第114話 クエストと本音のようです
ーside:ジュリー
「ギャングベアーの生息地どこ?」
「ここは……ウルフのいた山ね」
今私達は、帝都を出たところ。そこで発覚したのがどこでギャングベアーと戦えるのかというものだ。
クエストを受ける際に貰った情報と照らし合せて地図を見ると一回行ったことのある場所だった。
「また、あのお山行くのー?」
「ここに書いてあるかぎりだとそうね」
「君達は一度行ったことがあるらしいから分かると思うが、その山は危険だぞ。少なくとも私達だけで行けるとは思えん」
確かにエルシャの言う通り、今の私達だけだときついかもしれない。でも、あの山にはビャクさんが居るから頼ってみよう。
「それについては私に考えがあるわ。多分それでどうにかなるはずよ。ならなかった時は……まぁそこで終わりね」
「そんな事にならない様に頑張りましょうね」
私達は早速移動を開始する。
いつもあの人がやってくれる、転移の移動をゼロが引き受けてくれた。
「ねぇ、シロのお母さんの所に直接飛んでもいいー?」
「そんな事が出来るの?」
「一回行ったことがある所はその場所がここからどれくらい離れてるのかーとか、その他色々をちゃんと思い浮かべれば出来るよー!」
なるほどね。要はイメージ次第って言うことね。そこはゼロの頑張り次第ね。
「じゃあ捕まってー!行くよー!」
「ちょっとまっ……」
「それっ!」
一瞬、目の前がクラっとして、気付いたらもう山小屋の前。
ゼロは何気なく転移したけどイメージを明確にするのはとても難しいと思う。そこはさすがとしか言いようがない。
それよりも、転移する前に何か言おうとしたエルシャが気になる。
「エルシャは転移前、何を言おうとしたの?」
「…………シロのお母さんと聞こえたのでな……。確かシロの種族は……」
「マウスネコよ」
「やっぱり……。という事はシロのお母さんは……」
エルシャがそこまで話した時だった。
山小屋の戸が開き、中からビャクさんが出てきた。
今日も今日とて美しい人だ事。羨ましいわね。
「あら、皆さん。お久しぶりです。初めましての方もいらっしゃいますね」
「は、初にお目にかかるエルシャと申します!」
「ふふふ。そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ」
「は、はい!」
エルシャが緊張してるのって珍しい。
「やはりあなたはビャッコなのですか?見た目は人間のそれとは相違ないのですが……」
「そうですね。今は人化をしているだけなのでそれを解けばビャッコの姿になりますよ」
「や、やはりそうなんですね!お手合わせしたいです!」
「こらこら、私達はちゃんと目的があってきたんだから、それは後」
「目的?そう言えばなぜここに来たのかまだ聞いていませんでしたね」
私はビャクさんに色々と事情を説明して、協力してもらえないかを聞いてみた。
「すみませんが、協力は無理なのです。私はこの山の主のような存在なので、仲間を差し出すような事はできません」
「そうですか。でしたら仕方ありませんね」
「しかし、私が知らない所で何かをされるのであれば何を言うこともありません」
山の主って言うだけで、それぞれの事はそれぞれって事か。
「あなた達と話してたら、ワーウルフのお味噌汁が食べたくなってきましたね。そういえば最近ワーウルフの肉を焼く匂いでギャングベアーが寄ってくるのに気づいたのですよね」
ビャクさんはわざとらしくそんなことを言った。
「私はお味噌汁を作るのでその時間までは自由にしておいてください。出来るは今から一時間ほどなのでそれくらいには戻ってきてくださいね!」
ビャクさんが小屋の中に戻っていく。
気を使ってくれたみたい。ギャングベアーを誘い出す方法とか、時間教えてくれたりとか。
「さてそれじゃあ……」
「味噌汁を食べよう」
「味噌汁ー!」
「お二人共、お味噌汁が出来上がるのは一時間後なのですから、今はギャングベアーが先ですよ」
「「はーい」」
レンがいてくれて良かった。
「それじゃあ気を取り直して、ギャングベアーを狩りに行きますか!」
「「「おー!」」」
さてまずやらなければならないのはウルフの肉集め。誰かが持っているならそれはそれでいいのだけれど。
「誰かウルフの肉持ってる?持っていたらそれ焼きたいのだけれど」
「ビャクさんに少し貰えばいい」
た、確かに……。
「それは盲点だったわ。それが一番早いわね」
すると、また小屋の戸があいて、ビャクさんがウルフの肉を置いていった。
「タイミングバッチリね」
「この肉を焼けばギャングベアーがくる」
涎を垂らしながらミルがウルフの肉を取る。もうそのまま食べてしまう勢い。
そして私達は、ギャングベアーをおびき出すことにした。
◇◆◇◆◇
ーside:女神ー
一方、その頃の女神とフェイはと言うと飲み屋さんにいた。。
私はフェイと二人でお酒の入ったグラスを掲げた。
「かんぱーい!」
「か、かんぱい……」
「ゴクゴクッ!プハーッ!やっぱりお酒は美味しいね!」
「そんなに一気に飲んで大丈夫なの……?」
「へーきへーき!なんてったって私は女神なんだから!」
「それが大丈夫そうには感じない……」
もうっ!失礼だなぁ!これでもちゃんと女神してるんだからね!
「そんな事より、フェイも飲まないと!ほら!」
「うぅ……。一口だけですよ?」
「うんうん!」
「んっ。……!お、美味しい!」
どうやらフェイもお酒が美味しく思えるみたいね!まぁこのお酒はジュースとほぼ変わらないけど。
「じゃあ他におつまみ頼もうか!」
「うん!」
フェイも乗ってきたし、どんどん飲もー!
すると外から地響きがしだした。
「待てー!」
「止まれー!」
「死ねー!」
「消えろー!」
「お前らほんと懲りないな!止まらんと言っているだろ!」
あの人の声がここまで聞こえてきたということは、どうやらこの地響きは追いかけっこの弊害みたい。
「あいつはほんろにへんらいじゃないんれすか!」
「フェイ!?あなたもう酔ってるの!?」
「よっれなんれないれすよー」
あははーって笑いながら顔赤くしてフラフラしてる。
完璧に酔ってる。一口しか飲んでないのに……。本当にこんな人いるのかぁ。
「どうなんれすか!あいつへんらいでそ!」
「変態は変態だろうけど、誰に対しても優しい所あるからねー。何故か私だけには厳しいけど」
「やさひい……。たしかにわたひをみても普通の人と同じ感じらった」
まああの人の周りにはフェイと同じような人が多いからね。変わらないのは当然かも。
「それにかっこいいし、一緒にいれ楽しいし、なんかいいなっれ」
「およ?それはあの人が好きなの?」
「すき?そうなろ?」
いや、私に聞かれても……。
「わたひ、今の身長がいやれ閉じこもってたらあの人がきた」
「ほうほう。それで?」
「最初はぼうしゃくふじんぶりにびっくりした。初対面なのひロリって言ったり、いきなり可愛いって言ったり」
そ、そんな事を平然と言ってのけるなんて……。あの人には羞恥心と言うものがないみたいだ!
「れも、あいつのおかげれあの部屋かられれて、仲間がれきた」
「それが嬉しかったの?」
「うん。あいつには感謝してる」
おぉ。あの人っていつも天然で好かれるからなぁ。
「わたし、あいつのこと好きなろかな?」
「と言うと?」
「結婚するって聞いた時嬉しかった」
「それは完全に好きなのでは?」
「そうなんだぁ」
「そうなんだぁって、フェイの事だよ?」
酔ってて頭が回ってないみたい。
「そういう女神はどうなのー?」
「え、あ、私?私はどうでもいいってー!それよりフェイの過去を……」
ドドドドドッッ!!!!
また、あの人がこの前を走ってきたみたいだ!
「何故だ!なぜお前ばかり!」
「お前みたいなイケメンがいるせいで俺達が霞むんだよ!」
「クソっ!地獄に落ちろ!」
「女の子を俺達にも恵んでくれ!」
「お前ら段々違う方向に向かってるぞ!ただ死ねってところは変わらんけどな!」
あの人は相変わらず変なことになってるねー。
「あいつへんらいでそ!」
またこの話題かぁ。無限ループしそうで怖いなぁ。
私はそんな心配をしながらお酒を口に含んだ。