148 小話 ルーナの宝物
ルーナの部屋に小さい箱がある。
キラキラとした飾りがついた可愛い箱だ。
いつもルーナの近くにある。枕元に置かれている事も多い。
手に持って、優しく箱を撫でているルーナを見たことがある。
何が入っているのだろう。
気になっていたのだけど、秘密というのは大切なものだから。
その箱を撫でて微笑んでいるルーナが尊すぎて、中身への興味よりも今あるこの笑顔! となっていた。
その箱に、ルーナが話していて興奮したのか、大きく動かした腕が当たった。
「あっ!」
ころりと床に落ちたその箱の蓋が開いてこぼれ落ちたもの。
きれいな石や貝殻や木の実、ボタンだろうか。あと紐みたいなものと一緒にキラキラした金色のものが飛び出した。
んん? この金色、なにか見覚えが。
ルーナの可愛い小さな白い手が、さっとこぼれ落ちたそれを拾い上げて身体の後ろに隠す。
ちらり。こちらを上目遣いで確認したルーナが、視線を下げて言う。
「サキさん、見た?」
頷く。
うん、見えたね。
「ごめんなさい」
謝るルーナに首をかしげる。何か謝られることなどあっただろうか。
「おにいちゃんにだめだって言われたけど一個だけ、一個だけどうしてもって……」
ああ、そうか。見えたのはカ□リーメイトの包装か。
最初は剥いて渡していたのだけど、剥がすと保存性に問題が出るので、途中からそのままジュドさんに渡していた。
そういえば、中身より包装の方がやばい気がしたので取扱注意とお願いした記憶がある。
その包装を綺麗に畳んで結んであったのか。どうりでキラキラに見覚えがあったはずだ。
ルーナの手にあるだけなら。
他の人の手に渡らないのであればそうそう問題はない、と思う。
この包装なら透明でもないし、しかも一個だけならなんだかキラキラするもの、という認識だろう。金箔はこちらにもあるだろうし。
でも印字がちょっとやばいかな。でもまあ。
「ルーナが持ってるだけで、他の人にあげたりしなければ良いけど」
良いけど、なんでこんなゴミを?
「ほんと?」
うん、怒らないよ。大丈夫だからそのふにゃんっと下がった目尻を上げてほしい。
私が再度、大丈夫だよとそう言うと、やっとルーナに笑顔が戻った。
こぼれ落ちた他のものと共に、箱に丁寧にしまわれるその金色の、包装。
もう隠さなくて良いからだろう。箱を開いたまま、その金色をじっと見つめるルーナ。
そんなものをそんなに大事にしてくれるなんて、なんというか。
もっと良いものをいくらでもあげるのに。キラキラしたもの、アクリルのアクセサリーパーツとかどうかな。
そう思って、ルーナに提案したけれど。
「これが良いの!」
そう、言われる。
キラキラとした金色の包装を映し込んで輝くルーナの瞳、その笑顔。
ルーナが可愛い。素敵。ふにゃりと笑うとぷっくり膨らむほっぺたがたまらない。
可愛い。良い。眼福。
思わず、新しくカ□リーメイトを千円リピートで出してルーナに差し出してお供えして拝む。
なむなむ。
なんて尊い宝物。
銀も 金も玉も 何せむに まされる宝 子にしかめやも
脳裏に昔に習った呪文のような和歌が浮かぶ。
うんうん、本当にその通りだ。




