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異世界に転生したので楽しく過ごすようです  作者: 十六夜 九十九
第5章 武道会そして陰謀
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第93話 帝王と決闘をするようです

 えー、はい、現場の俺です。私は今ですね、帝都郊外の草原に来ております。


 見てくださいそよぐ風になびくこの猛々しい緑色の芝生と、純白の雲が流れる清々しい青空を!まさに大自然と言ったところでしょうか!


 そんな大自然に囲まれているのは私だけではありません!もちろん私の仲間、そしてフェルトとその父、フェラリオン帝王と共にこの大自然を感じています!


 この大自然の生気に当てられてただ一人を除きリラックスした様子です。


「ねぇあなた。そんな事考えても状況は変わらないわよ?覚悟を決めたら?」


 ジュリが思考を読むのはいつもの事。ここはスルーしよう。


「仮にも相手は帝王様だぞ?負けたくないが勝ったら勝ったでまた面倒なことになりそうでな」


 俺はこの帝都郊外の草原で今から帝王と戦うのだ。普通ありえないだろ?俺一介の冒険者なんだぜ?


「仮にもだと……?私は仮ではく、れっきとした帝王だ!」


「は、はいっ!すみませんでした!」


 そ、そんなに睨まれると恐怖しか感じませんよ……。もっとこう娘に見せるような柔らかい目線をお願いします。


「お前は準備出来ているのだろうな?」


「出来ていますが、しかし……」


「なんだ申してみよ」


 俺がこの先を言っていいのか躊躇っていたら、帝王様が促してくれた。


 俺はそれに乗って躊躇っていた言葉を吐き出した。


「こんな所で全力で戦うと環境を破壊することになりそうなので、初撃を打ち込んだ方の勝ちというのはいけませんか?」


「なるほどな。確かにお前の言う通りだ。無闇に環境を破壊するのは美しいとは言えん。いいだろう。お前の提案のんでやる」


「あ、ありがとうございます」


 よし!これで時間短縮な上に無駄な力を使わずに済む!


「じゃあ私が審判をするから他の皆は下がって」


 フェルトがそう言いながら俺と帝王様との間に入った。


 俺と帝王様、フェルト以外の皆は言われたように後ろへと下がる。


「それではロウリ・コーンとフェラリオンによる決闘を始める。対戦方式は初撃。最初に負傷させた方が勝者である」


 なんかそれらしい。ただ、俺はそんなにこの戦いに乗り気ではない。


 理由は二つ。


 一つは勇者達が来るか見張りをしなければならない為。


 もう一つがただ単にめんどくさいだけ。


 いや、もう、ほんとにこの決闘は俺に何の得もないからな。参加理由が死にたくないからだし。


「両者用意はいいな!」


 俺が思いにふけっているとフェルトからこれがかかる。


「私はいつでもいけるぞ」


「俺も大丈夫です」


「では、開始!」


 フェルトが腕を水平状態から上にあげる。開戦の合図だ。


 すると帝王様は何を血迷ったかいきなり獣化を始める。


 え、それ俺に勝ち目無くね……。だって俺獣化したレオンにボコボコにされてるんだぞ?


「て、帝王様!それは大人気なくないですか!」


「お前は何を言っている。これは決闘であろう。ならば相手を死しても罪には問われん」


「えっと?それだと俺を殺すって言っているように聞こえるのですが?」


「無論、そう言っておるのだ」


 それこそ大人気なくね!?あぁ皆、俺は今からお空の星になります。探さないでください。


「そんな事考えてる暇があったら自分から仕掛けにいきなさい!」


 遠くでジュリが怒鳴っているのが分かる。確かにジュリの言う通りではあるのだが、いかんせん獣化した六種族相手に迂闊に動くのは愚行というものだろう。


 獣化した帝王様はレオンの獣化よりもさらに一回り程凶悪な感じになっていた。


 だが、俺だって黙って見ているだけじゃないぞ。ありとあらゆるスキルを発動させて、支援魔法を自分にかける。


 とりあえずこれで俺の方も強化が完了だ。


「ではゆくぞ!」


 帝王様が地面に手を差し込み、持ち上げる。持ち上げたそれは人二人分程の長さを持つ大きな塊であった。


 思考を読んだ俺は次に取ろうとしている行動が分かった。帝王様はこの岩を俺に向けて殴るのだ。


「グラァ!」


 帝王様が俺に向けて殴ったその塊は粉々に割れ、それら全てが俺の元へと飛んでくる。


 これか一撃でも当たったら終わりだ……! 


 俺は流石に全ては避けきれないと見た瞬間に思ったので帝王様の背後に転移をする。


 そして、がら空きの背中に正拳突きを繰り出す。


 完全に不意をついたと俺は思った。帝王様も背後から攻撃が来るとは転移する前は思っていなかった。


 だが、俺が転移した瞬間、後ろに俺が来たと気付き、俺の正拳突きをかわした。


「お前、なかなかやりおるな。まさかこの私の背後をとるなんてな」


「俺にはフェラリオン様の反射速度の方が怖いですよ」


 俺は未だに死角に転移したはずなのにすぐに捕捉された理由が分からない。


 帝王様は俺が思考に陥ったタイミングで攻撃を仕掛けてきた。


 そのせいで反応が少し遅れた俺は焦り、とにかく突き放そうと考えて衝撃波を全方向に全力で放ってしまった。


 それは火山が大噴火した時の衝撃波と酷似した威力はあっただろう。


 衝撃波が通ったあとには砂埃だもうもうと立ち込め、俺を中心としてクレーターができたかのように地面がくぼんでしまった。


 放った俺は当然無事なのだが、すぐ近くにいた帝王様はもちろんのこと、審判のフェルト、下がっていた皆を巻き込んでしまった。


 クレーターが出来る程の威力がある衝撃波を受けて皆は無事だろうか?


 俺は砂埃を急ぎ風魔法で吹き飛ばして、辺りを見回す。


 すると、クレーターの端に女神がフェルトと帝王様を脇に座らせ、皆の前に守るように立って、結界のようなものを張っていた。


 どうやら女神が助けてくれたようだ。これは感謝せねばならんな。


「ちょっと!いきなりあれはないでしょ!何考えてんの!」


 丘の上から女神が叫ぶ。何もそんなところから肉声で喋らなくても、念話があるだろ。


『すまん、助かった。ちょっと焦って力加減をミスった』


 女神はいきなり念話が飛んできて驚いているようだ。ここからでもよく分かるくらいのリアクションをとってるからな。


『皆もすまん。ちょっとやりすぎた』


『マスターすごーい!一瞬で地面掘っちゃったー!』


 ゼロは全く気にかけてないみたいだな……。まあそれがゼロのいいところなのだが。


『あなたは私達をお空の星にしたかったの?』


 ちょっと呆れた様な様子のジュリは頭を抱えてやれやれみたいになってる。


『すまんすまん。そんなつもりはなかったんだ。ただちょっとやりすぎただけ』


『これのどこがちょっとなのよ……』


 確かにクレーターを作ったのはちょっとどころじゃないな、うん。


 俺は転移で皆の元へと飛んだ。念話ができない人のためだ。


「あ、あるじさま、おかえりなさいです。そ、それでこの抉れた地面どうするんですか……?」


 あーその問題があるな。環境破壊は良くないって言ったの自分なのに盛大に破壊してしまった。


「まぁなんとかなるだろ、復活魔法使えば。……ほい」


 俺はクレーター部分に復活魔法をかけた。するとどうだろう。徐々に穴が塞がっていくではありませんか。


 見た感じたと飛んでいった土や砂が戻ってきているのだろう。色んなところから飛来してきている。


 ただ、穴が塞がるだけで、あの芝生はなくなっている。


 まぁ復活魔法は命は元に戻せないからな。蘇生魔法にしても蘇生対象がいないとどうしようもないし。


「いつかはあたしも……」


「ミルはそのままで充分だ。変わるとしたらその大食漢なところだな」


「要するに暴食になれと?」


「んー、なんという斜め上の発想!」


 ミルはどんな時でも大食いはやめる気はないようだ。少しは変わってほしいものである。


「な、なんということだ……!私は夢でも見ているのではないか?フェルト、私の頬をつねってくれないか」


「お父さん。私さっきからつまんでるけど普通に痛い。これ夢じゃないよ」


「フェルトが言うのなら夢じゃないな……」


 どうやら銀狼の親子は少し現実を受け止めきれてないようだ。


「君は更に高みへと登っているのか……。何故かわからないが嬉しいな」


 エルシャさんはよく分からないがご機嫌だ。何故だろうね。分からないなー。


「あのー、ところでフェラリオン様。決闘の方はどうします?まだ終わってませんけど」


 俺は帝王様に決闘をどうするのか聞いた。有耶無耶になって、そんな気分じゃないしな。まあ有耶無耶にしたの俺なんだが。


「いや、これだけの実力の差を見せつけられては続ける意味もないだろう」


「で、では?」


「君の勝ちだ」


 よっしゃ!早く終わったし、そんなに力出してないし、クレーター作ってよかったわ。


「だが一つ問いたいことがある。お前のその力はどこで手に入れた?その力は人間の出せるものではないぞ?」


「あ、あはは……それは答えれないです……」


 まぁ不思議に思うのも無理はないよな。って言うかこれを不思議に思わない方がおかしいのだ。要するにうちのパーティメンバーは全員おかしい。ついでにエルシャさんも。


「私、次こんなのと戦うの……?」


 フェルトがそんな事を呟く。


 まあこんなのを見てしまったら戦意喪失してしま……。


「……なんかわくわくしてきた……!」


 えっ、そっち!?なんという戦闘狂なんだ。普通は戦意喪失しているところだよ?俺がフェルトの立場だったら棄権してる。


「あっ、こんなことしてる場合じゃないんだって!勇者が来るか見てないと!」


 俺がそういうと皆もあ、みたいな顔をする。まぁだよな。俺達いつもこんな感じだしな。今更だよな。


「フェラリオン様、それとフェルト……姫?と、とりあえず俺達は先に行きます!では!」


 こうして帝王様との決闘は終わり、帝都内に戻ることができた。

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