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異世界に転生したので楽しく過ごすようです  作者: 十六夜 九十九
第6章 結婚式そして仕返し
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第108話 失態を犯していたようです

 帝王様達との話が終わって皆の元へ向う。


 ああいうのなんて言うんだっけ?政略結婚とかそんな感じなのか?


 とりあえず、ああいうのはあんまり好きじゃないな。絶対見返してやりたいな。


 そんな事を考えながら皆のいる部屋の前まで来た。


 結婚の事どう説明すればいいのかねぇ……。


 そんな心配をしながら部屋の扉を開けると、ゼロが俺を見て、突撃ダイブをしてきた。


「お、おいゼロあんまり勢い付けると受け止めきれん」


「えへへー!でも、マスターなら大丈夫だもんねー!」


「だもんねって……まあその通りなんだがな……」


 俺はゼロとそんなやり取りをして、部屋を見渡す。するとそこにはパーティメンバーと女神、エルシャさんにプラスしてフェイがいた。


 俺はゼロを離し、フェイの元へ。


「フェイもいたのか」


「うん。私、友達出来たの初めてだから……」


「お、おう。なんかごめんな……」


 フェイの地雷踏んでしまった……。今後はフェイには過去の事と、ロリっ子って事は禁句だな。


「あなたおかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも……」


「はいはい。そんなくだらん事は言わんでよろしい」


「むっ。最後まで言わせてくれてもいいじゃないのよ。一回でいいから言ってみたかったんだから」


 ジュリは相変わらずテンプレというのがお好きなようで。


「ところで、さっきはなんで呼び止められていたの?今後の大事な事だったりするのかしら?」


「ま、まぁ、大事な事だな……」


 もうこの話題が来るかぁ。早いなぁ。もうちょっと、こう場を馴らしてから自然な形で持っていきたかったんだが。


 ましてやフェイがいるところでこんな事を言うことになるとは俺も思ってなかったしなぁ。


「どんな事を話したの?」


「え、えっと、この話はまた今度という訳には……」


「……キッ!」


「いきませんよねそうですよねごめんなさい」


 うわぁ!ジュリの睨みが一段と怖さを増してるよぉ!


 だがまあ、泣いてまで怒ったのに、大事な事を黙っててもいい?って聞かれたらジュリみたいになるなわな。


「なになに?どうしたの?面白い話?」


 そんな様子を知ってか女神が近寄ってきた。


 どうやら面白い話が聞けると思っているようだが残念だったな。全然面白くないぞ。


 だが、女神が騒いだお陰で皆の注目が俺に集まる。


 こんな状況で話したくないんだけど、そうもいかないよな……。腹を括るか……。


「いいか?よく聞いておけよ?絶対に一回しか言わんからな?振りじゃないからな?」


「「「ゴクリッ」」」


 皆の生唾を飲む音が静かな部屋に響く。


「じゃあ言うぞ。……俺とフェイが結婚することになった!」


 俺は目を瞑りながらそういった。


 後半ちょっと早口になったがしっかり発音は出来たから大丈夫だろう。


 そんな不安を抱えながら少しずつ目を開けると、アワアワして落ち着きのないフェイと、ぽかんとしているその他大勢に、にやりと笑う女神が。


 女神、お前には面白い話になってしまうのか……。どうせ今後の展開に期待とか思ってんだろ。後でお仕置き決定。


「あ、あるじ……さま?よく理解が出来ないのですか……」


「リンの言いたい事も良くわかる。だが結婚するのは決定事項なんだ」


 リンの言葉は皆の心の内を代弁してくれた見たいだ。


「わ、私そんなの聞いてない!なんでなんで!」


 フェイは赤い顔をして、手を激しく振っている。赤い顔が、恥ずかしいからなのか、怒っているからなのかは分からない。


 フェアリア様はフェイに話したと言っていたはずなのにあれは嘘だったのか……。こりゃまた面倒な嘘を付いてくれたものだ。


「断ったりしなかったの?」


 ミルがいつもより少し硬い表情でそう聞いてくる。


「最初は断ったさ。だがフェイを仲間として連れていくとしたら決まりのせいで家族を一人同伴させないといけないって言うし、納得せざるを得なかったっていうかな」


「……そんな決まりない」


 フェイがギリギリ俺に聞こえる声でそう呟く。その声はジュリの耳にも入ったようでピクリと体が反応を示していた。


「決まりがないってそれ本当なのか?」


「うん。二十年王女として生きてきたけど、そんな事一度も聞いたことがない」


 あの人達はとんだ食わせ者だ。まさか結婚させるための理由が嘘だったとは。


「主様。それは破棄出来ないのですか?」


「破棄か……。あの時の状況からして破棄するのは難しいだろうな」


「何かあったのですか?」


「なんて言うか政略結婚みたいな感じだってのは途中で分かったんだが、ちょっとカチンと来て俺から結婚してやるって……」


「それだと受け取り方によっては主様から縁談を申し込んだようになりますね……」


 もう俺からはどうしようもない状態だ。


「…………でよ」


 そんな時にジュリが下を向いて震える小さな声で何かを言った。そして今度は下を向いたまま、聞き取れる声の大きさでこう言った。


「なんでよ……。なんで大事な事をまた一人で決めてしまうのよ……」


 俺はその時になって自分のやった失態に気付いた。


 ジュリの言う通り、一人で決めていた。もし、途中で、皆に意見を求めていたり、フェイとの話し合いを設けていればこんな事になる事もなかっただろう。


「昨日話したじゃないのよ……。一人で抱え込むのはやめてって……。私のあれは無駄だったの?」


「そ、それは……」


 俺はその後の言葉が続かなかった。何を言っても言い訳にしかならないと自分自身で分かっていたからだ。


「昨日の今日で性格が変わらないって言うのは分かってる……。だけど……」


 ジュリは泣いていた。でもそれは悲しいと言うよりは失望に近いものだろう。


 俺は二日連続でジュリを泣かしてしまった。学習しない俺が悪いのだが、やるせない。


 するとジュリは立ち上がり部屋の外に向かって走り始める。


 俺はそれをただ見送ることしか出来なかった。


「いいの?追いかけなくて?」


 そう言ってきたのは女神だった。だが、さっきまで笑っていた女神ではなく、真剣な表情の女神だった。


「今の俺が行っても……」


「私が好きになった君はそんな人じゃなかったよ。いつも真っ直ぐで全力だった気がするよ」


「エルシャさん……」


「既にあなたと結婚しているジュリが怒るのも当然」


「ミルの言う通りだ……」


「マスターはジュリのこと嫌いになったの?」


「そんな事はない。皆と同じくらいジュリが好きだ」


「でしたらその気持ちを直接ジュリ様に言ってあげてください」


「…………」


「わたし達のあるじさまは強い人ですから大丈夫ですよ」


「だといいんだけどな……」


 俺が最後の一歩を踏み出せずにいると誰かが背中を押した。


「うじうじしてないではやく追いかけなさい!私の部屋にいきなり入って来た時位の気持ちでね!」


 背中を押したのはフェイだった。フェイは俺との初めての出会いの時を言っているのだろう。


 あの時はがむしゃらにフェルトを探すことしか考えていなかった。だったら今度も全力でがむしゃらに行けということだろう。


「後のことなんてどうにでもなる。だから今は行きなさい」


 女神が言った言葉はいかにもジュリがいいそうな事だった。


 俺はその言葉を背に受けて、部屋を飛び出した。


 どこに行ったのかは大体分かっている。感知のお陰で見失わずに済んでいるのだ。


 場所は帝城の前のベンチ。


 俺はそこまで全力で駆ける。城の外に出ると辺りは暗く、人通りも少なかった。


 そして、ベンチに座っているジュリの前まで歩いて行く。


 なんて言えばいいのか分からない。でも皆が教えてくれた事を全力でやろう。


「ジュリ、悪かった。また一人で決めてしまって。でも知っておいて欲しい。俺はジュリの事が好きだ。俺は嘘はつかないからな。まぁジュリの前じゃ嘘ついても無駄みたいだけどな」


「…………」


「あ、えっと、その、形だけと言っても結婚してたジュリに相談しなかったのも悪かったと思ってるぞ!そ、それに今まで言えなかったがジュリにはいつも助けられてる!あ、あとあれだ!ジュリって可愛いよな!」


 って俺何言ってんだぁ!!これじゃ駄目だろぉ!


「クスッ……」


 お?今笑った?


「可愛いってなによ?そんなので私をおだててるつもり?」


「いや、えっと、ついこうポロッと出たっていうかそのぉ」


「なによ、謝りに来たかと思えば好きだって言って、私をおだてるし。そんなので私が許すとでも?」


「お、俺は謝ってるつもりだったんだけど……やっぱり駄目か……」


 全力を尽くしたんだけど、何言ってるか自分でも分からなくなった結果、駄目だった。


 これ以上どうすればいいか分からん。花束でも買ってくるか?いや、それじゃただのプロポーズだ!


「誰も許さないとは言ってないでしょ。からかっただけよ」


「じゃ、じゃあ!」


「全部を許したわけじゃないわよ。私を二度も泣かせたのだからそれ相応の働きはしてもらうわよ」


「はい!何でもします!」


「何でもって言ったわね?……じゃあ、私にキスをして」


「キキキ、キスぅぅ!?」


「キスしてくれたら全部許してあげてもいいわよ」


 断ろうにも、何でもって自分で言ったし、しかもその前には嘘をつかないって言ってしまっている!


 これは詰みだ!覚悟を決めてキスをするしか……!


 俺はジュリの肩に手を乗せ、ジュリに向き合う。


「いいか、目を瞑っててくれ。じゃないと恥ずかしくてこの場で死ぬ。何の比喩でもなく死ぬ」


「分かったわよ。目を瞑る位ならしてあげる」


 ジュリは言葉通り目を瞑る。


「じゃ、じゃあいくぞ……」


 俺は少しずつジュリとの距離を縮めていく。


 俺の心臓の鼓動が段々と早くなって、ジュリに聞こえるんじゃないかって位に大きな音が耳元に聞こえる。


 そして、少しずつジュリの顔が近づいてきて、遂に俺とジュリの距離はゼロとなり、俺はジュリにキスをする。


 …………おでこに。


 チ、チキンだと言うなら言ってもらってか、構わんぞ!俺はこれが精一杯だったんだ!


「……むっ。思ってたのと違うのだけど」


「か、勘弁してくれ。これでも頑張ったんだよ……!」


「まぁいいわ。場所を指定してなかった私が悪いのだし」


「あ、ありがとうございます」


「じゃあ戻りましょう。皆に悪いことをしたし謝りたいわ」


 ジュリは俺を置いて先に城の中に入っていく。


 どうやら機嫌は治ったようだ。キスではなく、俺の全力の謝罪が幸をそうしたと思いたい。


 俺はそんな事を思いながらジュリを追いかける。


「おーい待てってくれー!」


「……えへへ」


「えへへ?」


「……!な、なんでもないわ!気にしないで!」


 ジュリは手を顔の前で振って、俺に顔を見られないようにしていた。


 ……まぁ何のことか分かってはいるんだが、それを言うと俺も恥ずかしい。ここは何にも触れないでおこう。


 それから俺とジュリはドギマギしながら皆の元に戻ったのであった。

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