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君のいない日々はきっとつまらない  作者: 久遠知
冬の日々
50/50

Episode49 幕開け

 ペア練習を終えた後、俺たち1年生はコートの準備に取り掛かる。試合球を準備し、軽くブラシをかけてコートをキレイにする。

 準備が終わったらいよいよ校内戦。俺たちは初戦の大木・岸ペア、2試合目の木場・矢野ペアをどちらも4-0で勝利。あと1勝すれば4番手以内に入れる。

 4番手を懸けた3試合目の相手は、猪野・秦ペア。猪野たちも大木・岸、木場・矢野ペアに勝利している。秦は俺に雄星を取られたことに腹を立てている。試合前の挨拶でイライラしているのが分かった。殺気を感じるほど、目の奥が笑っていなかった。俺も負けるつもりはない。自然と俺も表情が引き締まる。

 トスの結果、俺たちはレシーブを取った。ボールを受け取り、試合前の乱打を始める。秦は初球から思いっきりシュートボールを打ち込んできた。俺は反応が遅れ、ボールに差し込まれ力なくネットに引っかかった。俺がボールを取りに行こうとしたとき、「へい、へい!!」と秦が煽ってくる。

 (なんだコイツ…気持ち悪。)と思いながら俺はボールを拾い上げる。煽ってくる相手にキレてしまったら意味がない。安い挑発には乗らないことが大事なのだ。俺はいつも以上に落ち着いていた。


 「レディー!」審判の声が響く。審判は正審が幸汰、副審は怜人がやってくれる。勝った方がAチームということで試合と審判がない人は全員俺たちの試合を観ていた。

 みんなに見られていると思う緊張して体が硬くなる。深呼吸をしてみるものの、効果はいまひとつであった。気を紛らわせるために意味もないのに周りを見渡す。

 すると久井さんと目があった。久井さんも俺と目が合ったのに気がついて、体の前で小さく拳を握ってくれた。俺はそれを「ファイト。」という意味で受け取った。俺も「頑張ります。」と心の中で思いながら軽くうなずいた。そして俺は完全に試合に集中した。

 「7(セブン)ゲームマッチ、プレイボール。」

 猪野の1stサーブ。スピードはないもののコースを確実に突いてくる。サービスサイドライン上にボールが収まる。雄星はオープンスタンスで対応する。すると秦が動いた。ポーチボレーをするつもりだ。タイミングは完璧であった。しかし雄星は秦の動きを読んでいるかのようにストレートに打ち込む。猪野が必死に走るが当然追いつくことはできない。

 あっという間に1点を取った。「ナイスボール!」俺は雄星のもとへ行き、次のプレイについて話す。


「俺レシーブ、とりあえずクロスに返すわ。」


「オッケー。レシーブの後、最初からストレートのボール取ってくれない?」


「分かった。やってみる。」


 そうして俺のレシーブ。猪野の1stサーブはサイドライン付近に落ちる。俺はそれをバックで引っ張って返す。秦は雄星にストレートを抜かれたから今回は出てこない。俺のレシーブボールがバウンドする時に俺も一度センターライン付近で一瞬だけ止まる。そしてすぐに全力でスタートを切る。

 猪野の打ったボールは狙い通りストレートに飛んでくる。少し高さがあった。俺はハイボレーで猪野と秦の間を狙う。「パァーン!」気持ちい音が響く。ボールはきれいに二人の間を抜けていった。

 「うぉー!」歓声が上がる。俺も完璧なポイントに思わず大きくガッツポーズをして喜ぶ。


「知、ナイス!」雄星も少し興奮している。プラン通りのプレーで点が取れることほど嬉しいものはない。でも俺もずっと興奮しているわけではない。すぐに落ち着きを取り戻す。


「雄星、次どうする?」


「一旦、ストレートに預けようかな。」


「秦、サービスダッシュしてくるからレシーブでサイド突いてみて。」


「秦の方ってこと?」


「そう。秦って動きながらのローボレー苦手だから。」


「オッケー。やってみる。」


 秦の1stサーブはネットの白帯に当たりフォルトとなる。2ndサーブも白帯に当たりはじかれてしまう。ダブルフォルトで1点を取った。

 秦は次のサーブもダブルフォルトであった。思わぬ形で、あっという間に1ゲームを手にした。俺たちは流れに乗って2ゲーム目も取り、ゲームカウント2-0となった。俺たちの勢いは止まらない。

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