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Phantom thieves  作者: 鮫田鎮元斎
第四章 イヌネコ合戦
35/80

STEP32 お宝すべてに興味はない

「アンタ……あの時の」


 女性は太ももに括り付けているハンドガンに手を伸ばす。


「よーしよし、大丈夫かい?」

「はい……です」


 エミリアはその動きに気付かずにミテッドを救出する。

 

「どうしてここがわかったのかしら? それよりも、不法侵入よね?」

「そんな一気に聞かれましても……まー優秀な仲間のおかげですよ」

【恐縮です】


 なおM.I.C.の声はエミリアにしか届かない。


「あと、ボクは法律には縛られない人間だからね。不法侵入もくそもないのさ」

「なら――死んでも文句は言えないわよね?」


 素早く銃を抜き放ち、引き金を引いた。が、銃弾はトレーで弾かれた。


「動きが遅いな。あくびが出ちゃうよ」

「っ……何よ、あんたもその子がお目当てなの!?」

「んにゃ、そいつは違うな。ボクは君が怪しいと思ったからつけさせてもらったのさ」

「ふん! 怪しいって、どこが?」

「君、名前呼ばなかったろ」

「え……」


 エミリアはミテッドのかぶっている壷を軽くポンポンする。中のものがぶつかり合って小さな音がする。


「君がもし、この子の保護者なら、呼ぶはずだよな。名前を」

「っそれは」

「詰めが甘いんだよ、どこのどなたか知りませんがね」

「は? 私を知らない? どこの田舎者なのかしら?」


 何気ない一言が、女性のことを怒らせてしまったようだ。


「私の名は、連盟中にその名を知らない者はいない女怪盗、シャルリア・グレイよ!」

「……うーん知らないなー…………」

「初耳、です」

【“シャルリア・グレイ”の名を連盟政府データベース、及びネットワーク上のあらゆるデータベースに照合したところ一切ヒットしませんでした】


 どうやら、口上部分はすべて(自称)のようだ。


「きーッ! アンタたちどこの田舎者よ!」

「うーんそうは言われましても……君、どっからどう見てもよくいるテンプレお嬢様って感じですし」

「ええいっ! 田舎者の戯言はうんざりよ! 第一、私はその子が知っているお宝のありかを教えてもらおうとしていただけよ? 邪魔しないでくれるかしら」


 お宝、というワードにエミリアの目の色が変わった。

 彼女は古今東西、ほとんどのお宝の知識がある。しかし、ここミアキスの宝など聞いたこともなかったからだ。


「へぇ……どういうお宝なのか、教えてもらいたいもんだね」

「“ここ掘れにゃんにゃん”、そして“招き犬”よ」

「……行こうか、ミテッド」

「はい、です」

「ちょぉっと待ちなさいよ! 聞いといて何なのよその態度!?」


 一瞬で興味をなくしたエミリアを引き留めようとシャルリアは思いっきりしがみついた。


「噂じゃ宇宙の中でも屈指の出来を誇るという彫刻作品よ!? ここミアキスの派閥争いを止めてしまったというほどの、伝説級の作品よ!?」

「いやーでもボク興味ないんで」

「何よ田舎者の分際で!」


 今度はエミリアがキレる番だった。


「ぁん? お前、三流怪盗のくせにボクのことを知らない? じゃよーくその頭に刻み込んどきな。 ボクの名はエミリア。君と同じ怪盗さ」

「! まさか……何百年も前の伝説上の人物……宝石ばかり狙う、意地汚い白いカラス」

「え? ボクってそんな呼び方……カラスって、頭いいってことなの?」

「皮肉よ! もっと言外の意図を読み取りなさい!」

「まーそんなことはいいさ。とにかく、くだらないもの盗むために、この子を苦しめるなってことよ」


 シャルリアはあきれてため息をつく。


「くだらないもの……? あんたが本物かはさておき、私はどうしても欲しいから盗むのよ。諦めろって言うなら、それ相応の対価を支払ってほしいわね」

「ふぅん……例えば?」

「彫刻博物館の目玉展示品、それを盗んできてくれるならいいわよ」


 エミリアは彫刻には一切興味はない。ついでに言えば絵画にも興味はない。

 そんなものを盗むのは、本当に不本意なのだが、人助けのためには仕方ない、か……?


「それで諦めるんだろうな?」

「いいわ、約束するわ」

















☆☆☆


「ようこそ、ここが我々の集落だ」


 ネロは森の中に溶け込んでいるような所へ案内されていた。

 そこでは、昼寝をしている人々やそれにまぎれて寝ている猫がいた。


「静かなところだな」

「それが我々の魅力だ。気を張らず、好きに過ごすといい」


 彼の足元にシャムネコがすり寄ってきた。

 抱き上げてやると、つぶらな瞳に見つめられた。とてもかわいい。

 ブシュン!

 くしゃみをかけられてしまった。

 

「よしよし……」


 しっかり抱っこしてやりあごの下をなでると、嬉しそうにのどを鳴らしている。

 とてもかわいい。ずっと居たくなる。

















☆☆☆


「どうだ客人よ! うまいか?」

「はいっ」


 サラは出される料理を次から次へと口へ運んでいる。

 昔あんなにも嫌いだった肉が今ではたまらなく好きだ。おいしくておいしくて仕方がない。


「こんなにおいしいごはん、初めてです」

「ははは! 天然ものの肉だからな!」


 今まで人工肉しか食べていなかったのだが、もう天然モノ以外食べれそうにない。


「んっ……すいません、お手洗いはどこですか?」

「おう! 出て近くのところにあるぞ」


 近くといったくせに結構な距離歩かされた。田舎者の近くは信用してはならない。

 川の上の小屋に入った。どうやらそのまま流していく方式らしい。


「はぁ…………?」


 股に違和感があった。

 恐る恐る触れてみた。


「……え?」


 何もなかった。いや、あったのだが、ほとんど感覚がなかった。

 

「……一体、どういう」


 疑問は長く続かなかった。満腹近くまで食べたはずなのに、また空腹感に襲われたのだ。


「っ……おなかすいた…………」






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