第126話 ダンジョンに潜るようです
「では、説明させていただきます」
受付にダンジョンとはどんな所なのかを聞いてみたところそのような返答を貰った。
俺的には、宝物があるところだといいなと思っている。金銀財宝ならなお良し。
「ダンジョンとは、一獲千金を夢見る冒険者や己の限界を超えようとする冒険者が来るところです」
い、一獲千金ということは……!ゴクリ……。
「一獲千金を夢見るということなので、当然の事なのですが宝物があります。それは装備品や装飾品を初めとした実用的なものから、食料などの消耗品、そして、金や銀などの財宝です」
きたーっ!財宝欲しい!というかお金が欲しい!勇者の件を忘れた訳じゃないけど、とてもじゃないがお金なしでは生きていけない。
「しかし、そのお宝を狙ってダンジョンに潜る人達で、無事にダンジョンから戻って来る人は全体の一割から二割程度です」
十組のパーティが潜ったら、帰ってくるのは一組から二組程度という事だな……。やはり少ないか……。
「ここまでで何かご質問はありませんか?」
「えーっと、お宝というのがどんな感じで手に入れる事が出来るのか知りたいです」
「かしこまりました。お宝は聞く限りですと、宝箱の中に入っているようです。宝箱はダンジョンのなかに点在していおり、一度取らない限りは中身が変わることはありません」
ん?言葉のニュアンスからすると宝箱は復活するのか?
「宝箱は一度取ったとしても、日をまたぐことで再び出現します。復活時の宝箱の内容物はランダムですので、変わる事が多々あります」
「なるほど。復活する理由とかは分かっているのですか?」
「いいえ、未だに解明しておりません。神のみぞ知るというところでしょうね」
神のみぞか……。神ならここに居るんだけどな。ポンコツでダメダメだけど。
「以上でよろしかったでしょうか?」
「あ、はい。ありがとうございます」
「では、先程の続きの説明に移らせてもらいます。ダンジョンに潜った冒険者達の多くが戻って来ない理由は主に二つあります」
二つもあるのか……。俺のパーティは何かとやらかすからちょっとやばそう。
「一つ目ですが、純粋に魔物が強いという事です。それにより、低レベルで攻略に挑んだ者達のほとんどは帰ってきません。なぜ魔物がそこまで強いのかという理由は、魔物同士が戦い、強者のみが生き残っている為だと考えられています」
なるほど。言ってしまえば常時武道会が開催されているという事だな。勝てば先に進めるが、負ければそこで終わり。勝利こそ生き残る為の手段というわけだ。
「そしてもう一つは、ダンジョンに罠が仕掛けられているという事です。罠と言っても色々な種類があるようですが、中でも転移トラップと言うものはほぼ確実に死を招きます。罠は発動するまでなんなのか分かりません。できるだけ罠を掻い潜って進むようにしてください」
転移トラップか。字面的にどこかに転移するトラップか、どこからか魔物が転移してくるトラップだろう。
「ここまでで何かご質問はありませんか?」
「一番奥には一体何が?」
「一番奥には誰も到達いておりません。ですから何があるのか、何が起こるのかさっぱり分からないのです」
「そうですか。ありがとうございます」
「いえ、ダンジョンに潜る際はお気を付けてください。ではご武運を」
俺達はダンジョンについての説明を受け終わって、一旦ギルドの外に出た。
中だと人が多くてかなわんからな。
「よし。皆もさっきの説明を一緒に聞いていて分かったと思うが、ダンジョンは相当に危ないところだ。それでもダンジョンに潜るか?」
「食べ物があたしを待ってる……!」
「ミルはほんとにぶれないよな……。ある意味すごいわ」
「えっへん」
なんでそんなに偉そうなんだよ。全然褒めてないぞ……。
「まぁそれだけダンジョンに潜る気はあるってことよ。もちろんミルだけじゃなくて私達もね」
「そうか、なら何も言うことはないな。じゃあ一獲千金目指してダンジョン攻略といきますか!」
「「「おぉー!」」」
そして俺達はダンジョンの入口付近に移動する。
ただ行き交う人の流れに、身を任せていただけなんだけどね。なんかダンジョンに着けてしまったというのが本音だったりする。
「「「おぉ」」」
ダンジョンは洞窟型で、入口は思いのほか大きく、見ているだけで圧倒され、感嘆の声が自然と出てくる。
「俺は一獲千金を夢見る冒険者として潜るか」
要は金の為だ。理由としては充分だろう。
「あたしはまだ見ぬ食材を集める……!」
ダンジョンに潜る際に、これ以上のくだらない理由を言う奴はそうそういないだろうな。
「私は自分の限界を超えるわ」
ジュリは今回は真面目な回答だ。その裏には色々は覚悟が見て取れる。
「私は、不屈の闘志というものを鍛えたいです」
ダンジョン攻略では相当忍耐力が必要になるだろうし、レンはそれを知っていて言っているのだろう。
「わたしは宝箱あけたーい!」
ゼロよ、開けるだけで気が済んでしまうのか……。
「わ、わたしは自分に自信をっ!」
リンの理由も立派なものだ。ダンジョン攻略の中で自信が付いて欲しいと俺も思う。
「私はお父さんやお母さんを見返したいからやれるだけやる」
フェイは俺達のパーティに登録もした。その中での初めての戦いが待っている。
「あ、そうだ。フェイ、これをはめておいてくれ。これはパーティメンバーの証だと思ってくれれば結構だ」
俺が渡したのはパーティメンバーの証とも言うべき指輪。余分に買っておいて正解だった。
「分かった。ありがとう」
「まぁなんだ、これからよろしく頼むぞ」
「うん!」
「よしっ。じゃあ早速ダンジョン攻略といこうか」
そうして俺達はダンジョンへ足を踏み入れたのだった。