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掌から、潮騒

*ブログに掲載していた神保といっちゃんのプロポーズ話、移設版です。

 

 たった数時間前のことなのに、行きの新幹線の中で何を考えていたのかは、思い出そうとしても難しい。

 東京駅で手みやげを買ったとき、豪快におつりをばらまいてしまったくらいだから、ひどく緊張していたことは確かだ。

 一人旅なんて初めての経験だし、単に余裕がなかっただけなのかもしれないけれど。

 仙台駅から先はどうやって乗り換えればいいのかとか、そんな些細なことに神経を奪われていた気もするし――ずっと、神保さんのことだけを考えていた気もする。


 とにかく私は必死だった。

 なにしろ、彼のご両親からの直々のお呼び出しだったのだから。


 何を言われるのか、考えただけでも怖くて昨日は一睡も出来なかった。それなのに、車内で眠くなることがなかったのはやっぱり緊張のため。

――何を言われるんだろう、私。

 電話を貰ったのは先週の日曜日、息子には内緒で、三人だけで話がしたいとの申し出だった。

 話、って一体。

 あなたは息子にふさわしくない、とか……やっぱり別れて欲しいとか?

 初対面ではないだけに恐ろしい。

 ビクビクしていたおかげで仕事ではミスを連発、いいかげんにしなさいと先生に叱られっぱなしだった一週間。


 けれど本当は――私はずっと、不安だった。

 こんなことがなくても、すでに挫けてしまいそうなくらい、不安だったんだ。


 ***


 これ以上の幸せはない、と神保さんが満ち足りた顔で笑うのを、一緒になってしあわせだと感じられていたのは最初の一ヶ月までだった。


 電車内での偶然の出会いから、仕事の競合相手である彼が恋人になって半年。

 関係は良好。誰の目からもそう見えていると思う。付き合い始めてから波風がたったことなど、一度としてないのだから。

 筆談での会話が主なので、言葉にする前に冷静になれる点が強みなのかなと思う。

 それでも小さな諍いすら起きないのは、ひとえに彼が穏やかな性格であるお陰なのだけれど。


 とはいえ交際が順調かと問われれば、私は答えに詰まってしまう。


 毎週のように逢っているのに、私と神保さんの間にはなにもない。

 キスも、それ以上のことも――それ以下のこともない。

 今時、キスくらい女の子同士でもするわよ、と先生は言う。それじゃあ喧嘩になるはずがないじゃない、とも。

 確かにその通りだ。

 だから私と神保さんはまず、男女の間柄、と言えるのかどうかという根本が怪しかった。

 好きだとは言ってくれる。これ以上の幸せはないと言って、私を抱き締めてくれる。けれど。

 その行為は近頃、私のなかに漠然とした、言いようのない不安を生んでいた。

 だって、神保さんの態度はまるでそこで全てを諦めてしまっているように思えて。

 最初は、それでいいのかなあ、と気がかりにしつつも、いずれは変化して行くものなのだと信じていた。

 彼の態度も、私達の関係も。

 けれど半年というときが経過した今、変化したのは私の願望だけ。

 あんなに幸せだと思っていたのに、この関係が最良だとは、いつの間にか思えなくなってしまったから。

 何故こんな贅沢になってしまったのか、わからない。

 紙切れ一枚の、確約が欲しいだなんて。

 一方的に願うのは浅ましいことだとわかっている。わかっていても、止められなかった。

 ずっと側にいたかった。もっと側に行きたかった。

 何度か、カマをかけたこともある。先生達の結婚を話題にしたり、結婚情報誌を書店で眺めたり、……ささやかな行為だけれど。

 しかしそれも全て肩すかしで終わって、私はようやく核心に気付いたのだった。

 神保さんは、本気でもう、これ以上の幸せを諦めてしまっているんだって。


***


 仙台から地下鉄に乗り換え数駅先、最寄りの駅でタクシーを拾う。

 目的地の住所は、おばさまから電話で教わったもの。手帳にはひらがなでメモをしてあったから、それをそのまま運転手さんに告げた。

 やはりいっぱいいっぱいだったから、かかった時間や詳細は覚えていない。

 けれど、神保さんの実家に辿り着いた時、東京を出発してからすでに四時間あまりが経過していた。

 広瀬川という比較的大きな河川の脇に寄り添う土地。そこに佇む一軒家は、和風ということもなければ目立って洋風ということもない、よくある二階建ての住宅だった。

 すぐ側には高層マンションが聳えているものの、一本道を逸れれば日本の原風景が垣間見える。やさしい街だな、と思った。人望舎のオフィスがある街と少し似ている。

 タクシーを降りた途端、黒いランドセルを背負った集団とすれ違って、その後ろ姿にふっと彼の背中が重なった。

 ここで神保さんが育ったんだ。

 やっぱりやんちゃだったのかな。それとも大人しく絵ばっかり描いていたとか?

 想像すると微笑ましくて、しばし見送ってしまった。


「わざわざありがとうね、こんなところまで足を運んでもらっちゃって」


 いいえ、と言ったつもりが、出たのは掠れたため息のようなものだった。

 通されたリビングは外観から想像したより新しくて広い。

 おばさま曰くリフォームしたばかりなのよ、とのことで、神保さんもまだ知らないらしい。


「いつもありがとう。克之に、良くしていただいてありがとうございます」


 テーブルの上にお茶が揃うと、ふたりは共に深く体を折って私に頭を下げた。やめてくださいとお願いしても、一向に上げてはくれない。

 恐縮のあまり、ソファにへばりつくようにして、こちらこそと頭を下げた。

 そこで、足下に置いてある東京バナナに気付いて飛び上がる。うっかりしていた。


「あっ、ど、どうぞこれ!」

「そんな、気にしなくても良かったのに」

「いえ、お口に合えば嬉しいんですが」

「ほんとうにありがとう。本宮さんのようないい子がお付き合いをしてくださるなんて、あの子には過ぎた幸せだと思っています」

「と、とんでもないです」


 とんでもないです――。

 否定せずにはいられなかった。彼に微笑まれた時の気持ちが蘇ってくる。

 過ぎてなんかいない。神保さんの幸せは過ぎたものなんかじゃない。

 彼の諦めをご両親にまで肯定されているようで、不安、というよりもっと、切迫した気分になった。

 と、世間話も大して挟まぬうちに、おじさまは真剣な顔つきになってこう切り出した。


「本宮さんはまだお若いでしょう。だからこの先、無理をしてまで克之の限られた世界に付き合うことはないんですよ」


 なにを言われているのか、わかったから血の気が引いてしまった。

 耳のことだ。神保さんのそれが、私にとって負担になるんじゃないかとか、つまり、そんなことが言いたいらしかった。


「わ、私は、無理して側にいるわけじゃ」

「ですが、ご迷惑も沢山おかけしているでしょう」

「いえ、迷惑なんて一度も」

「好いて下さるのはありがたい。私達も親として、息子の幸せを願いたい。出来る限り長く本宮さんには連れ添っていただきたいと思っています。とはいえ、あなただってご両親にとっては大切なお嬢様、無理強いはできませんから」


 率直に申し上げておきたいのです、とおじさまは言って膝の上で両手の指を組み合わせた。


「息子のことは、選択肢のひとつだと思っていただけたらそれでいいのです。耳のことを理由にあなたが克之から離れたとして、誰もそのことは責めませんから」


 どうにかかぶりを振った私は、なにもかもがぎこちなかっただろう。

「い、いえ――」口を開いたら、顎がかすかに震えていることに気付いた。


「わ、私、神保さんのこと、本当に好き、で」


 本当に好きで。

 恋人間では何より大切な言葉も、この場面では滑稽なほど薄っぺらに思えた。


「だから、迷惑なんかじゃなくて。だ、大丈夫なんです」


 なんて子供っぽい、ありきたりな言い分。

 正確に理解してもらおうとすればするほど、それは、上手に姿を消してしまう。

 感情ほど不確かで、説得力に欠けて、根拠にならないものはないなと思った。


「そうはいうけれどもね。……夫婦として、ならまだいい。もし親になるとしたら、あなたはそれ相応の覚悟と負担を強いられることになるんですよ」


 もう覚悟しています、とは思っていても言えなかった。

 そんな、オウム返しみたいな答え、幼児にだってできる。

 いっときのものだ、と言われてしまったらもう、本当に返す言葉がなくなってしまう。

 おじさまの顔に神保さんの面影が見えて、ふっと視界が緩んだ。


――あの、笑顔の意味。


 不安だと思うくせに問い質せなかったのは、こんなふうになってしまいそうで怖かったからだ。

 説得、出来る自信がなかったからだ。

 私はなんて弱いんだろう。なんてちっぽけで、なんて思慮が足らないんだろう。……情けない。

 どうやってこの気持ちを理解してもらったらいいのか、わからない。

 わからない……。


「……本宮さん、泣かないで」


 おばさまがボックスティッシュを差し出してくれて、ようやく、自分が泣き出してしまったことに気付く。


「今すぐに別れろと言っているわけじゃないのよ。ただ、私達のわがままであなたを不幸にするわけにはいかないの。それだけは、わかってもらえたら」


 不幸、を否定したくて唇を開きかけたけれど、ぐずぐずの鼻声しか出て来ない。

 その声を聞いてますます悲しくなって、私はひとしきり泣いた。

 理解してもらえないことより、自分が何も出来ないことが歯痒くて、悔しくて、たまらなかった。

 ふたりはそろって私の背を撫でてくれる。だから余計に、駄々をこねるようなことも出来なくなってしまって。

 その間もずっと考え続けたけれど、彼らを説き伏せられるような言葉なんて、ひとつも思いつかなかった。

 私の涙が落ち着いた頃、おじさまは神保さんの小さな頃の話を聞かせてくれて、小学生の頃に描いたという水彩画も数点見せてくれた。


 天才の片鱗というのかな。


 それは画面からはみ出すくらいダイナミックで生き生きしていて、けれど上品にまとまっている。

 なかでも、星空の絵は現在の画風に通じる温かみがあって、気に入ってしまって、携帯電話で一枚だけ写真を撮らせてもらった。

 今日の思い出、にするのは悲しすぎるから、今度は神保さんとふたりで見るんだ、と自分を奮い立たせた。

 お夕飯もごちそうしてくれるとのことだったけれど、予定があるので、とお断りした。

 食べられる気がしない。

 朝食もランチも食べずに来たのに、空腹感はまったくない。胸に、何か詰まってしまったみたいに、苦しくて。

 おじさまは新幹線の時間に合わせてタクシーを呼んでくれて、私はタクシーを待つ間、側の広瀬川まで歩いた。

 夕暮れの空気は暖かい色なのに冷たい。しゃくりあげて、目尻に残っていた涙をぬぐって、土手をのぼった。

 耳のすぐ側で、風と、水音が混じってきこえる。

 神保さんも聞いていた音なんだろうか。瞼をおろして、少しの間、耳を澄ませた。


「おねーさーん!」


 呼ぶ声にはっとして顔を上げる。昼間の小学生が、そこでキャッチボールをしている。


「危ないよ、そんなところでボケッとしてたら」

「え、あ、ごめんね」


 慌てて土手を引き返そうとして、投げ捨てられたランドセルを目にし、ふと思った。


「……学校、この近くなの?」

「うん、そこ曲がって、まっすぐだよ」


 振り返ると、住宅街の中に四角くて白っぽい、校舎のような建物が垣間見えた。多分あれのことだ、小学校って。

 と、同時にタクシーが大通りから滑り込んできたのが見えたので、私は慌てて土手を駆け下りる。

 駄目だな、すぐぼんやりしちゃって。

 そうして、神保さんのご両親に見送られながらその場を後にしようとしたのだけれど――。


「おじさま、危ないっ!」


 咄嗟に、乗り込んだばかりのタクシーから飛び出したものの、間に合わなかった。


「うわ!」

「おとうさんっ」


 なんと、小学生達が放った野球のボールがおじさまの側頭部に直撃してしまったのだ。

 うずくまったおじさまに駆け寄ると、おばさまはうろたえていて、どうしたら良いのかわからないといった体だった。

 すぐさま彼らをタクシーに乗せ「一番近くの病院までお願いしますっ」運転手さんに告げる。

 行き先が変わったことで方向転換を余儀なくされたものの、運転手さんは大慌てで車を走らせてくれた。

 診察の結果は軽い脳しんとう、とのこと。

 診察室から出てきたおばさまはホッとした様子で、私の肩からも力が抜けた。

 大事には至らなかったから、すぐに帰宅することが出来たのだけれど、新幹線には乗りそびれてしまって。

 それに、おばさまが心細そうに見えたら、そのまま何事もなかったかのように東京へ戻るなんて出来なくなってしまった。

 そこで私は一晩、神保さんの実家でお世話になることにしたのだった。

 夜になると、小学生達が親御さんと共に謝罪にみえた。

 何ともないですよ、とにこやかに対応するおじさまは、やはり神保さんのお父様というか。

 彼が優しいのは、きっと、血筋だ。

 そんなことを考えながら、その夜、私はほんの少し温かい気持ちで眠りについたのだった。

 だからだろうか。布団は、気のせいか神保さんの香りがした。


***


「それで昨日は欠勤だったんだね」

「うん。でも怪我はたいしたこと無かったから、昨日は一日のんびりさせてもらったの。手料理もごちそうになっちゃったし」

「そっかあ」


 いっちゃんが休むなんて珍しいと思ったんだ、と杳は納得した顔で私にコーヒーのお代わりをくれる。

 杳は男のひとだけれど、細やかなところに気がつく女房タイプで、私なんかよりずっと料理も上手い。

 仙台から帰って翌日、私はお土産のずんだ餅を持って勤め先である小野原デザイン事務所に出社していた。


「それで、神保さんは何て?」


 先生――小野原先生は体を半分ひねって長い足を組む。

 タイトなミニスカートから、太ももが半分ほどあらわになった。

 杳がそこから焦って視線を逸らすのがわかった。婚約までしているのに、純情だなあと思う。


「えと、神保さんには伝えてないんです。おじさまが、心配かけたくないから言わないで欲しいって」

「ふうん、それでいいの?」

「はい、神保さんもちょうど忙しいみたいですし。もう少ししてから自分で伝える、っておじさまもおっしゃってて」

「そう。ならいいけど……」


 順番が逆よねえ、と先生は頬杖をついて呆れ顔になった。


「逆、ですか」

「ええ。だっていっちゃん、まだ神保さんの部屋に一泊したことないんでしょ。それで実家に泊まるとか、普通逆じゃないの」

「……そうですよね」


 小さくなった私に、杳がフォローをくれる。


「でも良かったね、神保さんのご両親と仲良くなれて」


 本当のことは言えそうになかった。まさか、ご両親に神保さんとの将来をやんわり否定された、なんて。


「あらやだ、ふたりして同じような手口を使う気?」

「同じ手口って……もしかして杳も先生の実家に行ったことがあるんですか」

「ええそうよ。勝手に婿入りの約束を取り付けてきてたのよ。ねえ、杳」

「人聞きが悪いですよ惟さん。僕、あなたがもうお見合いさせられないように、って背水の陣で直談判に行ったのに」


 そんなことがあったのか。

 泣きそうな顔になった杳のほほをつねる、先生の手は優しい。なんだかんだ言って、ふたりは妬けるほど仲がいい。


「ま、でも神保さんもここまでくればアッパレよ。こんなに可愛い子が彼女で、指一本触れないなんて聖人の域に達してるわ」


 私が可愛いかどうかも含めて、疑問には感じたけれど黙っていた。

 先生のなかにある神保さん像は、ほんものの神保さんと少し違うような気がして。

 聖人、ってわけじゃないんじゃないかな。

 彼が私に触れない理由は、将来のことを口にしない理由と同じなんじゃないかなって――思うから。

 歯磨きをしてから席に戻ろうとすると、ポケットで携帯電話が震えた。


《いつかちゃん、おはよう》


 神保さんからの、遅い朝のあいさつだった。


《おはようございます。もう私、お昼たべちゃいましたよ^^》

《僕、今起きたんだよ。昨日〆切だったから。急に色校も届いたし》

《そうだったんですか。お疲れさまです。あとで何か、差し入れ持っていきますね》

《ありがとう》


 先週のデートは私のほうが忙しくてキャンセルしてしまったから、どこかで穴埋めをしなければと思った。

 すると神保さんは、またしばらく忙しくなりそうなんだよね、とため息が聞こえてきそうな文面を送ってきた。


《今度、人望舎で実店舗を出すんだよ。それで、しばらく手が塞がりそうなんだ》

《店舗ですか!? すごいっ》

《いえいえ、凄くないよ。プロモーションのための期間限定ショップなんだけど、大半の商品が一からの企画だからてんやわんやで》

《どんなものを売るんですか》

《目玉はTシャツかな。生地屋さんとコラボだから、結構いいものが出来ると思うんだ。あと、ちょっとしたアクセサリーとか》

《うわあ、楽しみです。皆を誘って行きますね》


 人望舎のショップかあ。想像するとワクワクする。

 けれど、こうも忙しい神保さんを見ていると――。

 おじさまは自分の怪我のことをますます言いだせなくなるんじゃないかなあ、と思ったら心配になってしまった。

 だから私は、またも週末のデートをキャンセルして、こっそり仙台へ向かったのだった。


***


 神保さんの実家のチャイムは、大きなブザー音が続けて三回鳴る。

 庭にいても聞こえるように最大音量なのだとおばさまはおっしゃったけれど、庭は玄関より前にあるから意味がないんじゃないかなあ。

 おじさまは家庭菜園をしていらっしゃるらしいのだけれど、生えてきた芽を間引くのが可哀想でできなくて、毎年荒れてしまうのだとか。

 なんて微笑ましいんだろう。

 ご両親のことを知れば知るほど、息子である神保さんの原点を垣間見るようで、私はつい嬉しくなる。

 嬉しくて、胸がいっぱいになって、全身がじんわり温かくなって――泣きたくなる。


「遠いのにわざわざ来てくれなくても、電話で良かったのにー」

「いえ、こちらこそ連絡もなしに押し掛けてしまってすみません」


 頭を下げると、「いいんだよいつ来てくれても」とおばさまが焦って言い直す。

 おじさまはそれを「それじゃあ言ってることが逆だろう」とやんわり叱った。

 あれ以来、おじさまの怪我は痛むこともなく、腫れもすっかり引いたらしい。

 よかった。痕らしき痕もない患部も見せてもらって、胸を撫で下ろす。

 勢いで訪ねて来てしまったものの、それさえわかれば他に用事があるわけでもない。

 気を遣わせないうちに、そうそうに失礼しようとすると、ふたりはもうすこしここにいたら、と誘ってくれた。


「そうだ、街中を案内しようか。デパートとか――、ねえおとうさん、こないだ行ったお寿司屋さん、何て言ったっけ」

「いえ、とんでもない! お見舞いにきてお手間をとらせては本末転倒ですっ」

「でも克之でさえあまり帰省しないし、若い子が遊びにきてくれるなんて珍しいんだもの」


 そう言っていそいそと支度をととのえるおばさまを見ていると、ああ、本当は嬉しいんだなぁ、なんて感じた。

 おじさまも無言で車庫から車を出してきてくれる。

 結局、断りきれず後部座席に乗り込んだものの、お金を使わせるようなことだけはできないなあと思い、私はあれこれ考えを巡らせた。

 ふと、思い出す。

 先週住宅街の向こうに見えた白い建物と、小学生のランドセルを。

 そうだ、あそこなら元手もかからないし、きっとそんなに遠くないよね。


「……あの、ご迷惑でなかったら、なんですけど……、神保さんが通っていた小学校、見せていただけないでしょうか」


 おふたりは面食らったような顔を一瞬して、ああうん、と頷いた。


「中までは入れないかもしれないけど校庭は覗けたと思うなあ」


 行ってみれば、おじさまの言葉通り、小学校は門扉が閉まっていた。

 近年、学校の警備って厳しくなっているのだとか。私が通っていたころとは違うんだなあ、としみじみ感じてしまった。

 けれど、格子の隙間から内部を覗くことはできた。

 真っ先に思ったのは、校庭が広いということ。

 それに、土がむき出しのままひろがっているのは、都会育ちの私にとってとても珍しい光景だった。


「こんな場所で良かったのかい。もっとこう、繁華街とかデパートとか、案内するのに」


 おばさまは残念そうに言ったけれど、私は嬉しくてたまらなかった。

 幼い頃の神保さんが見ていた光景が目の前にある。

 つい、じいっと眺めてから耳を澄ませて大きく息を吸い込んだら、緑のざわめきと土埃の匂いがした。

 神保さんのことを知ると嬉しいのは、その都度、彼の核心に近付くからだろうか。

 距離が縮まった感じがするから、こんなにあたたかい気持ちになれるのだろうか。


「ありがとうございました」


 その足で駅まで送ってもらった私は、改札の前で頭を下げた。

 おばさまは足が悪くて階段の上り下りが辛いらしく車で待機中だ。それで、構内まではおじさまがついてきてくれたのだけれど。

 彼は気まずそうに目線を泳がせて、頼みがあるんだよ、と言う。


「――もう、来ないでもらえないかな」

「えっ?」


 全身の血が凍り付いたみたいだった。来ないで、って、どうして。

 青ざめた私を見、おじさまは申し訳なさそうに俯く。


「前回はこちらからお呼び立てして、勝手を言うようだが」

「い、え」

「本宮さんのことが嫌いなわけではないんだ。むしろ、嬉しいから戸惑っている。逢えばもっと話したくなる。すると家内も私も克之の相手はあなたしかいないとさえ、思ってしまって」

「……おじさま」

「期待してしまうんだ。このさきもあなたが、息子の側にいてくれることを、期待してしまうんだよ」


 涙ぐむおじさまを見たら私はやはり、何も言えなくなってしまった。私は神保さんの隣にこれからもいたいと思う。だけど、神保さんの気持ちはわからない。

 わからないから――。


***


「おかえりー、え、いつか!?」


 仙台帰りの私を玄関で出迎えてくれた母は、いつものエプロン姿でぎょっとして目を剥く。

 見慣れた光景が涙の向こうで滲んでいる。

 どうしたの、と問う母の胸に飛び込むようにして息を吸い込むと、ひいいっく、としゃくり上げる声が漏れた。


「おかあさん、……っ」


 包み込んでくれる腕が優しくて、私は少しの間、そこに縋って泣いた。

 こらえきれなかった。本当は自分の部屋で、ひとりになってから泣きたかったのだけれど。

 これまで、家族に神保さんの話をしたことはない。

 彼氏がいる、とは言ってある。けれどどんな人間で、どんな付き合いをしているのかは伝えていない。

 頑なに避けていたわけではないけれど、全てを打ち明ける勇気もなかった。

 反対されたらどうしよう、と不安で。

 私は神保さんを完璧だと言いながら、その実、心の奥底ではそうではないと思っていたのだろう。

 最低だ。


「どうしたの。彼氏と喧嘩でもしたの?」


 母は私を抱き締めている手で、背中をとん、とん、と叩く。

 一定の間隔をおいて、ゆっくりと、まるで引いては返す波のように。

 幼い頃、そうしてもらって眠ったことを思い出したら、また泣けた。


「……話せることなら話して? 無理に、とは言わないけど」

「ううん、無理じゃ、ないよ」


 話さなければと思った。

 相談に乗ってもらいたいわけでも、打ち明けてすっきりしたかったわけでもない。

 自分の両親すら説得できていない私の言うことを、彼の両親が信用するはずはないと思ったから。

 リビングのソファまで移動すると、私は神保さんのことを、彼の耳のことを、全て打ち明けたのだった。

 驚くかと思いきや、母はほっとした様子で「よかった」と言った。


「いつか、彼氏が出来たとか言いながら外泊もしないし電話をしている様子もなかったでしょう。だからね、私、てっきりあれじゃないかと思って、はらはらしてたのよ」

「あれ、って」

「あれよ。道ならぬ恋。相手の男の人に、家庭でもあるんじゃないかってね」

「そんなこと考えてたんだ……」

「やだわ、もう。真剣に悩んでたんだから」


 母は手を口に当てて、恥ずかしそうに笑う。一緒になって笑うと、おかしいはずなのに目頭が熱くなった。

 余計なことに、気を揉ませちゃったな。


「でもいつか、順番が逆だと思うのよ」


 どこかで聞いたような台詞を言って、母はホットミルクを作ってくれた。


「親を大切にしてくれるのは有り難いわ。でも、一番は本人達の気持ちでしょ。あなた、まずは神保さんときちんと話しあわなきゃ」

「……そう、だね」

「そうよ。だけど、あんまり強引に結婚を迫ると男の人は逃げたくなるらしいから気をつけないとね」

「うん。ありがとう、おかあさん……」


 翌朝、父の書斎の前を通りかかると、パソコンのディスプレイに『初めての手話』というサイトが表示されていた。

 母が伝えてくれたのだろう。……神保さんは手話なんてほとんど出来ないけれど。

 とはいえ、予想外の歓迎ムードに、もっとはやくに話しておけば良かった、と後悔してしまった。

 そして、これ以上後悔しないためにできることはひとつしかないと気付いたりもした。

 私は、私の気持ちをきちんと伝えなきゃ。

 逃げるのは、もう、やめにするんだ。


***


 すると、その一時間後だった。神保さんのお母様から、緊急の連絡が入ったのは。


『お、おとうさんが倒れたの! 克之には連絡がつかないし、私、どうしたらいいのか』


 電話を切るなり事務所に欠勤の連絡を入れて、新幹線に飛び乗った。

 神保さんにも何度かメールを入れ、杳から人望舎にも連絡をしてもらったけれど、やはりなしのつぶてで。

 店舗準備のために総出で現地に詰めているらしい、とは、先生が教えてくれた。

 明日は代休で私とのデートの約束があるから、神保さんはそのためにも頑張ってくれているのだと思う。

 うろたえていると、時間が出来たら直接伝えに行く、と杳が言ってくれて、私はちょっとだけ心強い気持ちで三度目の仙台に辿り着いたのだった。


「か、風邪薬ですか」

「ああ。水を大して飲まずに服用してしまって、それが良くなかったらしい。くらくらしてね。それをまったく、うちのがおおげさに騒いで……」


 おじさまは床の中で、きまり悪そうに後ろ頭をかく。おばさまは何度も「申し訳なかったねえ」と頭を下げた。

 要するに、たいしたことはなかった、ということらしい。


「本当にごめんなさいね、動転しちゃって、昨日の今日で呼びつけちゃって」

「いえ、ご無事で良かったです。本当に」


 ほっとしたら、昨日おじさまに言われたことが耳の奥に蘇ってきた。

 そうだ、私はもう来るなって言われてたんだっけ。だけど緊急だったし――でも、断ったほうがよかったのかな。

 早々に帰るべきか、それともきちんとお話をするべきなのか、迷ってしまう。

 でも、やっぱりまずは神保さんとふたりで話し合うのが先だよね。

 無言で気まずい空気の中、そんなことを考えていたら玄関で大きな音がして、おばさまが顔を上げた。

 するとそれは騒がしい足音にかわり、直後――

 スパン! と一気に襖が開け放たれたのだった。

 驚きのあまり、私は肩を跳ね上げる。

 と、そこに姿を現したのは、


「じ、神保さん……」


 血相を変え取り乱した様子の、彼だったのだ。

 杳から様子を聞いて、飛んで来たらしかった。


***


 並んで土手の中腹に腰を下ろし、ふたりで広瀬川を眺める。

 平日の昼間だからなのか、ひとけはあまりない。当然のことだけれど、小学生たちの姿もない。

 そんなことはおかまいなしに、川はただ流れていく。決して、変わっていくのをやめない。

 なのに、時間が止まってしまったような、不思議な錯覚。

 私は自分の携帯電話にひとこと打ち込んで、神保さんに手渡した。


《驚きました、よね?》


 愚問だろうけれど。でも、他にどうやって会話のきっかけをつくったらいいのか、わからなかった。

 神保さんはひとつため息をはいてから、自分の携帯電話を取り出す。

 それを開いたまではいいけれど、返事を打ち込む速度は、いつもより少し遅め。

 何度も考え込んで手を止める様を見ていると、悪いことをしてしまったなあと思う。


《そりゃ驚くよ。君の様子がおかしいことにはうすうす気付いてたけど、まさか僕の実家に通ってて、しかも将来の話までしてたなんて》


 混乱が滲み出た文章を見せられて、私は思わず頭を下げた。


《ごめんなさい。ご迷惑、おかけしてしまって》

《いや、迷惑をかけたのは僕の両親のほうだから。だけど》

《だけど?》

《僕はてっきり、いつかちゃんに嫌われたのかと思ってひやひやしたよ。急によそよそしいから》


 もう一度、ごめんなさいと言って謝った。

 確かに、私の一番の落ち度は、彼に事情を伝えなかったこと。

 忙しそうだから、と遠慮していたけれど、かえって気を揉ませて、貴重な時間を奪っていたのかもしれない。


《もういいよ。……とはいえ、ショックが大きくて立ち直れそうにないなあ》

《すみません。今度から、隠し事はなしにします》

《そっちじゃなくて、僕の両親のこと》

《お怪我なさったことですか》

《ううん。両親が、君に伝えたこと。まさか、僕より先に結婚の二文字を出されるなんて、想定外だったよ。しかも、反対されてたなんて》


 困った様子でうなだれる彼に、かける言葉はなかった。どう考えているのか、わからなかったから。

 不安になっていると、数分後、彼は思いきったように顔を上げた。

 そうして、バッグから取り出したのは愛用のスケッチブック。

 普段、仕事のアイデアを書き留めるために使っている、A5サイズのちいさなものだ。

 ページを捲り、そこに何かを書き留める顔は真剣そのもの。仕事だろうか。

 うちの先生もしばしばこうやって、会話の真っ最中に「閃いた!」とか言ってメモをとりはじめるけれど、やっぱりみんな、この職業の人は同じことをするものなのかな。

 だとしたら、私はここにいないほうがいいんじゃないかな、と腰を浮かせた瞬間、目の前にそれが差し出された。

 覗き込むと、受け取って、と言いたげに揺らされたので、両手で受け取った。


《本当は、出来上がってから渡したかったんだけど》


 そんな文章のすぐ下には大きな矢印が描かれている。捲って、ということなのだろう。

 私はそれを、会話の続きのように何気なく、本当に何の予測もせずに捲って、固まった。


「え」


 真っ白な画用紙の上に、ある、アクセサリーのデザイン画が描かれていたから。

 空洞の円。

 それは上部に向かって緩やかに淵の太さを広げていて、最も太い部分はオーバル状になっている。

 そこに、幾重にも連なるようにして埋め込まれているのは、ちいさな石。

 外に向かうにつれひろがり、茶から黄へのグラデーションを描くそれは、モザイク画の花びらのよう。

 薔薇か向日葵か、判別はつかないけれど、綺麗だ。

 と、紙の右下の『別注/一点/イニシャル刻印“K to I』という添え書きをみつけて、はっとした。


 これ、まさか私に。


 咄嗟に彼を見ようとすると、携帯電話が鳴った。メールの着信だ。

 こんなときに誰だろう。

 無視しようと思いつつもサブディスプレイを確認すると、意外なことに『神保さん』の文字。

 不思議に思いながら開いてみる。

 そこには、たった一行、


《僕の奥さんになってくれる?》


 と書かれていた。


「どうして……」


 突然、こんな。

 手元のスケッチブックと、携帯電話を交互に見つめる。信じられない。

 神保さんはいつもどこか諦めているふうで、私との将来の話にも消極的で、だからこんなこと、少しも考えていないと思っていた。

 これまでだってそんなそぶり、少しも見せたことはなかったし、むしろ、現状維持でかまわないようにしか――。


《これ、いつから》


 震える手でそれだけを打って、返信した。動揺してしまって、直接画面を見せる気にはなれなかった。

 だって、突然すぎる。

 次に逢ったらこのこと、ちゃんと聞こうと思っていたのは私のほうなのに。


《注文したのは半月くらい前かな。ほら、オープンするショップの商品、あれにアクセサリーってあったでしょう。それと一緒にね。で、開店当日にプロポーズしようと思ってた》


 そういえばそんなこと、聞いた気がしないでもない。

 急いで返信を打ち込もうとすると、掌が冷や汗でびっしょり濡れていた。


《でも神保さん、結婚の話になるといつも消極的だったから、てっきり考えてないんだと》

《ええ? 最初から考えてたけど。消極的だった? 僕が?》

《はい。あの、こんなことを言うのもあれですけど》


 どうしようかな。言っていいものかな、こういうの。

 迷ったけれど、正直に伝えることにした。母との、誤解がとけたときのことを思い出したから。


《……夜も早めに帰してくれますし》


 案の定、彼は目を丸くして驚いていた。大胆なことを言い過ぎたかな。

 と、慌てた様子で神保さんは携帯電話に齧りつく。


《それは、だって、いつかちゃん、ご両親のことに話が及ぶと決まって急に黙るから。厳しいのかなあとか思って。だったらちゃんと、順序を守らないとって》


――えっ。

 思わず口元を押さえてしまった。両親のこと!?

 確かに、神保さんのことを詳しく話していない、というのは後ろめたかったけど。

 私、黙ってた? 覚えてない。


《なんだかもう、拍子抜けです……》


 送ったら、彼からは正反対の言葉が届いた。


《僕はまだ緊張してるけど》

《どうして?》

《君、忘れてない? 僕がさっき、何を言ったのか》


 ちらと見遣ると、神保さんは複雑そうに表情を固めていた。

 あ。膝の上のスケッチブックを思い出し、私は肩をすくめる。そうだ、プロポーズ、されたんだっけ。

 突然照れくさくなってきて、思わずうつむいてしまった。

 どうしよう。私、そもそもどうやってこのことを彼に伝えようとしていたんだっけ。

 心臓はせわしなく動くのに、頭はもう働かない。

 どうしよう。どうしよう。

 迷っていたら、無防備な左手を、彼の体のすぐ横に見つけた。所在なく、草むらにポンと置かれている。

――勇気を出さなきゃ。……出さなきゃ。

 衝動的に、それを掴んだ。

 すると見開かれた彼の目には、出会った時と同じく、宝石みたいな茶褐色の虹彩が見えて。

 離したくない。一生この目をみつめていたい。

 そこで決意を持って、私は大きく頷いた。


「……私で、良かったら」


 こんなわたしでよかったら、あなたのそばにずっと置いて下さい。

 伝わったのか、神保さんはほっとしたように私を抱き締めてくれた。

 優しい熱が染みてきて、私の肩から余計な力を奪ってくれる。

 安堵と同時に涙が滲んできて、私はそれを零さないように、とっさに瞼を下ろした。

 と、一瞬、ほんの一瞬だけ、唇にあたたかなものが被さって。

 気付いたら、彼の笑顔が間近にあった。


「神保さ」

「……好きだよ」


 いつかと同じ言葉を紡ぐ、唇が愛しい。

 どこかたどたどしくて、少しぶっきらぼうで、言い慣れていない感じがして。

 だけど、だから、その本質がちゃんと届くような気がする。


 手を繋いだまま、土手をのぼった。


 川の流れを斜めに見下ろしたら、何故だか、彼が耳を澄ませているような気がした。

 掌に、ぎゅっと力を込めてみる。

 直後に握り返されて、また、握り返して、競争になった。

 波みたいだ。掌から潮騒が聞こえてくるみたい。


《小野原さんに話すことが増えちゃったなあ》

《ですね。先生、またびっくりするかも。順番が違うわよ、って》

《順番? 守ってるつもりなんだけど……どこか違ったかな》

《先生にとっては真逆なんだと思います。神保さん、真面目すぎますよ》

《そうかな。まずはとりあえず、僕の父と母を驚かせに行こうか》

《はい》

《それで、帰ったらいつかちゃんの家にご挨拶にいかせてもらわないと》

《はい。お待ちしてます。実はうちの父、神保さんの為に手話の練習してるんですよ》

《えっ。それはまずいなあ。僕、おはようとおやすみしかできないのに》

《ふふ。それ、私に教えてくれませんか》

《うん、いいけど、どうして》

《今日と明日、言う予定だから、です。だめですか》


 見上げたら、神保さんはこれまでで一番、奇妙な表情をしていた。困ったような、嬉しいような、複雑な。


《だ、駄目というか……、もう……君は可愛すぎるよ》


 神保さんこそ。

 そういう純情なところ、なんだかちょっとかわいくて、好きです。


<fin.>

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