130. 異変の後
それからひばりは、自分の胸元に勝手につけられたポメラニアンの顔をしたブローチの口元から黄色のフィロソファストーン(PS)を外そうとした……が、ひばりが右手を子犬の口元に近づけようとすると、ブローチの子犬が、まるで生きてるみたいに不機嫌にうーっと唸ってひばりを威嚇するので、ひばりはビビって、それ以上右手をブローチに近づけることができなかった。
「ひばりよ。そんなに不躾に手を近づけたりしたら、かわいらしい子犬が怖がって威嚇してしまうではないか。こういう時は、よしよしとその子犬を褒めながら、そっと鼻筋をやさしく撫でてやるがよかろう。そうすれば、子犬も気持ちよく飼い主の手元にフィロソファストーン(PS)を返してくれるだろう。」
ひばりは、不本意ながらもメグの言う通り従うことにした。
ひばりは、かわいいねーとかかしこいねーとか言いながら、子犬のブローチに恐る恐る右手を近づけて鼻筋をそっと撫でてあげると、メグの言う通り、子犬は口元を緩めてフィロソファストーン(PS)をひばりの手元に返してくれた。
そしてフィロソファストーンが(PS)子犬の口元から離れた瞬間に、ひばりの服が桃色の魔法少女ピンククインのコスプレから、魔法少女に変身する前まで部屋で着ていた普段着に戻った。どうやら、ひばりの黄色の魔法少女の変身も自動的に解かれたようだった。
ひばりは、子犬から受け取った黄色のフィロソファストーン(PS)を、そのままつかさに手渡した。
つかさは、ひばりの黄色のフィロソファストーン(PS)を興味深そうに観察した。
「へえー、これが本物のプレシャスストーン(PS)なんだ……なんか、やっぱり本物は違うな。なんかすごい重厚感があって重いし、どことなく高級感があるよね……でも、これがプレシャスストーン(PS)っていうことは……ひばりの6色の魔法少女って5色の魔法少女ともなんか関係があったりするの?」
「いや、まずフィロソファストーン(PS)な!」
メグのツッコミは、虚しくもつかさの耳にはまったく通じなかった。
「うん。実はさ、メグって5色の魔法少女とかとも知り合いなんだって。それで、私達は5色の魔法少女じゃない方の、6色の魔法少女とかってやつなんだってさ。」
「あっ、そうなんだ……」
ひばりもつかさも、そこで残念そうな表情になった。
「いやいや、ちょっと待て。そこはぜんぜん残念に思うポイントではないぞ。私の6色の魔法少女の方が、あっちの5色の魔法少女よりも、明らかに実力は上なのだぞ。」
メグは、二人の態度に明らかに不服だった。
「う――ん……でも、やっぱりこんなすごい石、私は見たことないなあ。」
残念ながら、つかさの方はそんな石にはまったく心当たりがないみたいだった。
「ねえメグ。ほら、つかさそんな石持ってなかったじゃん。やっぱりつかさは桃色の魔法少女じゃなかったんだよ。」
ひばりは、なぜか少しほっとした顔でメグに話し掛けた。
「……いや、そんなことはない。つかさは必ずフィロソファストーン(PS)を持っているはずだ。」
だがメグは、なぜかつかさが絶対にフィロソファストーン(PS)を持っているはずだと確信していた。
「うーん……強情だなあ。」
「なのでひばりよ。つかさにはもう一度、そういう石を最近自分の身の回りで見たことがなかったか、よくよく思い出すように、そう伝えてくれ。」
メグに念押しされて、ひばりは渋々つかさにそう伝えた。
「えっ? そう言われても…… まあ一応やってみるけど……でも、多分無駄だと思うけど……」
そう言って、つかさは、もう一度そんな石をどこかで見たことがなかったか思い出そうとしてみたが、よく考えてもそんな石を見た記憶はなかった……が、徐々につかさは、ひばりのフィロソファストーン(PS)によく似た石を最近どこかで見たことがあるような気がしてきた。
「うーん……あれっ? この石って……確か……どこかで……えーっと……どこだっけ?」
そう言ったきり、つかさは黄色のフィロソファストーン(PS)を握ったまま、その場で一人考え込んでしまった。
「……あっ! もしかしたらあれかも……ひばり、ちょっと待っててくれる?」
つかさは急に声を出したかと思うと、ひばりに黄色のフィロソファストーン(PS)を返すと、そのまま家の中へと入っていってしまった。だがそれから少しすると、再びひばり達の元に帰ってきた。
「やっぱり……多分これだと思うんだけど……」
そう言って、つかさはバスケットシューズが入ったピンクのシューズケースをひばりに渡した。
そのシューズケースは、色合いがピンクで多少派手なのを除くと、どこにでもありそうな普通のシューズケースだったが、その持ち手のところに、ひばりのフィロソファストーン(PS)に似た桃色のキーホルダーが後付けでついてあった。
ひばりは、シューズケースからキーホルダーを取り外すと、そのキーホルダーを手に取って、チェーンがついたその桃色の石をじっくり確かめてみた。
確かに……よく見ると、その桃色の石は、ひばりの黄色のフィロソファストーン(PS)と同じく、独特の重厚感や神秘的な輝きがあって、それがガラス玉だったり、安物の石ころだとはとても思えなかった。
「……この石、確かにひばりのプレシャスストーン(PS)にそっくりなんだけど……でも、どう見てもキーホルダーだし。だから、多分プレシャスストーン(PS)とかじゃないと思うんだけどな……」
つかさが言った通り、それは見たまんまでいうと、真ん中に直接金属のチェーンがぶすりと突き刺さった桃色の石のキーホルダーだった。
だがその時、つかさの桃色の石のキーホルダーを確認したメグが、プレシャスストーン(PS)ではないとつかさにツッコミを入れるのも忘れるくらい興奮して、尻尾をふりふりさせながら満足げな表情でこう断言した。
「いや、この石は桃色のフィロソファストーン(PS)で間違いない。フィロソファストーン(PS)は6色の魔法少女にしか所持することが許されない特別な使命を持った宝石で、歴代に渡って次世代の魔法少女へと連綿と受け継がれ、その手元に確実に渡るよう、その時々の状況に応じて適切な形状に変化するという習性がある。よって、その桃色のフィロソファストーン(PS)は、つかさの手に確実に渡るよう、自ずからそのような形状に変化したのだろう。」
「ふーん。そうなんだ……」
ひばりは、メグからつかさの桃色の石が本物のプレシャスストーン(フィロソファストーン)だと聞いて、少し複雑な気持ちだった。
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