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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
最終章 吾輩は怪盗である。故にキミを盗む
80/80

エピローグ ボクはやっぱり怪盗である。

☆☆☆


 吾輩は怪盗である。


 名前はエミリアという。


 誰も知らないところで生まれ、誰も知らないまま育っていたが、気が付けば宇宙で有名になっていたのである。


 女々しすぎる相棒と、可愛い相棒と共に、宇宙に存在するお宝を盗んで回っている。


 これは我々の日常をつ

















☆☆☆


「――んにゃっ!?」

「何を書いてるんです?」


 かつてのように、ネロはエミリアの書いていた原稿を取り上げる。


「ん、ボク達の活躍を記した小説さ」


 彼女は真新しいソファの上でふんぞり返る。


「どうよ! これこそがボクの最高傑作! いやー自分の才能が怖いねぇ」

「――小説ですか?」


 サラもチェックに加わった。

 二人は目を合わせてうなずき合う。


 ――ネロは紙の原稿をびりびりに引き裂いた。

 ――サラは保存されていた電子データを跡形もなく消滅させた。


「にゃぁぁぁっ! 何でそんなことしちゃうのさ!? ボクの最高傑作だったのに……」

「誰が優柔不断な天然馬鹿だっ!」

「わ、私だって不幸体質の元オヒメサマじゃありませんよッ!」


 叫び声が部屋中に響いた。

 

 宇宙の中心が消滅してから早1年。

 ネロがエミリアとサラを引っ張ってゲートに飛び込めていなければ今頃全員まとめて消滅していただろう。


 結局、移動手段を失い、どこかの惑星の廃墟を拠点に生活していた。


「なにさ、どれも事実じゃないか」

「何より許せないのは――自分の事を空前絶後の天才怪盗って書いてあるところだよ」

「うっ……」


 盛っていたことがばれてしまいエミリアは縮こまった。


「小説家として生きるなら、もっとリアリティを追及してください」

「はぁ……そういうサラちゃんも、そろそろ恋人に会ってあげないとフラれるぞ~」

「それ言ったら、エミリアさんだって、もう怪盗やらないんですか?」


 もう秘宝を手に入れるという目標もない。

 キラキラを手に入れたいという思いは消えないが、夜の星空を見ていれば満足だ。全部ほしいという傲慢な感情は、所詮与えられた目標でしかないから。

 早い話、情熱を失ってしまったのだ。


「んーそうだな……ボクは引退したからな。この惑星でのんびり隠居するよ」

「とか言って、本当はだらだらしたいだけだろ……」

「それもあるけどなーにゃははははッ!」


 エミリアはいつもの癖で連盟のニュースチャンネルをつけてしまう。


『――て、次は巷で話題の怪盗の話題に入ります』


 聞き捨てならない単語が耳に入る。


『先日、怪盗を名乗る“シャルリア・グレイ”が惑星ロサの宝石“スカーレットレイン”を盗みました。現場にはいつものように――このカードが』


 アナウンサーがホログラム状のカードを示す。


『“スカーレットレインは盗ませていただきます、怪盗シャルリア・グレイ”……挑発的ですね』

『困ったもんですね。連盟政府も体制が変わったばかりですからねぇ』

『専門家によると、この手の犯罪を犯す人物は自己顕示欲が高いと言われていますが――』


 自己顕示欲が高い。

 何気ない言葉に、エミリアのプライドは思いっきり傷つけられた。


『全く持ってその通りですよ。こんなの目立ちたがり屋の大人子供ですって』


 大人子供。

 エミリアのプライドがボロボロにされた。


『そう言えば前にも、似たような犯罪がありましたね』

『うーん、そうでしたかなぁ』

『ほら、あの……あれ、名前なんでしたっけ?』


 エミリアは激怒した。

 実は高かったプライドが、好き勝手言うコメンテーター達に怒りの矛先を向けていた。

 もっと正確に言えば、この話題を生み出したシャルリア・グレイなる人物に。

 だが一度会ったことのある人物であることを、彼女は覚えてはいない。


「――ネロ、サラ」


 久しく聞いていなかった“マジ”の声を聞いたネロとサラは思わず姿勢を正した。


「この好き勝手いうジジババ――っていうかシャルリア・グレイっていう勘違い怪盗に、目に物見せてやるぞッ!」

「……そうだな」

「はいっ!」


 完全に消えていた、エミリアの心に再び火が点った瞬間であった。





















☆☆☆


 警備無し、監視装置も切れてる、すべてを確認したシャルリアは慎重に展示室に忍び込む。

 今回の目当ては“宇宙(ほし)の鼓動”と呼ばれる絵画。

 その名の通り宇宙そのものを閉じ込めたかと錯覚させられるかのような作品だった。

 それをミニライトで照らす。

 絵の中の星々が呼応して瞬きだす。


「それじゃ、いただくとしましょうか――!?」


 額縁に触れた瞬間、それが消滅する。

 慌てて壁をまさぐると、投影機とそれに挟まれたカードを発見する。


『予告通り、お宝は頂戴しました♡ 

 

――怪盗エミリアより愛を込めて』


 エミリア、忘れもしない名だ。

 人を散々おちょくるだけおちょくって、遂に姿をくらませたにっくき(自称)怪盗だ。


「やりやがったわね――っ!」


 シャルリアはカードをくしゃくしゃに丸めて床に叩きつけた。

 そのせいで折角オフになっていた警備装置が作動してしまう。


「あ、」


 警報がけたましくなる中、彼女は叫んだ。


「ふざっけんじゃないわよあのクソババァッ!!」

















☆☆☆


「――んっふっふ……宇宙(ほし)の鼓動、横取り成功っと」

『余韻に浸ってる場合じゃないですよ! 早くしないと捕まっちゃいますよ!?』

「わーってるって、サラちゃん」


 エミリアは布にくるんだ絵画を頭に乗せて集合予定の地に向かう。

 その道すがら、なぜか嫌な予感がしたので、念の為ネロに連絡を取っておく。


「ネロくん、応答しなさいっ」

『…………』


 案の条、何も返事が来ない。

 絶対なにか厄介なことやらかしている。


『あ、あの~エミリアさん。とっても悪い報告があるんですが』

「予想はつくけど、どんな悪いことさ?」

『ちょっと主街区の方覗いたら、何やら訳ありそうな女の子と逃げるネロさんが居まして――』


 やっぱりか。

 彼女は呆れて笑った。

 人助け大好きにもほどがある。


「さーて、と。お仕事のついでに、サクッと事件解決しちゃいますか!」





 事件の裏に怪盗あり。



 今日もエミリアは夜の街を駆ける。

長い間お付き合いありがとうございました!

また暇があったらお付き合いください!

というより、ツイッターでつぶやいているので絡んでください。

それではまた縁があったらお会いしましょう!

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