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異世界に転生したので楽しく過ごすようです  作者: 十六夜 九十九
第6章 結婚式そして仕返し
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第115話 使い魔と逃亡のようです

ーside:ジュリー


「ウルフの肉焼くわよー。誰か火をおこしてくれない?」


「あたしやる。絶妙な火加減で美味しく焼き上げてやる」


「これはミルが食べる物じゃないわよ?」


「ギャ、ギャングベアーも美味しい方がいいに決まってる……!」


「はいはい分かったから、早く火をおこしてちょうだい」


「ん。まかせて」


 という事でウルフの肉を焼き始めた私達。


 ウルフの肉は串に刺して焼き鳥の要領で焼いている。その方が楽だし、美味しそうに見えてくる。


「後は匂いを遠くに運べば、ギャングベアーも寄ってくるわね」


「そうかっ!あー!早く戦いたいものだな!うずうずが収まらん!ちょっとギャングベアーが来るまで素振りしてくる!」


 エルシャは満面笑みで素振りを始めた。


 笑って素振りをする人を初めて見たわ……。まあこの世界は変人が多いし、そういう事もあるのかもしれないわね。


「ジュリー……あれちょっと食べてみていいー?」


 ゼロが私の服をちょんちょんと引っ張って、ウルフ肉を指さした。


「ダメよゼロ」


「えーなんでー?」


「ミルをご覧なさい。ミルは涎を垂らして、目をギラつかせても、我慢しているのよ?」


「はーい……」


 ちょっと落ち込んでしまったわね。じゃあ元気が出る事を言ってあげようかしら。


「……でも、ギャングベアーを狩り終わったら焼いたお肉は食べてもいいわよ?」


「ほんとに!?やったー!」


 ゼロははしゃいで謎の踊りを始める。でもこれでこそゼロって感じよね。


「ジュリ様。私達が風魔法で匂いを遠くまで運んでおきました」


「多分ギャングベアーにも届いたと思いますっ」


「さすがレンとリンね。仕事が早いわ」


 これで後はギャングベアーがここに来るのを待つだけね。エルシャ程じゃないけど、どんな奴か気にはなるわね。


 それから私達は雑談をしながらギャングベアーが来るのを待った。


 待つこと十分。私達の背後の草むらの奥でカサカサと音を立てた。


「……!皆、構えて!」


 私の掛け声にさっきまで笑ったり休んでいたりしていた皆が真剣な表情で構えを取る。


 やっぱりさすがね。あの人の近くで戦ってるだけあって戦闘となると一気に雰囲気が変わる。


 ガサガサッ!


 近いわね。


「……ところでもう奴の姿見えてるのだけれど、あそこ私達からどれくらい離れていると思う?」


「約三十メートル程かと」


「それにしては大きく見えるのだけれど?」


「私も同じです。恐らく他の皆様も」


 そんな話をしていると、ギャングベアーと思われるクマが草むらから出てきた。


 GUOOO!!


「キタキター!!私が先に行かせてもらう!!ギャングベアー覚悟!」


「エルシャ!単独行動は……って聞いてないわね」


 大体予想はしていたけど、こう予想通りだとは思わなかったわ。


 でも、あの感じだとエルシャ一人で勝てそうね。


 ギャングベアーは力任せに腕を振り回しているだけ。でも、その腕が周りの木に当たれば、木が折れる。


 腕を振り回す威力もスピードも強く、ただの冒険者だったら即やられていただろうけど、相手はギルマスまでしているエルシャだ。


 エルシャは持参していた槍の目にも止まらぬ早業でギャングベアーの腕をいなし、遊んでいる。


 心底楽しそうに笑っているけれど、手を抜いているわけではないようね。これなら簡単にクエスト達成できそうだわ。


 そんな時、ギャングベアーの背後にもう一匹いることに気付いた。


 しかし、そのギャングベアーは襲ってくる気配がない。それどころか腰が引けているように感じる。


 不審に思った私は対話のスキルを使った。そしてギャングベアーの会話が聞こえてくる。


『あなた!もういいから!』


『そうはいかない!お前にも我が子にも辛い思いしかさせて無い!せめて美味しいものを食べさせるくらいは……!』


『だからって人間の食べ物を奪う必要はないわ!これ以上やったらあなたが死んじゃう!』


『俺はお前達を残して死んだりはしない……!だけどこの戦いはもう止めれない!背中を見せたら俺は確実にやられる!』


『あなたぁ!いやよいやぁぁ!!』


『ママ?どうしたの?』


『っ!どうしてこんな所まで来てしまったの!?早く逃げなさい!人間に殺されてしまうわよ!』


『人間?殺される?』


『いいから逃げるんだ!今はパパとママの言うことを聞きなさい!』


『分かった!パパ、後で聞いて欲しい話があるんだ!ちゃんと帰ってきてね!』


『……あぁ楽しみにしてるよ。さあおいき』


『うん!』


『…………行ったか』


『……あなた、私も戦うわ。あの子には悪いけどあなたを見捨てる事はできないの』


『何を馬鹿な事を……!でも……ありがとう。お前に会えて良かったよ』


『私も、あなたに会えて良かった……愛してるわ』


『俺も愛してる……』


 グスッ……なんていい話なの……!家族愛に溢れていてとても美しい……!


「ジュリー?なんで泣いてるのー?」


「……グスッ……あのクマさんはとてもいいクマさんだったのよ……!」


「んー?」


「とりあえず、この戦いを止めないと!」


 私はクマさんとエルシャの間に入って、クマさんを庇った。


 エルシャは私がクマさんを庇ったことに驚き、一旦攻撃をやめた。クマさんの方も何が起きたのか分からずに唸ってるだけ。


「ジュリ!何をしている!せっかく二体目が来て盛り上がってきたところだったのだぞ!」


「もうやめてあげて!このクマさん達はいいクマさんよ!殺さないであげて!」


「ジュリ、お前は何を言っているのだ?」


 私は対話でクマさんにそこにいるように話して、皆に私が聞いた会話を教えてあげた。


「グズッ……グマざんにじあわぜになっでほじいです……!」


「ん。あたしも」


「その話を聞いた後では戦えんな……」


「そうですね……」


「お肉あげるー?」


「みんな……!分かってくれたのね……!」


 私はクマさん達の前に立って、今の事を話した。


『今気付いたけど何故会話が成立するんだ?俺達がおかしくなったのか?』


『それは私のスキルのせいよ。それと……はいこれ』


『こ、これはさっき焼いてた肉……!な、なんでこれを私達に……!』


『子供を立派に育ててね』


『『……!』』


『私達にはこんな事しかできないけどね』


『いや、ありがとう。君のような人間に会えて良かったよ』


『人間は悪い奴ばかりじゃなかったのね……』


 そういえばこの山に悪人が来たことがあるっていう話を聞いたわね。それでビャクさんが狙われたりって。


『私はジュリ。今まで他の人間がしてきた事、私が代わりに謝罪するわ。……ごめんなさい』


『いや、いいんだ。何も君が悪いわけじゃない』


『そう言ってくれるとありがたいです』


 もしかすると、魔物っていうのは今の人間よりも綺麗な心を持っているのかもしれないわね。このクマさん達然り、ゼロやレン、リン然りね。


『……ギリングだ』


『え?』


『俺の名前だ。俺の名前を知っているのは俺の親と家族だけだったが、まさか人間にも名乗れるとは思ってなかった』


『私はキャリーよ』


『ギリングに、キャリーね。あなた達の事忘れないわ』


《使い魔にギャングベアーが追加されました》


 ん?頭の中で女神の声が聞こえた気がするわ。念話かしら?でもそれにしてはやけに機械的だったわね。


『そうか、俺達はジュリ様の使い魔となったみたいだ』


『そうね、これ程光栄な事はないわ』


『使い魔?』


 それになんか私が様付けで呼ばれてる?


『ジュリ様は使い魔は初めてなのですね。簡単に説明しますと、配下ができたということです』


『そういえば、魔王も使い魔としてコウモリを使っていたわね。それで情報収集とかしていた気がするわ』


『私達はこの度ジュリ様の使い魔となりました。従魔とは違い、私達はここでの生活がありますので付き従うことは出来ませんが、お呼び頂けたらすぐに馳せ参じます』


 なるほど、大体分かったわ。これからは私の使い魔として仲間になったということね。


『では、私達は子を待たせていますので戻らせて頂きます』


『分かったわ。用が出来たら呼ぶわ』


『『はっ!』』


 ギリングとキャリーは子供の所へ戻っていった。


 幸せに暮らしてくれると嬉しいわね。いや、私の使い魔になったのだから幸せにしてあげるの方がいいかしらね?


「ジュリ様。どうでしか?」


「使い魔になったわ」


「つ、使い魔だとっ!?」


 エルシャが大袈裟に驚く。


「なにかおかしい事があるのかしら?」


「いや、使い魔というものは魔王の素質がある者だけが従える事が出来るという伝承が残っているのだ!」


 そういえばエルシャは魔王の本当の意味を知らなかったわね。また今度教えてあげようかしら。


 しかし魔王ねぇ。魔王ならミルはどうなのかしら?


「ミルには使い魔いたりするのかしら?」


「いるけど、使えるようになるのはあたしが正式に魔王になってから」


 という事は現魔王様の使い魔を引き継いだりするのかしらね。


 エルシャは今の話を聞いてもう我関せずと言った感じで、聞かないようにしている。


「まぁ使い魔の事は今はいいわ。とりあえずビャクさんの所に戻りましょう」


 そうして私達はビャクさんの小屋に戻った。



◇◆◇◆◇



ーside:主人公ー


「いい加減しつこいぞ!」


「ふん!なんと言われようとお前を地獄に落とすまで俺達は追いかける!」


「その執念を他で発揮しろよ!」


「「「無理だ!」」」


「口を揃えて言うことじゃねぇ!」


 いつまで俺はこいつらから逃げればいいんだよ。いい加減解放してくれ……。


「ところで、お前ら仕事はどうした!」


「「「やってねぇ!」」」


「いかにも鍛治職人ですって格好して言われても説得力ねぇよ!」


 仕事に戻らせれば解放されると思ったのに……!


「知ってるぞ!お前フェイリス王女の下着姿見たんだろ!」


「「「なにいぃぃぃっっ!!!」」」


「い、いや、それは、その事故といいますかなんといいますか……」


「「「よくも俺達の希望にを汚したなあぁぁぁっっ!!!」」」


 いけね!俺、嘘つけないからつい本当の事言ってしまった!


「「「殺す!殺すうぅぅ!!」」」


 全員本気で殺しにきてる……!やべぇ!どうする!スキルに頼るか!?


「「「うらやまけしからんのだぁぁ!!!」」」


「お前ら本音漏れすぎ!」


 しかしこの気迫の中逃げ回るのは俺の体力はもっても精神がもたん!


 かくなる上は……!


《催眠術を獲得しました》


 催眠術で眠らせる!手荒な真似はしたくないからな!


「催眠術発動!」


 俺は追っ手の方を向いて手を前にかざす。するとそこから大きな魔法陣のようなものが出てきて、追っ手の方に飛んでいく。


 その魔法陣は集団を通り抜けて消えた。魔法陣に触れた人達は眠ったようだ。


 ふぅ。疲れたぜ。いやぁやっぱりスキルは最高だな。頼りすぎるのはダメだけどな。


「さて、完全感知でずっと気になってたのだが、女神のいる場所を確認しに行くとするか」


 俺は、女神の場所まで転移した。

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