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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
最終章 吾輩は怪盗である。故にキミを盗む
73/80

STEP70 食肉植物

減量中

 エミリアは内心で焦っていた。

 かつての特性はすべて失っている。

 超人的なパワーも、銃弾を受け止める程の鎧骨格も。

 この絡みつく蔦を、どう攻略すればいいのか。


「んっ!」


 足を思い切り引いて千切った。

 すると蔦はたちまち枯れていく。彼女はサラを抱っこして――思っていたより重く苦労した――シャトルが植物に浸食される中、辛うじて応急セットを取る。護身用の武器も取りたかったが、辛うじてナイフ一本を手に取れただけだった。


「おいおい……どんなトンデモ植物ですかねったく!」


 どうやら、蔦は栄養を求めて成長しているようだ。それを切り裂きながら外へ脱出する。


「――――!」


 声が聞こえた。

 エミリアは咄嗟に飛んできたものを避ける。

 ――火矢だった。


「誰……かな?」


 飛び道具は、人間が使う武器だ。

 まして、火を恐れる野生動物は、それを使うはずもない。

 影は、もう一本の火矢をつがえると、放つ。


「っ!?」


 それはエミリアたちに向けられていた。

 サラが力を振り絞り、血のシールドでそれを防ぐ。

 影が慌てたように身構える。


「大丈夫か、サラちゃん?」

「なん、とか……」


 火矢を引き抜いて松明代わりにし、森へと足を踏み入れる。

 追ってくる気配はない。彼らにとって、植物は何よりの脅威のようだ。


「建物が残ってるの、彼らが使っていたからか」


 移住期、人類は全てが地球を脱出できたわけではない。

 金のない者、犯罪者、家のない者、様々に。

 彼らは最悪の環境の中、子孫を残せぬまま滅びたと考えられていたが、そうではなかったようだ。

 しかし、技術が全て残っていたわけではなく、マンパワーも足りず、維持が限界だった。


「あれで逃げてるつもりかね? ボク達を誘っているようにも見えるけど」


 獣道のように植物の道ができている。

 まるで、ついて来いと言っているかのように。

 隣のサラの足取りはおぼついていない。

 ガスマスクをしてもある影響――


「植物の放出する、ガスか花粉か……」


 マスクは有害物質を優先的に吸着するフィルターを採用している。

 通常、有害ではない花粉をブロックすることはできない仕様だ。


「す、すいません……足を引っ張ってしまって」

「仕方ないさ。この状況、引っ張るのはボクかもしれないからな」


 ネロの通ったと思われる道の植物は、すべて枯れ果ててしまっている。

 誘っているのか、それとも……。
























☆☆☆


 G-ドライブの製造方法は、謎に包まれている。

 基本原理は知られている。

 空間をゆがませ、その歪みで縮んだ場所を一気に突き抜ける。

 しかし、設計図は一切残されておらず、コピーするほかないというのが現状。今使用されている物は、大半が移住期に製造されたものである。


「……来ないでくれよ」


 懇願するようにネロは言った。


「来られたら――決心が鈍るだろ……」


 ネリーが持っていた運命、それは――


「あんな別れ方で、ボクが納得すると思うのか?」

「するわけ、無いよな……」

 

 秘宝を収めた袋を置く。

 そして背のエドを引き抜く。


「これ以上ついてくるなら、殺す――」

「やってみな」


 一足で距離を詰められる。

 エミリアは慌てて下がろうとしたが、足にツタが絡みついて転んでしまう。

 胸を足で押さえられ、喉元に切っ先を突きつけられる。


「俺はこの世界、そのものを操れる」

「ぐっ……」


 植物が彼女の四肢を拘束する。


「分かったら……っ!?」


 ネロの目に血が降りかかった。


「サラ……お前」


 オニキスが近くにある以上、サラにもそれを操ることができる。

 植物の支配が緩んだ瞬間、エミリアは拘束を振り払い、足をつかむ。


「調子に乗るなよッ!」

「言ったろ」


 今度は見えない手によって押さえられているかのように感じる。


「俺は全てを操れる」


 操っていた血が、サラの体に逆流した。


「ぁっ!」

「だからもう来るな。お前らじゃ敵わない」


 再び袋を拾うと、ネロは再び姿を消した。


「……甘いんだよ」


 エミリアは端末を取り出し、彼の靴に仕込んだ発信機の位置を探る。

 

「にがしゃしないぞ」


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