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第159話 最悪の結末のようです

 最近話した、新作ですが、行き詰まっております。まさか構想を練る段階でこんな事になるとは……。

 ということで、一端新作の方から離れて、短編小説に逃げます。ごめんなさい。書き上がったら投稿する予定です。

 ……これが私の力として蓄積されればいいのですが、何とも難しい所です。


 私の話はここまでにして、「異世界に転生したので楽しく過ごすようです」をお楽しみください。

「タクマ!聞こえるか!」


「…………」


「ちっ!やっぱり戦わないとダメかっ!」


 剣を向けた相手、それも格上の相手だ。呼び掛けだけで、戦わくて良くなるならそっちの方が圧倒的にいい。


 だが、俺の呼び掛けは届かない。それは他の勇者達にも言えた事だ。


 魔力が減っていく中、こいつらと戦って勝てる未来は見えない。逃げようと思っても、勇者達は先回りするだろう。


 だが、俺の仲間は誰一人として諦めていない。やれるだけの事をやると、そう態度で示している。


「隣に居続ける為に――」


「誓いを守る為に――」


「安心させる為に――」


「仲間の為に――」


「証明する為に――」


「見返す為に――」


「「「こんな所で負けてられない!」」」


 皆から力が溢れ出す。


「俺だってやってやる!」


 俺はいつも八割の力しか制御しきれていない。だが、今だけは全ての力を出そうと思う。制御出来ないなど言っている暇はない。殺らなければ殺られる。


「行くぞ!」


 俺達は勇者達に突っ込む。


 ジュリの最大級の支援を受け、ミルの的確な援護を受けながら。


 俺はタクマに肉薄し、吹っ飛ばす。タクマは壁に激突し、土煙が上がる。だが、タクマがこれで殺やられるようなやつではないことを俺は知っている。


 俺はタクマが起き上がる前に、皆の方を確認する。タクマ以外の勇者を取り囲み、自分達が得意な戦い方に持ち込んでいた。


 ゼロは分体をどんどん作り出しながら、勇者達の足を止め、その隙にフェイとレンが切り込み、リンが大技を叩き込んでいる。


 失敗した時のフォローはジュリとミルが請け負い、完璧な連携が出来ている。


 俺にも、ジュリとミルのフォローはある。これなら勇者相手でも充分戦える。


 そこまで確認したところで、土煙の中からタクマが飛び出す。真正面から突きの姿勢だ。


 俺はタクマの剣を引きつけ、刀の腹でタクマの剣を打ち上げた。そしてバランスを崩したタクマに向けて刀を振り下ろす。


 しかしタクマは転移で難を逃れ、体制を立て直した。


 やはり一筋縄ではいかない。たった一度打ち合っただけだが、息が上がり、心臓がバクバクと音を立てている。


「操られててもお前は強いな……」


「…………」


「ちょっとは喋ってくれてもいいだろ?」


「……信念を貫く為に」


「マジかよ……。それを言うくらいなら黙ってて欲しかったんだがっ!」


 俺はタクマに再度突っ込む。


 タクマからは靄のようなものが立ち込め始めている。鋭い刃のような雰囲気に気圧されそうになるが、そんなのは関係ない。俺の全てを賭してでも、ここで止める。


 俺は、思考破棄を発動させた。だが、それは並列思考のうちの一つをだ。思考破棄をした方に体の操作をさせる。


 こうしてみてようやく分かる。思考破棄をすると脳が焼ききれる寸前までの、能力を引き出そうとしている事が。俺が思考している並列思考以外の思考を作り出し、その全てに思考破棄がかかっていく。


 思考加速が重ねがけされ、身体強化や攻撃強化を底上げするために、支援魔法を常にかける。更には分身を作り出し、遠隔操作も併用する。


 そしてここでようやく創造と言うスキルの真髄を知る。


 脳が焼ききれる寸前。それは創造がアシストをしていた。全ての演算、魔法の詠唱、作戦立て、その全てを。だから、思考破棄をしても動く事が出来ていた。


 俺のスピードは音速を超えている。力もさっきまでの何倍もある。その状態で、タクマに仕掛ける。


 本体は刀を横一閃、分身は死角からの一撃を。


 だが、タクマはその全てを受け止めた。……否、分身を全て消した上で、俺の刀を受け止めた。


 そしてタクマの体がブレたかと思うと、真横に吹っ飛ばされる。回し蹴りを食らったのだ。


 壁にめり込む程の力で飛ばされた俺は、もう動く事が出来なかった。


 思考破棄が魔力の枯渇で切れ、それによって痛覚遮断が切れた事で、分身が食らった攻撃の痛みがフィードバックする。


 目の前には既にタクマが迫っていた。


 どうにかして動こうとするが、痛みと、魔力枯渇による体の重さで、どうしても動かない。


 タクマが剣を突き出した。俺の胸を貫き、そのまま切り下ろす。俺の返り血がタクマの体に掛かる。


 その時に見たタクマの目には赤い涙が流れていたように感じた。


 そして俺は叫び声をあげることもなく、そこで死んだ。



◇◆◇◆◇



「マスタァァァーーー!!」


 ゼロが絶対に死ぬはずが無いと思っていた者が死に、錯乱する。


「そ、そんな……」


 リンが失意に襲われる。


「くっ……!二人とも、気持ちは分かるわ!でも今そうなってしまったら……!」


 勇者の足を止めていたゼロと、大きな一撃を加えていたリンが抜けた事による戦闘の穴は大きかった。


 勇者達はそれを見逃さず、包囲から抜け出し、簡単に殺せる者から殺していく。


 アイカがゼロの頭に槍を突き立て、ナユタがリンの心臓を握りつぶす。


「あ、あぁああぁ!!!」


 その様子を見ていたフェイが恐怖に身動きが取れなくなる。


「……秘密を守る為に」


 ミユキがそう呟き、魔法で作った氷の槍を自分に突き刺す。


 そして、フェイが血を吐いてその場に倒れる。


 一瞬にして四人の仲間が死んだ。


「そん……な……」


「ミル!気を強く保って!」


 そう言ったジュリの隣でタクマに切断されたレンが飛んでいく。


「あ……あぁ……」


「……日常を取り戻す為に」


 もう言葉が出ないミル。それに狙いを定めて、アイカが四本の槍を向ける。


 そして、飛んでいった槍はミルを滅多刺しにする。


「皆が……。これじゃもう勝てないわ……。何の為に強くなったのか分からなくなってしまったわ……」


 ジュリはそう言って、ナユタに頭を潰された。


 こうして彼のパーティは全員の死をもって壊滅した。


「ニャ……」


「うん。分かってるよ。ちゃんと皆を助ける。だから安心してね。シロ」


 私は目を瞑る。善人の祈りを受けた神である私は、出来るだけその祈りに答えなければならない。


 私はただここに立っているだけだった。そんな私に勇者達四人が襲いかかる。


「触れるな。下劣で下等な種族、人間よ。我は神なるぞ」


 目を開けた私は、神の力を解放する。


 何人たりとも私の体には触れさせない。ここでは私が絶対。私の言葉は絶対の力を持つ。


 勇者達はその場から動かなくなる。神の力の一端を見た意思無き者はほとんどがこうなる。


「去れ。去らぬならば、今ここで存在を消す」


 勇者達は私の言葉に従い、去っていく。


「……シロ。怖くなかった?」


「ニャ、ニャン」


「そう……。感謝される事はしてないんだけどね……」


「ニャン……?」


「ううん、何でもないよ。早く皆を助けようか」


 辺りに、神の力が広がっていき、皆が蘇生する。でも、酷い怪我を負っているから目覚めるのは当分先になる。


「どう?私は神様だから何でも出来るんだよ」


「ニャン」


「でも、神様だから皆を死なせちゃった。ごめんね」


 私は、この世界では唯一無二で絶対の存在である神。


「神様だから、泣きたくても泣けないんだよ……。ごめんね」


 私は、かつては力のない人間だった存在である神。


「皆、帰ろう。そしてまた笑いあえたらいいな……」


 私は、守る力を欲して神になり、守る事を許されない存在になった、ただの愚者である神だ――。

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