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第163話 聖王の娘のようです


翌日。


 俺は目を覚ますとベットにの上にいた。誰かが運んでくれたのだろう。それだけなら良かったんだが、目の前の光景に唖然とする。


 俺は右を向いて寝ていたのだが、目を覚ますと、至近距離に女神の顔が……。驚くより前に固まったぜ……。


 まあ、何が言いたいかと言うと、女神と一緒に寝たってことだ。寝たと言ってもぜんぜんいやらしい意味じゃないぞ?俺はそんな事した覚えないし。


 俺は女神の寝顔をチラ見する。


 その時、俺の心が懐かしい感じが埋めていった。


 はて?懐かしいとはどういう事だ?女神の寝顔はそこまで期間も空けずに見てるはず……。どこをどうしたら懐かしく感じるんだ?


 俺は少し考えに耽る。そして、昨日寝る前も同じような感覚に陥った事を思い出した。


 あの時は暖かい何かだったが、もしかすると、懐かしくて暖かく感じなのかもしれん。そうすると昨日のあれも、女神が起因ということになるが……。


「ん……っ」


 女神は身動ぎをした。思い做しか、少しこっちに寄ってきている気がしなくもない。


 だからと思い、俺が女神から少し距離を取ろうと、動き出した時だった。


「まくらぁ……えへへ……捕まえたぞぉ……」


 と意味不明な事を言って、俺に抱き着いてきた。


 ここで問題。美少女と呼ばれる者にベッドの上で抱き着かれたらどうなるか。


 まあ、一般的だった場合、すなわちマンガやアニメ出会った場合ならば、俺が少し顔を赤くして照れるところであるのだろう。しかし、俺の顔色は決して赤くはない。それどころか青に近づいている。


 俺の全身が固まり、細胞一つ一つが悲鳴を上げ、骨のきしむ音が体中を駆け巡り、臓器が機能を停止しようとする。


 抱き着いてきたこいつは腐っても女神なのだ。遠慮なく抱き着いてきた場合どうなるか。もう分かって頂けただろう。


 答えは俺が死ぬ。死因は圧死だな。女神に抱き着かれて死ぬとか、何それ……。


 俺は必死で女神を起こそうとしながら、少しでも緩和出来るようにと対策を打っていく。


「おっ……おいっ……おき……ろっ……!」


「えへっ……好きぃ……」


 こんな状況で何の夢を見ているんだこいつは!


「サバ缶……好きぃ……」


 サ、サバ缶!?こいつ食い物の夢を見てんのか!?食い物の夢を見てて抱きつく要素がどこにあるんだよ!


「……まも……好きぃ……」


 えっ?何だって?さんまも好き?ふざけるんじゃないよ!俺は命が掛かっていると言うのに!


 俺は圧死対策として、硬化、超硬化をしている。そのため、多少圧力には耐性が出来た。だが、耐性が出来ただけで、未だに潰れていっている最中である。


 俺は一か八かで、頭突きを食らわす事にした。これで起きなかったら、こいつには痛い目にあってもらう。


 じゃあ行くぞ。せーの!


 ゴスッ!


「うげっ!」


 ってぇ!なんでこいつこんな石頭なの!?俺の頭、硬化させてたはずだろ!


 しかし、頭突きのおかげで女神が目を覚ます。


「んぁ?」


「よ、よう、女神……」


 俺は頭に痛みを感じ、涙を溜めながら挨拶をする。


「ふぁ〜。おは……よ……う…………?」


 大きな欠伸をして、挨拶を返す間に自分が今どんな状態なのか認識したんだろうな。顔が真っ赤になっていってる。


「キャー!エッチー!夜這いなら私が起きてる時にっ!」


 言っていることは意味不明だが、顔が真っ赤になったのは羞恥からではなく、怒りからのようだ。言われもない怒りを受けたら、一体どうするのが正解なのだろうか……。


 しかし、この状態でも俺を離さない女神は何を考えているのだろうか?


「私が起きてたら、ちゃんとやらせてあげるから!こんなのダメだよ!でも……無理やりっていうのも少しならいいかも……」


「ちょっと黙ろうか……!」


 女神の妄想が加速するところだった。危ない危ない。


「……ん?何?この硬いやつ?」


「ちょ、おま!それは気にしたらダメなやつ!」


「……あっ…………ヘンタイッ……!」


「男の朝はそういうもんだ!生理現象はどうもならん!」


「開き直るなっ!」


 開き直るもなにも、俺は何もやってない!女神から抱き着いて来たし、生理現象は仕方がない事だ!俺のどこが悪いって言うんだ!


「とりあえず、女神!俺を離せ!」


「あわわわ!う、うん!」


 俺はようやく女神から解放させる。そしてなぜが色んなものを失った気がする。いや、気にしたらダメだ。


 コンコンコンッ


 タイミングを見計らったかのようにドアがノックされる。執事長か?


「はい。どうぞー」


 そして部屋に入って来たのは、俺の予想もしていない人だった。


「おはようございます。私は聖国第一王女、シャール・フォン・ファルクスと申します。昨夜はお楽しみでしたね?」


 彼女の背丈的はジュリと同じくらいだろうか?だが、ジュリにはないお淑やかさがある。全体的に美しい人だという印象を受けた。


 んーしかし、ツッコミした方がいいのか良くないのかわからん。だが、とりあえず、


「昨夜はお楽しみではなかったです」


 とだけ言っておこう。


 それを聞いて、シャールはクスッと笑いを漏らす。


「あなたは私が王女だと言っても、慌てないのですね」


「王女と関わるのはあなたで五人目ですから」


「まあ!」


 出会った順でいけば、ミル、ジュリ、フェルト、フェイの四人だし。全員濃い人達だ。あまり思い出したくはないがな……。


 ずっと引きずっていては仕方が無い。気を張るのはやめることにしたんだ。気にしすぎることはない。


「ではあなたが、あの有名なロウリ・コ――」


「ちょっと待ったぁ!!」


「はい?なんでしょうか?」


 何故だ!?何故こんな所にまでその名前がっ!


 俺の後ろでは女神が笑っている。全てはこいつのせいだと言うのによく笑ってられるもんだな。


 女神は俺の殺気を感じたのか笑うのをやめた。


「その名前、どこから聞きました?」


「私も武闘会見に行ってましたから。お忍びですけどね」


「なん…だと…!?」


「街中の鬼ごっこは楽しかったですね!もう一回やりたいです!」


「なん…だと…!?」


 『もう一回やりたいです!』ってことは俺を追い掛けた事があるのか……!


「『邪悪なロリコンに神の裁きをー!』って言いながら追い掛けてました」


「そんな人確かにいたな……」


 何をこじらせてるのかと思ってはいたが、聖国の人だったなら仕方が無いな。うん。ロリコンが邪悪なのかは分からんがな。


「で、そんなシャール王女が俺に何か用ですか?」


「あ、そうでした。ここへはお礼を申しにきたのでした」


「お礼?」


「はい。パ……父上を助けて頂きありがとうございます。母上も大変喜んでおられました。一重にあなたのおかげです」


「いや、そんな事ないですよ。シャール王女はもう少しパパさんと仲良くしてあげてください。パパさん落ち込んでましたよ」


「パ……ッ!もう!揚げ足を取らないでください!」


「はっはっはっ。それは無理というもの。俺はあの時追いかけられた奴にはしっかり仕返しするつもりなのでね!」


 もちろん嘘だ。ただまあ、出来たらいいなくらいには思ってる。やられっぱなしって言うのは癪に障るからな。


「むぅ。思ってたより意地悪な人ですね」


「まぁ、それが俺ですから」


 俺は少し胸を逸らす。


「ふふっ。そうなんですね。覚えておきます。では、今度あった時は私が意地悪してやりますから待っていてくださいね?」


「了解です。お姫様」


「んーもう!絶対に仕返ししてやりますから!」


 シャール王女はそう言って顔をほんのりと赤くしてどこか行った。


 んー。少しやりすぎたか?


「天然って怖いよねー。ね、シロ」


「ニャ!」


「あれを女たらしって言うんだよ。覚えておくんだよシロ」


「ニャ!」


「ちょっと待て、それは俺の事か?」


「何ってるの?当然じゃん。ね、シロ」


「ニャ!」


 俺は朝から言われもない事ばかり、言われる。何故だ。これがおれに対する罰だと言うのか……。


 もう少しマシなものはなかったのかと、俺は神に問いながら、項垂れた。

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