表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
最終章 吾輩は怪盗である。故にキミを盗む
78/80

STEP75 予想外の一手

しれっと章の設定を変更しました。てへぺろでござる。

☆☆☆


『――来たか』


 祭壇のような建造物。

 ネロの体を奪った主は体にまとった秘宝を元の状態に戻し、台座に一つずつ収めていく。

 その様子をエミリアたちはしっかりと観察していた。

 隣のネリーに合図を出し、前に出る。


「予告したぜ。大切な人を、返してもらうってな」

「その通り、こいつは一度決めたら最後までやる女だ」


 ネロ――操られてはいるが――はニヒルな笑みでそれを見た。

 聞き分けのない子供を見るような、そんな感情だった。


『愚者もここに極まれり、だ――貴様らは、宇宙を破壊するに等しい』

「そっくりそのまま、キミに返すぜ」


 ちら、とネリーの様子を見る。右腕はすでに消えていて、体も霞んできている。


『このまま、この宇宙が膨張を続ければ、やがてほかの宇宙と干渉し、両者とも滅びる。我々は――間引きをしているだけだ』

「余計なお世話だね、まったく」


 慎重に、シヴィラの書の台座ににじり寄り、奪い取ってしまおうとした。


『貴様らのデータは全て記録してある。時期が来れば再び同じ歴史を歩めるだろう』

「!?」


 気が付けばネロの姿が目の前にあった。

 衝撃波を喰らって目が眩んだ。

 その隙にネリーは中心のセンターオブユニバースを破壊しようと動く。

 だが、また瞬間移動で阻まれる。彼の手には“ヨミ”とよく似た大剣が握られていた。


『自らを傷つけられるのか?』

「さあな。だが――あたしだって自分を殴りたいいて思うことくらい、あるッ!」


 つばぜり合いとなる。消えかかっている彼女の方が不利で、膝をつかされてしまっている。

 争いなど関係なしに、エミリアは再びシヴィラの書へ手を伸ばす。

 瞬間移動で阻まれる。

 また阻む。


『無駄なあがきを』

「そうかな? 少なくとも、世界の滅亡は遅れてるぜ」


 エミリアはネロの服の袖と襟をつかむ。

 柔術は師匠から習っていた。相手の力と重心を上手く操る。

 が、物理法則が変化しているのか、上手く投げられない。


「いい加減、戻って来いよ!」

『無駄だ――この者は我々に同調している。何を言おうと無駄だ』

「っん!?」


 逆に投げ飛ばされてしまう。

 だが丁度いい。


「サラちゃんッ! 出番だぜ!」


 古めかしいインカムをポケットから出し、叫んだ。

 風で光が揺らいだ。

 バラバラと、プロペラの回る音が聞こえた。


『――伏せてくださいっ!』


 スピーカーからサラの声が響く。

 軍用ヘリコプター、エミリアの無駄コレクションの一つ。

 旧式のコンピューター制御の為、セルニウムが消失しても使用可能なのだ。

 自動操縦なのでサラにも操縦ができる。

 ガトリング砲が火を吹いた。

 ネロはバリアのようなものを出現させ弾丸を防ぐ。


『小癪な……!』


 へりがバランスを崩す。いくらコンピューター制御とはいえ、体勢を上手く立て直せずに墜落してしまった。

 

『何をしようと、運命は変わらないッ!』


 センターオブユニバースに向けて秘宝たちが集結していく。

 エミリアはシヴィラの書に手を伸ばすもわずかに指先を掠めただけだった。

 眩い光が生まれる。

 秘宝はそれぞれ融合し、黒い宇宙のような球体となった。


『準備は整った――』


 まずい。このままでは宇宙の崩壊が始まってしまう。

 ネリーの方を見る。体が殆ど消えてろくに動けない状態だ。

 サラの方を見る。墜落時の衝撃で気を失ってしまっている。

 最後にネロの方を見た。自信に満ちた表情だ。それが無性に気に食わない。

 あれほど、自分の生きる意味を探していたのに。

 ようやく、生まれてきた意味を見つけられたと、思っているのだろうか?

 見えもしない他者の押し付けた意味を、自分で見つけたとでも思っているのか?

 ふざけるな、とエミリアは思った。

 そんな物は自分の生きる意味なんかじゃない。

 ただの命令でしかない。


「ふざけんじゃねぇよ……ボクは、そんなの、認めてやるもんか」


 止めてやるしかない。

 ――どうやって?

 そんなのは簡単だ。

 奇抜で、誰も考えそうもない――考えても実行しようとしない事をするのだ。

 それが――怪盗、エミリアだ。


「おいネロッ――!」


 エミリアは駆け出した。

 何の殺気も抱かず。――そんな行為ではない。

 何の悪意も持たず。――悪意? 必要はない。

 ネロを操る“何か”は意図を全く理解できないまま、彼女の動きを見るだけっだった。


「最後に、ボクからのプレゼントをあげようじゃないか――」


 戸惑う彼の体を抱き寄せ、互いの唇を触れ合わせた。

 二人はキスをした。

 親と子ほどに年齢の離れた二人が、唇と唇を触れ合わせたのだ。


「ん――ッ!?」


 たまらず“ネロ”が顔を出した。

 全てを悟っていたかのような表情がたちまち崩れ、顔を急速に真っ赤に変化させた。

 彼女はうれしくなった。

 これでいい。これこそネロの本来の姿だ。

 運命だなんだと理屈をつけるのは何かが違う。

 

「っお別れのキス。昔からある風習じゃないか」

「そ、それは――」


 敵の大きすぎる隙。

 腕利きの暗殺者だったネリーが、それを逃すはずもない。

 小さな宇宙のように変化したセンターオブユニバースに向けて跳躍した。

 ネロを操る者は体の支配を取り戻し、阻止しようとしたがすかさずエミリアがその唇を塞ぎ、集中を阻害する。


『や、やめ――んっ!』

「んっやっちまえ、ネリー」


 白銀の剣――エド。

 生者の世界の名を冠する剣が――宇宙最大の秘宝を貫いた。













『 止 め ろ ォ ォ ッ ッ !!』












 


 センターオブユニバースは砕け散った。

 宇宙のような輝きは消え失せ、宝石の形状に戻り、消滅した。

 それはともに融合していた秘宝たちも消滅したということを意味する。


『貴様――自分が何をしたか、分かっているのかッ!』

「宇宙を救った」


 悪びれずにネリーは答えた。

 時間切れとなったのか、その体を消滅させながら。


「ありがとよ、お前はほんっと、優秀なパートナーだよ。ネリー」

「ふん! お前といると、こんなことばかりさせられて困るぜ――」


 ネリーは突き刺さったエドにしがみつくように崩れ落ちる。


「あとは……任せた――」


 かつてと同じ最後の言葉。

 エミリアの悲しい記憶を刺激され、涙が溢れそうになる。

 必死にそれをこらえ、唇を震わせながら、笑った。

 もう二度と、心配されぬように。

 相棒が、安らかに眠れるように。


「ん、任された……!」


 薄紫色のマフラーだけが残る。

 白銀の剣は墓標のようだった。


 

次回、最終話

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ