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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第四章 イヌネコ合戦
34/80

STEP31 釣れちゃったものは仕方ない

感想もらえてうれしかったから書いちゃった。

私はそういう単純な人間なのです。

☆☆☆


「……なんで助けたのです?」


 壺の奥からくぐもった声が聞こえた。女の子のようだ。


「なんでボクに釣られたのさ……?」

「仕方ないです! 川に飛び込んだけど壺が浮いて沈まなかったんです!!」


 そりゃそうだ、と思ったがエミリアは口にはしなかった。


「キミ、名前は?」

「……ミテッド、です」

「親は?」

「いない、こんなだから誰も面倒見てくれないのです」

「なら取ればいいじゃん」



 ミテッドを岸に上げてあげると壺を思いきり引っ張った。が、彼女はそれに思い切り抵抗した。


「だめっ! とったらもっと醜いです!!」

「はーわがままなこって……」


 













 濡れたままじゃいけないので服を脱がし、小さいころネロに着せていた服を与える。髪も乾かしてやりたいが壺をとることを拒否するので隙間からドライヤーを差し込んだ。

 指先に固いものを感じた。何を入れているのやら。

 

 身支度を終えると、二人は町へ向かった。もしかすると、探している人がいるかもしれないからだ。


「いいか? ボクはもう二度と助けるつもりはないから、身投げなんかするなよな」

「はい、です……」


 おなかの鳴る音が聞こえた。ミテッドからだ。

 ろくに物も食べていないのだろう。少し寄り道することにした。

 目に入ったレストラン。そこでいいだろう。


「さ、好きなだけ食べな」


 たくさん料理を注文した。どれか一つくらい好きなものがあるだろう。

 ミテッドは、恐る恐る焼き鳥の串をとり、壷の中へ運んだ。食事の時でも外す気はないらしい。

 一つ食べるともう止められなくなったのか、次々と料理を口に運ぶ。


「今時珍しい天然肉だ。うまいだろ」


 壷が縦に揺れた。本当においしいのだろう。

 次から次へと料理が消えていき、皿の山ができていく。


「……おいしかった、です」

「そーかそーか。そいつはよかった」


 エミリアが残っている料理に手を付けていると、


「――ああ! ここにいたのね!!」


 つば広帽をかぶった女性がやってきた。高そうなワンピースを着て、静かに歩いてくる。モデルのようなしっかりとした歩きだ。


「……?」

「もしかして保護者さん?」

「ええ、あなたたがこの子を預かっていてくれたのですね」


 胡散臭いな、とエミリアは直感した。

 言葉の節々に嘘が見て取れる。


「うん、()()()()()のさ。親ならしっかりと面倒を見ろよな」

「申し訳ありませんでした。さ、行くわよ」

「え……?」


 女性はミテッドの手を引いて店を出て行った。

 ますます怪しい。


「おいM.I.C.、あの女の動向を調べろ」

【かしこまりました】


 人身売買をする人さらいか、もしくはただの金目当てか。
















☆☆☆


「キャッ!」

「さあ! どこに隠したか言いなさい!」


 ミテッドはベッドに投げ出された。後ろ手に縛られているのでうまく立ち上がれない。

 女性は、帽子をテーブルの上に放り、高そうな木製の椅子に足を組んで座った。イラついているのか動作の一つ一つが荒い。


「なんの、ことです?」

「とぼけるんじゃないよ! あんたが“ここ掘れにゃんにゃん”と“招き犬”を隠したってことくらい、こっちは調べてあるのよ!」

「っ!?」


 ミテッドはとっさに目をそらした。だが壷のおかげでそれを悟られることはなかった。


「まったく……子供をいたぶるのは趣味じゃないんだけど、早く言わないなら」


 バチッ! とスタンロッドが火花を散らした。

 女性の手には秘匿用のそれが握られていた。


「痛い目に遭うわよ」

「っ……いや、です」


 逃げようと足を動かすが、逆関節の足は地面に届かない。ジャンプ力を得るために二足歩行のしやすさを犠牲にした構造なのだ。

 火花の散る嫌な音が聞こえてきた。

 逃げられない!



 ――――ピンポン♪




「ツッ……邪魔が入ったわね」


 女性はスタンロッドを投げ捨て、隠ぺいした後ドア穴を覗いて訪問者を確認する。

 ワゴン車を押す老人だ。帽子を目深にかぶっていて人相はわからないが、ホテルの従業員であることはわかる。


「? ルームサービスなんて頼んだかしら……」


 ドアを開けるといきなりワゴン車が部屋に突っ込んできた。


「えっ!?」


 ベッドの前でそれは止まり、ミテッドを連れて逃げられない配置となった。

 流れるように老人が部屋に侵入し、ドアが閉まると同時に、曲がっていた腰が伸び、帽子から真っ白な髪があふれ出す。


「あんた……!」

「Hola! ルームサービスのお時間ですよ、お客様」


 帽子を取り、顔の前にかざしつつ再びかぶり直した。皺だらけだった顔が、真っ白なきめの細かい張りのある肌へと変化する。血のように真っ赤な瞳は、無邪気な子供のように笑っている。


「へったくそなお芝居は、もう終わりだぞ?」


 エミリアは女性を挑発するように、笑って言うのだった。

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