表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/204

第170話 同盟のようです

 ステージ移動をもう一度使って、元の世界に戻って来た俺達は、聖都の城の外にいた。


 しかも、当たりは既に真っ暗になっている。時間の流れが違うのだからしょうがないのかもしれないが、さっきまで昼前だったのに、今ではすっかり寝る時間だ。


 俺達にとってはもうすぐ昼食時だったのだが……。


「なぁ女神。これって所謂時差ボケか?」


「そんな事私に聞かれても分からないよ」


「だよな。お前には期待してなかった」


「ひどい!自分から聞いてきたくせに!」


 まぁ何だ。思わぬ弊害が出て俺の中で焦りがな。時間無駄にした感じがするのが痛い。


 だが、自分の力を確認出来たのだ、後悔しこそすれ文句は言うまい。


「じゃあ、飯食って寝るか。多分明日は王達の答えを聞いて行動する事になるだろうしな」


「えぇー。もう寝るの?私全然眠くないんだけど」


「知るか。自分でどうにかしろ」


「ねぇ、私の扱い段々とひどくなってない?」


 『ねぇ、聞いてる?』などと言っている女神は無視して、今の状況を整理しよう。


 現在、夜中であり皆が寝る時間。そんな中、王城の前に突如現れる俺達。周りからすればこんなところか?


 まあ何となく怪しい奴らだなくらいだな。果たして、それで王城に入れてもらえるかどうか。別に明日入ってもいいんだが、ちゃんとしたところで眠りたい。そのための努力は惜しまない。


 という事で門番の人に事情を説明して、中に入れてもらえないかと聞いてみた。


「ならば、執事長を呼んで参ります。あなたの言っている事が正しいかは執事長に確認してもらいます」


 なんと頭のいい門番だろうか。女神とは大違いだ。


 門番が中に入ってから数分後、執事長を連れて戻ってきた。


「おや、あなたは。シャール王女が探していましたよ。今日はもうお休みになられていますから、明日お顔を見せに行っていただきたいですね」


「随分と懐かれたなぁ」


「そうでございますね。思春期の女性を懐柔する事は難しい事ですのに」


 どこでも思春期の女の子は扱い辛いようだ。皆苦労してるんだな。


「とりあえず、王城の中へお入りください。お休みになられる際は、今までと同じ部屋をお使いください」


「ありがとうございます」


 これで寝る場所は確保出来た。俺と女神はいつもの部屋に戻る。


 そしてご飯だが、セバスさんが気を利かせてくれて夜食を持ってきてくれた。


 俺達は礼を言って夜食を平らげ、寝る事にした。


 しかし、思うようにいかず、寝たのは日が昇り始めた頃だった。



◇◆◇◆◇



 コンコンコンッ


「あのー、シャールです」


「…………」


 コンコンコンッ


「へ、返事を……」


「…………」


 コンコンコンッ


「い、いますよね?」


「…………」


 シャール王女はある部屋を訪れようとしていた。しかし、部屋をノックする度に彼女こ顔は青褪めていく。


「ま、まさか……!」


 シャール王女は彼らがいなくなったのではないかと思い、ドア開けて中に突撃し、大きな声を上げた。


「い、いやぁぁ!!」


「「うわぁぁ!!」」


 シャール王女に叫びに、俺達は驚く。


「な、なんだ!敵か!?もう戦争が起きるのか!?」


「あわあわあわ!!」


「……ん?シャール王女?どうしてこんな所に?それよりもさっきの叫び声はなんですか!?」


「だ、男性と女性が同じベッドで夜を共にするなんて、そういう事ですよね……」


「……ん?何の話だ?」


 俺は全く話が見えてこない。


「ベッドに男女で入っている事ですよ!あなた方はそういう関係だったのでしょう!?」


 少しだけ、目尻に涙を湛えるシャール王女。


 俺の予想だが、彼女は盛大な勘違いをしている。あくまでも予想だが、しっかり誤解は解いておかねばならない。


「シャール王女、これはこいつが勝手にベッドに入ってくるからこうなっている訳だ。決して、シャール王女が想像している事ではないぞ」


「勝手にって何よ!私だってベッドで寝たいんだから!」


「お前はちょっと黙ってろ!」


「ほ、本当に?」


「俺は嘘はつかん。偶につく時あるが、それは遊んでる時だ。だが今は遊びではないからな」


「じゃあ二人であんな事やこんな事はしてないの?」


「それがどんな事なのかは知らんが、してないな。ただの添い寝だ。冒険者にはよくある話だぞ」


「よ、よかったぁ」


「良かった?何が?」


「い、いえ!こちらの話です!」


 どういう話なのだろうか?少し気になるところだ。


「やっぱりあなたってサイテーよね。ねーシロ?」


「二ャー!」


「言われもない罵倒を受けても痛くも痒くもないんだか?」


「そういう自覚がないところがサイテーなんだよ?」


「ん?どういう事だ?」


「ダメだこりゃ。シロ、これはもう諦めるしかないね」


「にゃん……」


 何故か二人が項垂れる。よく分からないが納得したようだ。


 コンコンコンッ


 一段落つきそうな時に、開いているドアにノックがされた。ノックをしたのは執事長だ。


「申し訳ございません。各国の王がお呼びでございます。至急集まるようにとの事です」


「分かりました」


「私も!い、行っていいですか?」


「シャール王女が?何か用が?」


「いえ、政治というものをこの目でしっかりと見ておきたくて」


「そういう事ならいいんじゃないか?パパも喜ぶぞ」


「パッ……!だからからかわないください!」


「ふむ。思春期に入った姫方を上手く懐柔してますね。勉強になります」


 セバスさんにとって、俺はいい教材だったようで、何かをメモしている。


「とりあえずセバスさん。王達の所へ案内をお願いします」


「かしこまりました。では、こちらへ」


 俺達は、セバスさんの後ろをついて行く。


 そして、到着したのは会議室。中には各国の王が勢揃いしている事だろう。


 セバスさんは躊躇いもなくドアをノックした。


「お連れいたしました」


「うむ。入れ」


「失礼致します」


 そうして、俺達は会議室の中に入った。


 各王の物腰は昨日の出会った当初よりは柔らかくなっている。話し合いで互いを認め合ったのだろうな。


「セバスは下がって良いぞ」


「かしこまりました」


 セバスさんは部屋を出ていき、また自分の仕事に戻るのだろう。


「では会談で決まった事を……ん?何故シャールが一緒にいるのだ?」


「私も今度の為に勉強をしておきたくと思いまして」


「カームの娘は勤勉だのぉ」


「ふん。王女なのだ。これくらいは当然である」


「フェラリオンの娘は現を抜かしておると聞いたが?」


「それはあの猫野郎がフェルトを唆すからだ!」


「まあまあ。とりあえず落ち着け。各国の王がこの様では示しもつかぬだろ」


 聖王様の一言でとりあえず落ち着きを取り戻す。


 娘の事で喧嘩をするとかどこの親父だよ……。どこの王女も立派ですから喧嘩して、戦争なんてことにならないようにしてくださいよ。


「早速、本題に入ろう。結論から言うと、この会談で各国の同盟が成立した。歴史的な日である」


「同盟を?」


「うむ。対等な立場で、常に助け合うという盟約つきでな。元々、この会談はそれの為に開いたものだ」


「カームからこの話がきた時は驚いたものじゃ。それに、お主が使者をやっておったしな。信用に足るものじゃて」


「私もその点は否定はしない。今のこやつは嫌いだが、この世界を守ろうとしているのは分かっているからな。私情で民を危険に晒すことはしない」


「うむ。やはり君に頼んで正解だった。この同盟は君がいたから成立した様なものだ。誇っていい」


 と言われても、この同盟がどれ程の力を持つのかなんて俺には分からない。ただ、王達の反応を見るに本当にすごい事なのだろう。


「では、君達にはこの同盟の真意を聞いてもらおう」


 そうして聖王様は口を開く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ