3 自由すぎる
うふっ
城の中に入るには門番と至る所にいるメイド、執事軍団ををうまく避けて行かなければならない。
これはなかなかにキツめの試練だ。
「よッしャ、ゲームしようぜ、ゲーム。誰が早くこの城にある玉座に座れるか」
「ほぉ?貴様、余に勝てるとでも夢を見ているのか?」
「ァあ?夢だァ?んなわけあるかい。俺が初めに辿り着くに決まッてらァ」
「喧嘩をするな。ルールとしては・・・殺害はなし、敷地内の人間に気付かれ、騒がれたら敗退、この城への被害もゼロにする・・・これくらいか?」
「適当でいいんだよ、暇つぶしのゲームなんだから」
「そうか・・・では、いこうか」
よーい、ドンッ!
リセットはその場から跳躍し、城の頂点に立ち、そこからの侵入を目指すようだ。
キングは姿を消す神具を使い、コソコソと侵入していった。時折モゾモゾと動くスライムを抑えつつなので、速度は遅い。
オリジンは堂々と正面突破。門番に手を振るなど、暴挙に出たが、門番はオリジンがこの城の人間であるかのようにお辞儀をしてスルー。
それから数分。
初めにたどり着いたのはオリジンだった。堂々と正面から侵入し、今も玉座に座り続けている。
これが、集団催眠。ここにいるリセット、キング以外の全ての生物がオリジンが頂点であると疑いなく受け入れるように催眠が展開されている。この城の王も例外でなく、王は玉座の少し前に仮設の玉座を設けて座っている。
いや、なに乗っ取っちゃってんの?
「ふむ、やりすぎたか」
自覚はあるらしい。
今日の晩御飯はカレー。そう決めた時点から少し舞い上がってしまっていたようだ。
人の死角を探して四苦八苦しているリセットと、マントの中で暴れるスライムを押さえつけるのに必死なキングをオリジンと同じ状態に催眠をかけ直すことで回収。なお、キングはスライムの暴挙に困りつつも、宝物庫から幾つかものをパクっている。やることはやるのだ。
ゲームはオリジンの一人勝ちであった。ちな、賞品はない。
「王様ってこんな感じなのな」
「我が家も似たようなものだろう?」
「お前、家系とかねェだろ。ファンタジーの王様には向いてねェよ」
「現代風王だからな」
「へいへい」
よくこんな場でそんな馬鹿な会話ができるな・・・さすがは脳筋と脳金である。
たいして、王様気分を存分に味わったオリジンは満足したのか、玉座から離れ、催眠を解除。
「む!?誰だ貴様ら!」
「どこから入ってきた!!」
正面からです。
ネタばらしを終えた三人はいたずらっ子の笑みを浮かべて、その場から転移して消えた。
結局、何をしたかったのか分からない。キングが宝物庫を荒らしただけの時間であった。
「いや〜久々に楽しかったわァ・・・」
「そうだな。新鮮な気持血を味わえた」
「現世では我らが行った先々で悲鳴と絶望のオンパレード。つまらなかったからな」
久々の感覚だ。
え!?誰!?みたいな空気。何者だ貴様!ってやつ。久々すぎる。
三人は気分新たに、元の世界でもうひと暴れすることを決めた。――元の世界で。
◇◆
「・・・なぜ奴らが・・・帰ってきているんだ・・・?」
分からない。
国家の裏支配者たちが集まる会合。秘密裏に行われる密会だ。国の支配権を握る金の支配者たち。毎日が豪遊、が合言葉な彼らの表情は暗い。
奴らが帰ってきた。
無論、奴らである。
奴らの生体反応が消えた瞬間、この会議場は大歓声に包まれたのだが、なぜか復活した奴らの生体反応に今やお通夜状態である。
「万の能力者でも足りんのか!!」
「それはあんたの国が渋ったからだろ!?」
「そもそも手を出すべきではなかったんだ!」
「それこそおかしな選択だ!奴らを消さねば世界が消えるぞ!」
やり場のない怒りを他国にぶつける。どうにもならない事だから誰かに責任を与えたい。国のトップがそれで大丈夫なのか・・・。
「何とかせねばな・・・」
まぁ、なんとかできる存在なら既に彼らは死んでいるのだが。
よろしくお願いします