです

「いやーすまなかったね!つい気持ちが先にでてしまったよ!」


 グレプルさんが帰ってきたのは俺達が店番を始めてから1時間くらい経った時だった。


 1時間の間で何人かの人が買い物に来てくれた。


 来たお客の全員がグレプルさんはどうしたのかと聞いてくるので毎回同じ返しをするのはめんどくさかった。


 そして、何故いないのか聞いたお客さんは、皆に教えてあげないと!、とか言ってグレプルさんと同じようにどこかにいってしまう事が多々あった。


 でも、皆に教えてあげるのは、買い物の後でも良くないですかね?買い物に来たのに買わずにどっか行くなんて何しに来たんだよ。


「あんたたちには迷惑をかけちまったからね。これはお詫びだよ!」


 グレプルさんが持ってきたのは追加の果物。タダでくれるらしい。


 いやーありがたい!うちには食べることが好きな奴が約2名程いるからな!多いに越したことはない!


 俺は果物を全部マジックボックスにしまう。


「ありがとうございます」


「お礼なんていいんだよ!」


 そう言って、俺の背中を叩いて声を出して笑うグレプルさん。


 グレプルさんって以外と力強いんですね…。背中がヒリヒリする…。


「それじゃ俺達は他のところにも行ってみることにします」


「そうかい!あんたたちには世話になりっぱなしだったね!」


「いえいえ。こちらもいい気分転換になりましたよ。ありがとうございました」


「また、うちに果物買いに来なよ!」


 俺達はグレプルさんの店から出る。


 いい人だったな。豪快というかなんというか。


 でもまさかこの街に来てすぐあんなことがあるとかとかちょっと巻き込まれ体質は仕事しすぎじゃないですかね…?


 そんな悪態を心の中で吐き、ため息がひとつ。


 それじゃ次はどうするかなー?と考えながら、街を歩いていく。


「マスター!果物ちょうだい!」


「ほれ。今はひとつだけだぞ。皆も食べるか?」


 全員頷いたので皆に果物を配る。


「主様。これからどうするんですか?」


「そうだなぁ。今日の宿がほしいから宿を探すかなぁ」


「そこ宿あるよ…?」


「えっ?どこに?目の前にはないけど?」


「ほらあそこよ。目の前の建物から2つくらい隣のところ」


「…わーほんとだー」


 今回は探しに行けると思ったのに…!


 創造さんが便利すぎて一周まわって不便に感じてきたよ…。


「それじゃもうあそこの宿でいいか?」


「主様におまかせします」


「オ、オレもレンちゃ…じゃなくて、レンとおなじ」


「マスターと一緒ならどこでもいいよー!」


「あそこでいい」


「わたしもあそこでいいわ」


「そんじゃあそこに決定」


 俺達はそこの宿を一部屋取って休むことにした。


「明日また出発するから今日はゆっくり休めよー」


「はーい」「はい」「ん」「分かったわ」「おぅ」


 部屋の中でそれぞれ思い思いに休憩している。


 ゼロはスライムに戻って、色んな所をぺたぺたしてたり。


 レンとリンは二人仲良く並んで勉強してたり。


 ミルは俺の出した果物を食べながら日向ぼっこしてたり。


 ジュリは時々レンとリンに勉強を教えながら、戦いのシュミレーションしてたり。


 こんなほのぼのした感じっていいよな。なんか異世界だっていう感じがあんまりしない。


 あんまりっていうのはジュリが戦いのシュミレーションをしてるからなんだけどね?


 それはともあれ、ほのぼのするのは俺的にも嬉しいことである。


 そして俺は今ベッドの上に寝転がっている。


 ふあ~ぁ。なんか眠くなってきたな…。ちょっと…だけ…ね…る………か………。


 心地よい空間の中で俺は微睡みに吸い込まれていく…。



◇◆◇◆



 …………………?


 ここはどこだ?


 気付くと開けた広場みたいな所にいた。


 状況確認からしようと思ったがよく思い出せない。


 俺は何をしていたんだっけ?


 俺が思い出せずにいると複数の足音が聞こえてくる。


「----!」


 誰かが何かをいった。


 そして、大人達が呆然と立ち竦んでいる俺の横を走り抜けていく。


 そこにふとした既視感を覚えた。俺はその既視感に思い当たる節がひとつあった。


 俺にはわかる。実際に体験したことだから。


 だからこれは夢なんだということがわかる。


 だが、この夢は決して幸せに満ちている夢だとか、希望を見れる夢だとかそんないい夢ではない。


 一言で言うなら悪夢だ。俺の過去を見せる最も最悪な夢だ。


 思い出したくない過去。消したい過去。


 そんな過去が俺を嘲笑うかの如く襲いかかってくる。


 忘れることなど許さないと俺に向かって囁いてくる。


 苦しみ。悲しみ。恐怖。絶望。・・・


 色々な感情が俺の中で渦巻いていく。耳を塞ぎ、顔を俯け、すべてのものから目をそらす。


 その方が楽だから。その方が俺の為だから。


 自分の殻に閉じこもっていた方がマシだから。


 そんな言い訳をして、その過去から逃げ続ける。


 逃げ切れるはずもないのに。


「---」


 そこに俺を呼ぶ声がした様な気がした。反射的に顔を上げると、大人達がいる向こう側にこっちを見ている少女がいた。


「------------」


 何を言っているのか分からない。でもその声はどこか最近聞いたような気のする声だった。


 顔を確認しようとしても大人達と被ってしまって見ることができない。


「-------」


 彼女は何か言って消えた。


 俺は彼女がいなくなってもそこをずっと見ていた。


 彼女が去ったあと不思議な感覚だけが残っていた。


 彼女がなんて言ったのか分からなかったが、その一言で、俺の中に渦巻いていた感情が安堵のただ一つの感情になっていたから。


 それに気付くと、どんどん意識が遠くなっていく。


 世界から徐々に、色が無くなり、音が消え、動きがなくなる。


 俺は消える意識の中であの少女が最後まで忘れることが出来なかった。


 あの少女は一体誰だったのか。


 それが意識が消える直前に思ったことだった。



◇◆◇◆◇



「マスター!マスター起きて!」


 俺はゼロに起こされて、目を開ける。


「主様、大丈夫ですか?」


「なにがだ?」


「ひどくうなされてた様でしたので」


「俺がうなされてた?」


 俺は夢の内容を思い出そうとするが、まず夢を見たのかすら分からなかった。


「あなた結構辛そうな顔してたわよ?」


「心配した…」


「そうか心配かけてすまないな」


「あ、あるじさま!大丈夫ですか!お水用意したから飲んでください!」


「リンありがとう」


 どうやら、すごく心配かけた様だな。リンなんてもう素で話してしまってるしな。


 とりあえずリンから受け取った水を飲んで少し落ち着く。


 外は日が傾き始めている様だ。


「今何時くらいだ?」


「今は夕方の5時くらいです」


「結構寝てたのか」


 寝る前はちょっとだけとか言ったような気がするのになぁ。過ぎたものはしょうがないか…。


「ついさっきグレプルさんが今日の夜は祭りをするって言いに来たわ」


「おっマジか。じゃ夜は皆で祭りに参加しようか」


「うん!」「はい!」「ん…!」「分かったわ!」「おぅ!」


 全員祭りが楽しみらしい。いつもよりちょっと元気がいいからな。


「美味しいものあるかなー?」


「きっとある…!」


「レンちゃん楽しみだねっ!」


「初めてのお祭りですからいっぱい楽しみたいです」


「みんな嬉しそうで良かったわね?」


「まぁそうだな。そういうお前だって楽しみにしてるんだろ?」


「ふふふ。そうね。ちょっと楽しみよ」


 ほんとに皆楽しみにしてるな。どんな祭りになるか俺もわくわくする。


 そして夜になり、準備を済ませて、祭りへとおもむく。


 今回はシリアスを書かせてもらいました。普段シリアスを書かない私からすると、とても難しかったです。

 これからどんどん伏線をはっていく予定なので、どんな展開になっていくのか想像してみてください。

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