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第151話 鬼ごっこのようです

 さて、始まった鬼ごっこなのだが、今回に限っては俺には分が悪い。なんでもありなんだがユニークスキルとかいうチートを俺は持っていないからな。


 俺としてはチート無しでチートと闘えと言われているようなもん。そりゃ勝てないよな。


「どうしたもんかね……」


「あなた創造のスキル持ってるんだからユニークスキル相手でも勝てるでしょ?」


 女神がよく分からんことを言ってきた。創造のスキルだけで勝てるとか甘い。


「創造がどれだけチートでもユニークスキル相手には無理だろ。前の戦闘でゼロとリンを見た時、あ、これは強いと思ったし」


「そう?あなたなら行けると思ったんだけどなぁ」


「ニャン!」


「でしょ?シロもそう思うよね?」


 えっ。なんでシロの言うこと分かるの?俺にはニャンって言ってるようにしか聞こえないんだけど……。


「もしお前の言う通り、勝てるとしよう。だけどそれってどれだけの力を発揮した時だ?」


「100%かな?」


「無理だろ……。100%出そうとしたらいっつも暴走するし……。出せてせいぜい80%だわ」


「じゃあどうするの?」


「だからそれを考えてんだよ」


 全く無駄な時間を使わせおって。まぁいいが……。


 えーっと、問題は俺が皆に追いつくかどうかだな。追いつけなかった時点で勝率はぐんと下がる。


 これについてはまぁスキルで補って行くしかないか。俊敏強化極は持ってるから皆の足止めたり、とか浮かせるとかしないとダメだろうな。


「で、その皆はどこにいるのかなっと」


 ここまでスタートしてから三分強。皆がいるのは城の反対側。一応言っておくが、魔王城めっちゃでかいからな。王国とか帝国の城の二倍はあるからな。


 それをたった三分程で反対側に行くとか頭おかしいだろ。まぁ直線距離で行けば行けなくはないんだが。


 もしかして飛んだか?飛ぶのありだと、空中戦をする事になるな。無理じゃね?まずやった事ないし。


「まぁ一応様子見という事で空中から飛んで行ってみるか」


 ここから飛べばすぐに皆の所に行けるだろう。


 ……と思ったのだが、何あれ結界?あれで近付けないようになってるの?


「嘘だろ……。あんなのどうやって壊すんだよ……」


 俺が見たのは城の反対側を大きく包んでいる結界だ。今までの見てきた結界にはない大きさがあり、相当な耐久性をも備えていると思われる。


 大方、ジュリのユニークスキルで作られているものだろう。


「ジュリの結界なら壊す以外の方法を考えないとな。あれ絶対壊せないだろうし」


 一番有効そうなのが、すり抜け、透過。その他だと結界と一度融合して分離する方法とか、魔法を無効化したりとかだろうな。


《透過を獲得しました》


 まぁそう来るよな。じゃ、やってみっか。


 俺は結界が張ってある所まで移動し、結界と手を合わせる。そして透過の今しがた獲得したスキルを使う。


 すると、手から腕、腕から胸という風にだんだんと結界の中に入っていく。体全てが入るのに約十秒ほど。戦闘で使うのは無理かもしれんな。


「まぁ、中には入れたし今はオーケー」


 俺の声が大きかったのか分からないが、なんかゼロと目が合った。ゼロは俺を見て目を丸くしている。


「マスターがいるのー!」


「結界で防いでいるからまだ大丈夫よ」


「すぐそこにいるのー!あれ見るのー!」


「……なんであそこにいるのかしら?」


「ども、通り抜けて来ました」


「はぁ……。本当に規格外よね。あなたって人は……」


「自分でも時々思ってるから安心しろ。……さて、そろそろいいか?捕まえにいくが」


「ええ、いいわよ。……散!」


 俺が動き出すのと同時に結界が消え、皆が八方に散る。その姿はもう忍者のそれだ。豆腐とすり替える忍者にこれを見せてやりたい。


「つーか早えーよ。これ追い付けなくね?……いやギリギリ追い付くか」


 俺は最大限強化された状態でこれだと言うのに、皆は軽々走ってんだろうな。


 特にフェイ。獣神化した姿が輝いてるせいか残像が見える。それにスピードが半端ない。帝都で追いかけた事あるがあれの比ではない。


 一番遅いのがミルなのだが、ミルを追いかけてようやく追い付くかといった感じ。


 何この無理ゲー……。


 いや、まだ諦めたらダメだ。なにか方法があるはず。


 ……感知に引っ掛からず、皆に視認されず、音を出さずに近付けばあるいは?


 これってただの幽霊じゃね?


《霊化を獲得しました》


 ふむ……。これって要するに透明人間って事だよな?誰しもが一度は夢見る透明人間だよな?な?


 これは使う以外に無いだろう。じゃ、霊化っ!


 ……ん?何も変わらないぞ?どういう事だ?


 いや、これは幽霊でよく聞く、死んだ事に気づかないって言うあれか。俺が死んでるかは怪しいが、ここまで普通だったら死んだかどうか分からんだろうな。


 俺はこの状態のまま、皆が走るのを止めるまで待ち続けた。感知で皆がどこに逃げているのかは筒抜けだ。


 少ししてから再び皆が集まる。場所はここから考えて城の反対側。相変わらずの速さである。


 でもなんで集まるんだ?作戦会議でもしているのか?そんなことするまでもないと思うんだが。


「気にするより先に捕まえるか。今回は急ぐ必要も無いから、ゆっくりでいいだろ」


 と言いつつ、なんとなく小走りしてしまう俺。自分でも、この鬼ごっこを楽しんでいることが良くわかる。


 数分後、皆がいるのは集まっている所まできた。皆は俺に一切気付く様子がない。


「あの人の反応はまだない」


「わたしの感知も反応ないよー!」


「二人ともありがとう。引き続き索敵と感知であの人の反応を探っておいてくれるかしら?」


「「了解」」


「ジュリ様。私の予想ではあと一、二回程で主様が何かの策を講じて来ると思われます」


「いいえ、レン。あの人は常に規格外なのだからもう何かをしているはずよ」


 おぉ、当たってるぞ。ただ、常に規格外って言葉はなくても良かったんじゃないの?


「何かってどんなの?」


「あ、あるじさまなら何でもやる可能性がある」


「感知とか索敵に引っかからないようにしたりとか?」


「あ、ありえるかも……」


 やべっ。俺が規格外だって事だけでバレそうになってんだけど。バレる前に捕まえるか。


 俺は皆の肩を叩くために、触手を伸ばす。


「……皆様っ!来ます!」


 マジかっ!レンにバレた!もしかすると未来予知で、このあとすぐに負ける未来でも見たか!?


「「「……っ!」」」


 レンはともかく他の皆はまだ間に合う!俺は全速力で触手を伸ばす。


「「「ひゃうっ」」」


 俺がレン以外の皆の肩に手を置いた瞬間になぜが艶やかな声が。俺、何もしてないよ?


「み、皆様?ど、どうかなさったのですか?」


「なんか冷たいのが首筋に……」


「それになんか肩を触られて……」


 お、皆肩凝ってるみたいだな。整体師のスキル持ってるとこういうのまで分かるようになるのがいいよな。


 揉みほぐしてやろっと。


「「「はぁんっ!」」」


「い、一体なにが起こっているのですか。……ではなくて、一体主様は何をなさっているんですか……?」


 やっぱりバレてるか。じゃあ種明かしといきますか。


「ふっふっふ。レンよ、よく逃げたな。しかし見ろその他の者をっ!」


「……腰を抜かしていますが?」


「そう!悔しさに顔を……ってあれ?皆、腰抜かしてるの?」


「そうですね。ご自分の目で確認してみてはいかがかと」


 そう言われて皆の方を見ると、レンの言う通り腰を抜かしてる。


 ……はっ!もしかして肩揉んでるのがいけないのか!そうなんだな!


「主様、あれをするのは場所を考えた方が良いかと」


「いやいや、肩揉むくらいでこんな事になるとは誰も思わないって!」


「それよりも!なんで私も捕まえてくれなかったのですか!」


「ふぇっ!?」


 ちょ、今変な声出たんだけど!


「あぁ、こんな事になるのなら逃げる事などせず捕まってましたよ……」


「あの、鬼ごっこって本来捕まらないようにするゲームだからね?自ら捕まりに行くゲームじゃないからね?」


「そんなの知った事ではありません!」


「えぇ……」


 驚きが隠せないんだが……。まさか、常識人であるレンにこんな理不尽な怒られ方するとは……。俺、別に悪くないよな……。


「さぁ主様!私の肩も揉んでください!」


「だが……」


「揉・ん・で・くださいっ!」


「ひゃい!」


 場所を考えてって言ったのレンだったはずなのに、やらなかったら怒られた……。レン、怖い……。


 俺は仕方なく、レンの肩を揉む。


「はぅんっ!」


 そしてレンの艶やかな声が辺りに響いたのだった。

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