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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
最終章 吾輩は怪盗である。故にキミを盗む
72/80

STEP69 人類の故郷

☆☆☆



 惑星、地球。

 衛星数、1

 生存域 不明

 居住域 不明





 かつて人類の生息していた惑星。長い間、知的生命体が存在する唯一の惑星であった。人類が引き起こした6回目の大量絶滅の結果、豊かな生態系は滅び、その人類も宇宙へと逃げたため、現在は僅かな植物と昆虫が存在するだけだと思われているが定かではない。一説によると、移住のできなかった人間が一定数おり、その子孫がいると言われているが、一度もコンタクトされたことは無い。




――――エミリア特製の惑星データファイルより抜粋






















「コード137……地球、ねぇ……機械音痴なネロくんにしちゃ――冗談が過ぎるな」


 ワープ中の強制離脱は自殺行為であるため、終わるまで待つしかない。

 エミリアはソファに腰かける。


「悪かったな、機械音痴で……」

「どうして、地球だ? 目的は、宇宙の中心なんじゃないのか?」

「いいんだよ。間違っちゃいない」


 ネロは広げられていた秘宝を一つずつ袋に仕舞っていく。


「もう、お別れだな……」

「なんだよ、急に」


 そして編み直したマフラーを巻き、口元を隠す。


「俺が、センターオブユニバースを手に入れる」

「おいふざけ――――んっ!?」


 当身を喰らったエミリアは意識を失い、崩れ落ちた。


「長くいると、別れがつらくなるからな……」


 袋を担ぐと、彼はその場を去っていった。
























☆☆☆


「――さん! エミリアさんっ!」


 揺り起こされて目が覚める。鈍い痛みが腹部に走る。


「っ~~! あのやろ、加減しろよな」


 モニターを見ると、青と白のコントラストが美しい惑星が映っている。


「着いたのか……地球に」

「はい……私も、さっき船室から出たばかりで、何が起こっているのか」

「ボクだってさっぱりさ。M.I.C.、ネロの動向を教えろ」


 返答は無かった。


「M.I.C.?」

「――機能停止してます……コード137という命令で、目的地に到達した段階でメインプログラムをアンインストールするように命令されています」

「復元できるか?」

「やれるだけやってみます……」


 秘宝を全て持ち去り、痕跡もすべて消し、煙のように消えてしまった。

 何をしたいのか、わからない。

 どういうつもりなのか、何を思って行動しているのか。


「――駄目です、全部消されています」

「行先は調べられるか? セキュリティはサブシステムでも行っていたからある程度はできるはずだけど」

「――シャトルを使って惑星に向かっています。詳しくは近寄らないとわかりません」

「よし、追っかけるぞ」




















「――旧日本列島……」

「この辺なのか?」

「あ、あれが噂の“ダイブツサマ”みたいですね。本で読んだ通りです」


 サラの操縦するシャトルが高度を下げていく。

 植物が文明の痕跡を覆い隠す中、座禅を組む銅像の周りには植物が存在していなかった。


「サラ……?」

「ご、ごめんなさい……見てみたかったんです」


 彼は再び計器を操作し、次の目的地まで飛んでいく


「ここなのか?」

「埋もれていても、宇宙から見えると言われた旧時代の遺跡ですね。“バンリ”とはとても長い距離を表していたといいます――一度見てみたかったんですよ」

「おい……」

「ごめんなさいすぐに探しますっ!」


 本当はピラミッドの跡地を観光しようとしていたがさすがに怒られそうだったのでサラは諦めた。


「自由の女神像だな、観光なら恋人としたらいいじゃないか」

「いえ……シャトルの発信はここで」


 上半身だけが残っている銅像。人類が姿を消して数千年、文明は跡形もなくなくなっていると思われていたが――


「なぁ……人工物ってのは、手入れされなきゃいつかは滅びる、って言うよな」

「ええ……学術書ではそう書かれています」

「だったら、これはどういうことなんだろうな」


 ビルの大部分は崩落し、植物に絡めとられている。かつて人々がひしめき合っていたアスファルトの道路はひび割れ、土に還りかけている。それでもなお、無くなってはいない。一部は、文明の名残を残している。


「着陸できる場所はあるか?」

「はい……」


 シャトルを空き地に泊めると、大地に降り立った。土の香りが、風に乗ってやってくる。エミリアは、数百年ぶりに戻ってきた嗅覚に、笑みをこぼす。


「なーんか、荒廃したにしては、いい空気してるじゃないの。なあサラちゃん?」

「ぅ……く、苦しい、です」

「地球の大気構成は、毒だったみたいだな、くそっ!」


 緊急の防毒マスクをサラの口に当てる。

 大気組成は各惑星で異なるが、地球の空気に害はない。


「――進化は、必ずしも進歩ではない」

「ネロっ!」

「やっぱり、追ってきますか……」

「ボク達の故郷に案内してくれたことは感謝するよ。でも――何のつもりか説明してもらおうか」

「……最後のピースを探しに来た。気を付けろよ、エミリア」


 ネロは去る間際に言った。


「地球の支配者は、もう人間ではない」

「待――!?」


 足にツタが巻き付いていた。

 みるみるうちにシャトルも植物に浸食されてきている。


「支配者じゃないって――そういうことか!」


 人類が去り、新たな支配者として狼煙をあげたのは――


 

「食肉植物――随分ヤバい進化じゃないの……」


 かつて、すべての生物を支えていた――植物だった。

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