Episode52 決着
(白城side)
人間誰しも生きているなら、チャンスは必ず訪れる。俺は今、そんな千載一遇のチャンスを目の前にしている。手を伸ばせば届きそうなくらい、本当に近くにある。
ゲームカウント3-0であと1ゲーム、あと4点なんだ。お願い神様。お願いだから、俺をレギュラーにしてください。前衛になって約半年、俺は死に物狂いで頑張ってきた。「上達してきたかも」なんて思っていた矢先、新人戦で現実を見せられた。
そこから自分の理想が常につきまとって、離れてくれなかった。練習で納得のいくボールなんて一球もなかった。全部違う気がする。何か新しいことを試さないと気が済まない。
もう結果が全てなんだ。どれだけ上手くなっていようが、勝てないと意味がない。そうじゃないと誰にも認めてもらえない。だから、絶対に勝つんだよ!!
雄星の1stサーブ。センターに決まる。猪野がクロスに打ち返す。雄星は落ち着いてストレートに秦の頭を越すロブを上げる。そのロブに反応して俺は素早くセンターにポジションを移す。その瞬間、なぜか体が勝手に動いていた。いつもビビッて守りに行っていたポジションと同じだった。それなのに、自然と体が動いていた。そしてストレートのボールを締めに行く。
「パァーン。」完璧な落としボレーが決まった。猪野も秦もどちらも反応はしたが足がその場で止まった。この瞬間、何か一つ殻を破ったような気がした。今までの努力がやっと形になったような気がした。
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「ゲームセット」4-0でストレート勝ちであった。あの落としボレーから猪野・秦ペアは勢いがなくなった。最後は秦のレシーブネットであっけなく終わった。
試合が終わり内田さんに報告に行った。「ストレート勝ちか…分かった。」とだけ言ってアドバイス等はなかった。内田さんへの報告が終わると先輩たちが寄って来た。
「白城、やったな!!」と倉田さんが嬉しそうな声で祝福してくれた。「白城、上手だったよ。」と上原さんも褒めてくれた。いつもあまり話すことのない森田さんも「おめでとう。」と言ってくれた。
嬉しいことに柿田さんと久井さんも「おめでとう!」と言ってくれた。
「白城君、ようやくレギュラーだね。」俺は久井さんの顔を見た。
「勝てて良かったです。まだ4番手ですけど、すでにプレッシャーが…」と笑顔で返せた。
「そっか、そうだよね…。」
(うん…?どうしたんだろう、久井さん。)久井さんはすでにいつも通り柿田さんと談笑していた。(気のせいか…)そう思い俺は、木陰に座り込む。勝利の余韻が今になってやってきた。しばらく余韻を一人でかみしめた。




