第141話 目が覚めたようです
ーside:主人公ー
「……ふぁぁ……ん?どこだここ……?」
俺が寝てから大分時間が過ぎている。確か寝た時は土の家だったはずなのだが、起きた今は城でみたような豪華な部屋に……。
「そういえば女神達はどこだ……?」
ベッドは変わってないから場所も変わってないっていうのは分かるんだが、いかんせん場所が場所だ。女神達に聞いて見なければな。
「……ハハッ!」
「……ー、……くださ……」
「それ……ー」
外の方から、女神達の声が聞こえる。聞こえるだけで内容は分からんが、なんか楽しそうだってことは分かる。
「外に出てみるか……」
俺が部屋の戸を開け外に出てみると、目の前は俺が寝る前に見た光景と同じだった。これでどこかに飛ばされたという可能性はなくなつた。
さて、本題の女神達はと言うと……。
「いい感じじゃない?」
「うん!いい感じなのー!」
「と、とっても可愛く出来ましたっ」
とまあ俺からちょっと離れた所で、こっちを見てそんなことを言っている。こっちというのは土の家の事だ。
俺は少し気になり土の家の方を振り返った。
するとそこにあったのはヘンゼルとグレーテルに出てくるお菓子の家のように、装飾を施された土の家だった。もう全く別物になってしまったか。
「あ、マスター!おはよぉー!」
俺に気付いたゼロが元気よく挨拶をする。
「ああ、おはよう。それで、なんだがゼロ」
「んー?」
「この家はなんだ?」
「えへへーっ。いい感じでしょ」
「いやまあ完成度は高いんだが、何故こんなに……」
「か、可愛くするのは女の子なら誰でも憧れますっ!」
「そうだそうだ!男のあなたには一生わからないことだっ!」
なんか女神にキレられた。まあいいさ。どうせこの家はもう使わなくなるから好きにさせておこう。
「まぁいい家になったと思うぞ。だが、お前達は寝たのか?」
「寝てないのー!」
「い、今から寝ようかなって思ってるんですっ」
「でもお前達って最悪眠らなくても大丈夫なんじゃなかったっけ?」
状態異常の耐性とか無効とか持ってたら睡眠とらなくても大体大丈夫なはず。
「は、はい。確かにその通りです。あるじさまはこのあとなにか急ぐ事があるんですか?」
「まあ先に進もうかと思ってな。休息も取れたし戦闘になっても大丈夫だと思うからな」
「で、でしたらわたしは眠らなくても大丈夫ですっ。恐らく通常通り戦えると思います」
「わたしもー!」
ゼロとリンは眠らなくても大丈夫か。ならあとは女神だけだ。
「女神は別に寝なくてもいいよな。どうせ戦わないんだし」
「えーっ!酷い!でも、その通りだから言い返せない!」
「んじゃ決まりだな。この家と別れて先に進むぞ」
そうして先に進んでいく俺達。
「お家作り頑張ったからお別れは寂しいなー」
「ゼロちゃんの言う通りだねっ。ちょっと寂しい……」
そんな話をしながら結構歩いたと思われる頃、遠くで看板が見えた。
「看板だぞ。多分ボス戦だ。気を引き締めておかなければな」
俺は皆にそう忠告して、少し離れてはいるがここから看板を読む。
『ここで待て。さすれば満たされよう』
「なんだこれ?満たされるってなんだ?謎だ」
「この満たされるってなにかの条件を満たすって意味だと思いますけど、なんの条件なのかさっぱりです」
「全くもってリンの言う通りだ。とりあえず、看板の指示に従おう。俺達は今までこうしてきたんだし」
そうして俺達はここで看板の指示で待機することになった。
◇◆◇◆◇
ーside:ジュリー
鬼ごっこも程々に全員ハンモックに揺られながら寝た後の事。
「……ぉはよー……」
「……おはようございます」
「……ん」
「おはよ……」
私を含めた全員が同じ時間に起きた。まあそんなに不思議なことではなく、起こすように精霊に頼んでおいただけ。
「皆、寝起きは弱いわよね……」
「そうですね……。寝起きというものは頭がよく働きませんし」
「あたし二度寝していい……?」
「二度寝したらもう起きられなくなっちゃうからダメだよ。特にミルの場合は」
「ちぇー……」
「さ、どんどん起きて先に進みましょ。ここにいない仲間達が待ってるかもしれないし」
「ん……」
フェイがミルの扱い上手くなってる。見ると二人で過ごすとこうなるのかしら?私はあるていどまともなレンと一緒だったからさほど変わらないと思う。
「じゃあ皆で先に進み……その前に、身だしなみちゃんと整えた方がいいわね」
「はっ、私とした事が。すぐ直してきます」
「レ、レンっ。私も行く!」
「ん……?めんどくさくなった。ジュリやって」
「いいわよ。でも次は一人でするのよ?」
「ん。任せて」
任せても何も本当は一人でするものなのだけど。まあミルだし仕方ないのかもしれないわね。
ミルの身だしなみを整え終わると、レンとフェイも終わったみたいだった。これで後は先に進むだけ。
「じゃあ今度こそ先に進みましょうか」
「次も強いのがいたら嬉しい」
「私は嫌だけどなぁ。強いとまた死にかけてしまう」
「また?ということは一度死にかけているのですか?」
「う、うん。ちょっとね……」
「あの時のフェイ、強かった」
「あの時はなんかこう力が湧いて出てきたっていつ感じだった」
「あたしもそれあった。勇者と戦った時と武道会の時」
「私も同じ時にありましたね」
「私もよ。あれが魔王が言っている力の正体だと思うわ。中々に自分からあれを引き出す事は難しいわよね」
フェイも死にかけて覚醒したみたいね。後はその力を引き出すだけなんだけど、それはまだみたいね。
「多分勇者達はあれを使いこなしてる。勝つにはあの力を引き出す必要がある」
「そうね。また修行でもしようかしら」
「修行って一体何のこと?」
「そういえばフェイ様は知しませんでしたね。修行というのは・・・」
と、こんな話をして半時くらい時間が経った時、今までと同じような看板が立っていた。
「看板……」
「看板ですね」
「看板だ」
「看板ね」
「「「「むぅ……」」」」
私達が看板を見て唸った理由は書いてあった内容にある。
『ここで待て。さすれば与えられん』
これだけしか書いていない。流石にこれだけだと何が起こるのかとか全く分からないから、不安でしょうがないのだけれど。
「今までも看板の指示に従ってきたのだから、ここも従った方がいいのよね」
「ん。指示通り待っとく」
「そっか。じゃあさっき言ってた修行でもやってみようかな?」
そんなこんなで、私達は看板の指示に従うのであった。