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君は無敵の姫君  作者: violet
31/31

荒れる結婚式

最終話になります。

「だと、思ったのよね。」

婚約発表しかり、祝勝会しかり、レイクリフと正式な場に出るとろくな事ない。

完璧に仕上げたウェディングドレス姿のマーガレットがため息をつく。



空は快晴、晴れてはいるが、風が強い。夜半過ぎから吹き出した風は、日の出前には突風の渦に王都を巻き込んだ。

朝になって明るくなると、災害の状況が判明したのだ。王都を流れる川に架かる橋が2箇所も崩壊し、多数の家屋も損害を受けたようだ、人的被害はまだ把握できていない。

近くの港に停泊中の軍船も甚大な被害の報告が届いた。


父と兄は橋の視察、レイクリフとジルベールは軍船を停泊させた港に行っていない。

結婚式だというのに!


外は早朝程ではないが、強風が吹いている。おさまりつつあるとはいえ、予断はできない。


式に参列する者達も集まりだしているが、何分(なにぶん)この風である。開始時刻がせまっているのに、新郎はいない、招待客もまばらである。

結婚式をする大聖堂の窓からマーガレットが覗くと、街の鐘突塔が揺れているのが見えた。

「塔のレンガが崩れ落ちている!」

強風で傷んだ塔は、直ぐに崩れ落ちるかもしれない。



「鐘突塔が壊れそう、街の人々を避難させなければ!」

ウェディングドレス姿のマーガレットが教会を飛び出し、式後のパレードの為に待機していた馬車の馬を外して飛び乗る。

戦争のヒーローであるレイクリフの結婚とあって、盛大な結婚式が予定されていた。レイクリフの姉は王妃であり、王家も参列することになっている。

式の参列に来ていた数人の貴族男性が馬に飛び乗り、マーガレットの後を追う。


豪華なウェディングドレスのマーガレットは、風に(ひるがえ)らないようにドレスを押さえて馬を駆けている。

慰問に訪れている孤児院に馬を繋ぎ、男性達と塔の近くに向かう。

風に繊細なレースの白いドレスをたなびかせ、礼服の男性達を従えて歩む様は、抒情詩にでてくる女神のようでさえあった。


「私はグラント公爵令嬢マーガレット!

鐘突塔のレンガが落ちてきて、倒壊する危険があります。直ちに避難してください。」

塔の前の広場で風にもかかわらず店を出していた者や、住民達の誘導を始める。

大丈夫だろう、と言う者もいたが、公爵令嬢の指示に逆らう訳にもいかない。

ガラガラ、レンガの落ちる音が大きくなっていく。


弱くなっていた風が一瞬突風になった瞬間、塔が大きな音をたてて崩れ落ちた。

土煙が治まると、店や住居にレンガの塊が直撃していて、大きな穴が開いていた。塔は上半分が崩れ落ちて、中の階段がむき出しになっていた。


音に気付いて駆け付けた自衛団に現場を預けて、マーガレットは孤児院に向かう。

「あら、貴方ケガをしているわ。」

マーガレットが貴族男性に声をかける。

「レンガの破片が飛んできたのです、大したことありません。」

「軍は、未明の突風で被害のあった地域に出動していて、とても手が回らない。我々が動けてよかったです。

今、貴族の誇りを感じてます。」

嬉しそうに言う若い貴族男性達に、マーガレットも返答を窮する。

この結婚式に参列するほどの家柄である、高位貴族に違いない。


「マーガレット姫、数々の噂を聞きますが、貴女は人々の為に動くのですね。」

男性の一人が、マーガレットの行動に感嘆する。

いや、それ違うから、たまたま目についただけだから、マーガレットの言葉は出すことがかなわない。

父の指示を守って、微笑んでおしまいにする。

勝手に想像してくれ。




埃まみれで孤児院に戻ると、馬車で来ていた侍女達がマーガレットを取り囲む。

ドレスの埃を落として、化粧をなおす。教会に置いていったベールを被せ、花嫁姿に戻った。そして連れて行った先は、孤児院に併設する教会、グラント公爵とギリアンが待っていた。


「やぁ、マギー綺麗だね。

さっき橋の視察から帰って来たとこだ。」

ギリアンがマーガレットの手を取り、公爵の元に連れて行く。

「綺麗だよ、マーガレット。」

公爵はマーガレットの手を取ると、自分の腕に回させた。

「お父様。」


公爵のエスコートで向かった先には、レイクリフが立っていた。マーガレットを見ると、眩しそうに微笑む。

その側には、一緒に戻ってきたであろうジルベールと副官のイースがいる。


シスターや子供達に祝福され、レイクリフとマーガレットはその教会で結婚式を挙げた。

参列者は、ジルベール王子、グラント公爵と嫡男ギリアン、イース、マーガレットと共に大聖堂からきた貴族達。大聖堂での絢爛豪華な式ではなかったが、参列者全てから祝福された。

風がおさまった教会の外には、たくさんの市民達が集まっており、二人が出て来ると大きな歓声が沸き上がる。



「私、幸せだわ。」

マーガレットの言葉にレイクリフも余韻に浸る。

これからずっと、マーガレットが幸せに過ごせるようにするんだ!

花嫁姿は言葉にできないぐらい綺麗だ、俺は幸せだ。

「今だから言うけど、貴方って、私の中では評価マイナス215点、早く原点になるように頑張ってね。」

ニッコリとマーガレットが微笑む。

「え?!」

常に主導権を握られているレイクリフには、課題がいっぱい。

がんばれ、レイクリフ。



最後までお読みくださり、ありがとうございました。

1/16~2/21 31話


まだまだ、前途多難そうなレイクリフとマーガレットですが、これで完結とさせていただきます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] みんないいキャラ過ぎて…(*´艸`)フフフッ♡
[一言] 変換ミスと思われる箇所がありましたので報告します。 28ページの 嬉しいという気持ちはあるが、大半は怖ろしいだ。 正しくは 恐ろしい ではないでしょうか?確認お願いします。 いま、2…
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