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第172話 命運のようです

 俺が各国の架け橋となることを受け持った事で同盟の話は終わった。


 それからは戦争の準備を急ピッチで進める為、王達は城に戻り指示を出したのだそうだ。ここに来る前からある程度の告知はしてきたと言ってはいるが、やはり一時的な協力体制を結んだ事を早く言いたいみたいだ。


「父上達は国の事をここまで考えていたのですね……」


「シャール王女様はこれを機に政治についてお勉強なさるといいんじゃないですか?」


「あなたの言う通り、勉学に励みたいと思います。ですが、それもこれも戦争を勝ち抜かなければ意味がなくなるので、あなたに期待させてもらいます」


「過度な期待はやめて欲しいところですが、やれる事はやります」


「はい、よろしくお願いします!」


 シャール王女は先程の会談の話を聞いて思うところがあったようで、今はやる気に満ちていた。彼女の決意を無駄にしないために、この戦争をどうにかしようと、決意を新たにする。


「では、城に送ってもらおうかのぉ。早う指示出さないと、いつ教皇が攻めてくるか分からんからのぉ」


「分かりました。フェラリオン様も俺に捕まってください。バックス様を送った後、そのまま帝国へ送ります」


「よかろう」


 そして俺は二人を送る。別れる際に、二人から死に急ぐなと忠告された。お前は貴重な戦力であると同時に娘の友であり夫なのだとも。


 だが、今では夫どころか友であるかも怪しい。戦力になる事はある程度は自覚しているので、そこだけは肯定しておいた。


 王達を送った後からは、各王達の手腕によりみるみるうちに戦争の準備がなされていく。


 騎士と冒険者のBランク以上で戦える者を集めて集計し、その分の兵糧や道具、それに武具などを支給する。


 また、非戦闘員を安全な場所に避難させ、その護衛に戦争に参加しない冒険者を付けた。


 さらに、戦闘員の中でも得意の分野事に別れさせ、部隊を四つほどに分けた。


 一つ目が主力部隊。この中には騎士や冒険者の中で名を馳せた者達が入る。戦場で主力として働くであろう者達を入れた部隊で、後に紹介する遊撃部隊が起こした混乱に乗じて攻撃を仕掛けるようだ。


 二つ目がさっき出てきた遊撃部隊。これは足が早く、一撃離脱を目的として動く部隊。主力部隊よりも人数が少ないため、動きやすく、生き残ることに長けた部隊であり、先陣を切る事になる。


 三つ目が魔術部隊。これは魔術師で構成された部隊であり、後方からの支援を目的とした部隊である。初めは遠距離からの攻撃、後の主力部隊が交戦を始めたら、回復や支援の魔法をかけて戦いを有利に進めていく事になる。


 四つ目は補給部隊。回復薬や兵糧を補給する部隊であり、冒険者の成り立てBランクや、見習い騎手といったあまり戦力になりそうにないものがはいった部隊である。だが、補給部隊は重要な役割をになっている為、それぞれやる気充分のようだ。


 と、以上の四つの部隊に別れている。これは各国共通であり、共闘する際に各部隊を合流させても、問題が無いようになっている。


 ちなみに、騎士や冒険者、その他の非戦闘員は戦争があると聞いて少し混乱はしたものの、すぐに行動に移していた。日頃、魔物との戦いで、そこら辺の肝は据わっていたのかもしれない。


 そんな中、俺がやったことと言えば、各国を飛び回り状況報告、王からの指示によって各地を飛び回り俺が変わりに指示を出だすなど裏方の仕事だ。


 だが、聖国はともかく、王国と帝国は俺の事を知っている者が多く、非常にスムーズに事が運んだ。聖国の場合はシャール王女を政治の勉強も兼ねて連れていくことで、信憑性を高めた。


 最終的な準備が完全に終了したのが、会談終了から一週間後。相当なスピードであったと思う。


 そして今俺達は各国の国境が交わっている大陸の中心にいる。俺の未来予知では、この周辺から侵略が開始する事になっている。それを王に伝えるとすぐに行動に移した。


 戦闘になるのはもう間も無くだ。時間もあまりなく、この日の為に迅速な準備、編成をした。荒いところはあるかもしれないが、取り敢えず間に合ったので良かったと思う。


 カンカンカンカン!カンカンカンカン!


 敵襲の鐘がなり始めた。教皇の軍勢が現れたのだろう。


 すぐさま、帝王が前に出て気合を入れる。


「皆の者!この世界を!己を!大切な者を守る為にその戦争に勝利するぞっ!!」


「「「うおぉぉおおっっ!!!」」」


「我に続けえぇぇぇええ!!!」


 気合充分に皆が戦いに向かっていく。


 こうして世界の命運をかけた戦いが――



◇◆◇◆◇



 私はある場所で怒りを顕にしていた。あの若い者達のせいである。


 彼らは我が娘を籠絡し、私の前まで連れてきた。そんな事をしても無意味だと言うのに。


 だから見せしめも兼ねて一番煩かった、我が娘ニーナを殺した。その他の者達も殺しておきたかったが、見つかってしまっては私の作戦が台無しになりかねない。


 そう思った私は、勇者を置いてその場から立ち去った。


 だか、本来ならばもう少し戦力を蓄えてからこの場を立ち去る予定だった。私が怒りを顕にしているのはこれがこれが理由である。


 私はすぐに四階に降り、ここにいた数万の下級の悪魔達を私が秘密裏に作った地下洞窟に転移させた。今や、私にとって数万を転移させることなど造作もないことである。


 地下洞窟は三カ国の国境が交わる大陸の中心付近に作ってある。置いてきた勇者達にも殺したらここに来るように言っておいた。


 私がやろうとしている事がばれていたからには、戦争を早く起こした方が良かったが、私にはやる事があった。


 それは悪魔の安定化と私の指示を聞くように調整をすることだった。


 私はすぐに取り掛かった。悪魔達は私に作られた人造悪魔とも言うべきもので、まだ思いも思いに動けていない。安定化ばかりはどうしようもなかったので、調整だけやる事にした。


 だが、調整と言っても数万もいる悪魔全員をしなければいけないので時間が掛かった。


 調整を初めて二日。勇者達がこの場に戻ってきた。


「ちゃんと殺してきたようですね?」


「…………」


「一人殺せなかった?それでおめおめ逃げてきたと?」


「…………」


「今、なんと言いました?『神』がいた?それは本当ですか?」


 勇者達はゆっくりと一回だけ頷いた。


「あはっ、あははっ、アハハハハハッ!!!」


 私は幸運だ!まさかこの世界に神が降臨していたとは!


 私は笑いが止まらなかった。あまりにも私の思い通りの事が起きていたから。


 この勇者達は私に嘘は付けない為、分からない時は分からないとそういう。だが、今回はどうだ!しっかりと頷いた!これは確実に神がいるということだ!


 勇者達は神を倒せなかったと言っていた。ならばまた私の前に現れるはず。その時が世界の終わりだ!


 アハハッ!アハハハハハッ!!!


 私の狂喜に満ちた笑いが洞窟内に響く。


 さあ、早く戦争を起こしてあげよう。そして、絶望してもらおう。私が感じた絶望よりももっと強力な絶望を。


 そして約二週間。悪魔達の調整も終わり、安定もした。だがその間、私の高揚は一時も治まらなった。


 今私の目の前には悪魔がいる。今私の横には勇者がいる。


「さあ!世界に死で飾ろうではないか!」


 アハッ!アハハハハハッ!アヒャヒャヒャヒャッッ!!


 そうして世界の命運をかけた戦いが――



 『始まった』

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