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異世界に転生したので楽しく過ごすようです  作者: 十六夜 九十九
第5章 武道会そして陰謀
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第97話 取り合うようです

「さぁ!始まりましたこのミニゲーム!史上初となる試みです!今までこんな事はあったでありましょうか!予選で落ち苦渋を舐めた者達が今まさに全身全霊を掛けて、ただ一つの箱を求める!そういった姿が私には見受けられます!願いを叶える権利を手にするのは一体誰なのか!目が離せません!」


 ミニゲームなのに本戦よりも熱く語る司会者が言ったように、たった今予選敗退者によるミニゲームが始まった。


 というか司会者の人、本戦よりこのミニゲームの時の方が活き活きしてない?俺の勘違いだといいんだけど。


「さて、ここで一度ルールのおさらいです。バトルフィールドとなるのはこの会場全域。参加者の皆様にはリング上にある箱を取り合って頂きます。制限時間は一時間。勝つにはゲーム終了時に箱を持っていなければなりません。そして、勝者は願い事を叶えてもらえることになっております!果たしてこのゲームの勝者は誰になるのか!このゲーム波乱が巻き起こる、そんな予感がしています!」


 まぁ司会者が言ったことがすべてだな。要するにこのミニゲームは箱を取り合って最後に持ってれば勝ちという事だ。


 約三百人という人が一つの箱を求め会場中を駆け回る……。考えただけで面倒くさそうだというのがわかる。


 まぁ見てる分には面白いからいいんだけどね。


「おっとー!ここでリングに集団が押し寄せてきたぁ!最初に箱を手にするのは誰だ!」


 うわぁ、なにあの人混み。リングにぎっしり人が詰まってるんだけど。


 すると聞き耳スキルが発動し、リング上の声を拾う。以下俺が聞き耳スキルで無造作に拾った言葉の羅列です。


「よっしゃー!箱を取ったぜー!後はこれを守れば……!」


「それいっただきぃ!」


「あぁ!俺の箱がぁ!」


「そいつをよこせぇ!!」


「おめぇは引っ込んでろ!」


「あぁっ?やんのかゴラァ!!」


「やってやんよ!」


「きゃ!どこ触ってのスケベ!」


「お、俺じゃねぶべらっ!」


「箱どこ行った!」


「あっちだあっち!」


「よし、ここは一旦協力して取りに行くぞ!」


「了解!」


「ふははは!この私の力にひれ伏すが……あ、ちょ、いいところだから押さな、ぐほっ!」


「ん?なんか今踏んだ気がする……。まぁいっか!箱は俺のもんだ!よこせぇ!!」


「きゃ!また変なとこ触られた!この変態っ!」


「お主いいケツしとぐはっ!」


「ああ!箱が落ちてしもた!どこや!どこ落ちた!」


「わしが先に頂くけんの!……誰じゃ今箱を蹴飛ばしたんは!」


「おっ、ラッキーこんな所に箱が落ちそてんじゃん」


「わ、私にその箱を恵んでください!私には妻と子供が六人いてお金が必要なんです!」


「そうはいうがこれは真剣な勝負あっ、ちょい横取りはやめろよ!」


「あんな無防備に箱出すのがわりぃぐへっ!」


「すまんすまんよそ見してたらぶつかってもーた。おっ、お前箱もってんじゃん。貰ってくで」


「お主、その箱は私が頂く。秘技!すり替え!」


「な、なにぃ!いつの間にか箱が豆腐になっとるがな!」


「その豆腐貰ったぁ!……あっ間違えたぁ!貰うのは豆腐じゃなくて箱だったぁ!」


「私にかかればあんな小物を呼び出すことなぞ造作もない。……ほらこの通り、ね」


「よっと。いやー僕にくれるなんてなんて優しい人なんだ!ありがとう!」


「ふん。感謝されるここでもない……じゃなくて!それを返しなさい!あれは一回しか出来ないんですよ!」


「今箱持ってるのはあいつだ!囲め囲め!」


「ひぃ!は、箱ならあげますんで命だけは!」


「おいこら!変なとこに投げんじゃねぇよ!見失っただろうが!」


「すみませんすみません!」


「……いでっ。んあ?こら箱かぁ?おおっ!ついにおいらにも運が回ってきてんだな!」


「そなたの持っている箱とこの1000Gを交換して頂けませんか?」


「んあ?1000G?そんな大金いいんか!喜んで交換すんぞ!」


「……ふははは!これでこの世は私のものに!」


「そんな掲げてたら取られるぞ。俺みたいなやつにな」


「ああ!私の夢がぁ!!」


「ちょろいもんだぜ」


「あんちゃん、今すぐそれ渡さんかい。さもなければ、あんちゃんの首と胴体離れてしまうかもしれへんよ」


「渡すかアホ。逃げきればいいだけの話だろ」


「秘技!すり替え!ふっ。箱は私の手の中に」


「なっ!箱が豆腐に……!」


 …………もうここら辺にしておくか。これ以上聞くと俺の脳が溶ける。


 それにしても、皆このミニゲームを楽しんでるみたいだな。まぁ一部ガチっぽいやつもいるけど、基本的には楽しんでいるのだろう。


 ちなみに俺の一番推しはすり替えするやつ。箱を豆腐と入れ替えるという発想がすき。


 多分だが、あれ絹豆腐だな。木綿豆腐だとすぐ崩れるし、より箱に近い形っていったら、やっぱり絹豆腐。


 ってそんなことはどうでもいいんだよ。俺達には他にしないといけないことがあるんだから。


 俺は今救護室に仲間の皆といるので、皆に指示をだす。


「皆聞いてくれ」


 俺が呼び掛けると皆の顔が引き締まる。


「俺達の目的は勇者を発見し捕らえることだ。皆には会場内に散らばってもらい、勇者を見つけてもらいたい」


 俺が皆にそう要求すると、レンが質問をしてきた。


「見つけた場合どうすればいいのですか?」


「俺が現場に行きたいのだが残念なことに立てる状況ではない。だから、念話で皆に呼び掛けてくれ」


「了解しました」


 これでとりあえずは、いいだろう。


「ではよろしく頼んだぞ!」


 そして皆は勇者を捕縛する為に、救護室から去った。ただ一人を除いて。


「さらっと念話でとか言われても私には無理なのだが……」


 救護室に残ったのはエルシャさんだった。まぁしょうがないだろう。何せエルシャさんは念話使えないんだし。


「それよりも、私には君達全員が念話が使えることに驚きだよ」


「なぜです?念話くらいなら俺の周りの人はほとんど使えますよ?」


「それは君の周りがおかしいだけだよ……」


 えっ、そうなの?念話って誰でも使えるもんじゃないのか。俺も一般常識からずれてんなぁ。


「とりあえず、私は念話が出来ない。だから見つけても報告はできないがいいか?」


「ちょっと待ってください」


 多分だが、エルシャさんが念話を覚えることが出来るの。正確には念話のスキルが手に入る、だけどな。


 その方法は簡単だ。スキル継承のスキルを作ってしまえばいい。魔法継承のスキルがあるんだ、スキル継承のスキルも作れるだろ。


 じゃ試して見るか。スキル継承を制作……と。


《スキル継承を制作しました》


 よし、予想通りだ。えーっと?どうやって使うんだ?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〔スキル継承〕

 渡したい相手に触れながら、渡したいスキル名を唱えると、スキルを継承できる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 この感じ久しぶりだ。どうやら創造は知らない時でも常に働いているみたいだな。ほんとご苦労様です。


 じゃあスキル継承の仕方も分かったし、エルシャさんに念話のスキルを渡すか。


「エルシャさん手を出してください」


「ん?手を?まあいいだろう」


 俺はエルシャさんの手を握った。


「き、君はいきなり何を!こういうのは順序というのがあるのだろ……?」


「何を言ってるんですか。とりあえず、念話」


 俺が念話と唱えるとエルシャさんの胸辺りが軽く光った。


『エルシャさん、聞こえますか?』


「な、なんだ急に!君の声が直接脳内から聞こえるぞ……!」


『えっと、これが念話なんですが、多分エルシャさんもできるようになってるんで、一回やってみて下さい』


「そ、そうなのか?じゃあ試しに」


『念話する時は伝えたい事を考えて、送り主を思えばいいだけなので簡単ですよ』


『こ、こうか?』


『おぉ、聞こえてますよ。これでバッチリですね』


 エルシャさんも念話が使えるようになったし、これでオッケーだな。


「本当、君には驚かされてばかりだよ。私が念話が使えるようになるとは思わなかった。この念話をくれたお礼に意地でも勇者を見つけてくる」


「期待してます」


「じゃ、行ってくる」


 こうしてエルシャさんも救護室から出ていった。


 これで準備は万端。さあこい勇者。お前達を正気に戻して、教皇を止めに行ってやる。


 そんな俺をよそにミニゲームはつつがなく進んでいく。

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